[2025_04_25_03]東電柏崎刈羽原発の耐震性問題と津波問題 甘すぎる地震想定と津波対策 新たな知見で津波を考えるべき 地震本部長期評価に対する東電の考え方は誤り 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2025年4月25日)
 
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東電柏崎刈羽原発の耐震性問題と津波問題 甘すぎる地震想定と津波対策 新たな知見で津波を考えるべき 地震本部長期評価に対する東電の考え方は誤り 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

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 はじめに
 4月21日、参議院議員会館で、院内集会「柏崎刈羽原発の再稼働問題ヒアリング」が、社民党大椿ゆうこ参議院議員の紹介で実施された。
 この集会で、規制庁と経産省に提出し、当日回答と共に議論を行った質問項目のうち、地震と津波に関するところを解説し、国側の見解を明らかにする。

1.新潟県の住民投票に圧力をかける経産省

◎ 再稼働に向けて経産省は地元の同意を迫る行動を取っている。
 住民投票条例制定を目指した署名運動が行われている期間中に、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は新潟県議会で再稼働の同意を求める発言を行った。
 新潟県議会はその後、住民投票条例案を否決し、13万余の署名により県民の総意で再稼働の是否を決める機会を奪う結果になった。
 長官の再稼働を求める議会発言の意図は、これら住民自治への圧力だった。

◎ 経産省資源エネルギー庁は、こうした指摘について否定したが、時期が住民投票条例の制定署名活動にかかっていること、署名に基づく住民投票条例の審議と採決を行う議会で、再稼働を推進する発言を行ったことについて、時期は県議会議長により指定されたものと、自らの責任は回避しつつ、こうした影響の存在は認めなかった。

2.柏崎刈羽原発の耐震問題

◎ 規制庁による現状聴取会合

・「日本海側の海域活断層の長期評価(令和6年8月版)への対応の現状聴取に係る会合が2024年12月23日に開催され、その場では規制庁から東電に対して、津波の発生に重要な地震評価の実施条件に関して、さらに検討を重ねるように指示された。
 事実上、東電の見解に規制庁が疑義を出した結果だが、この会合について今後の予定はまだ明らかにされていない。

・聴取会合の結果で、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働において影響を与える基準地震動、基準津波の評価結果に大きな影響があった場合、一般的には現状の既許可では原発の安全に大きな影響を与える可能性が否定できないことになると、再稼働はできなくなる。その可能性については規制庁は否定しなかった。

・「ならば再稼働を推進するべきではないと考えるがどうか」と問うたが、今の段階では長期評価が既許可に影響があると示されないので、再稼働に影響があるとは考えていないという。
 しかしこれは安全側にたった姿勢とは言えない。
 その点について参加者から大いに批判があった。

3.地震本部長期評価に対する東電の考え方は誤り

◎ 東電の「柏崎刈羽原子力発電所6号及び7号炉日本海側の海域活断層の長期評価―兵庫県北方沖〜新潟県上越地方沖―(令和6年8月版)の影響について」(2024年12月23日付け)では、以下の記載がある。
 「土木学会手法に記載されている武村(1998)が準拠している内陸地殻内地震データのうち、最大の断層長さは1891年濃尾地震の85kmであり、それ以上の断層長さは外挿領域となっている。」能登半島地震の「断層長さを150kmと仮定し,武村(1998)を用いて地震規模を算定するとMw7.9となり、現状、各種機関において推定されている地震規模(Mw7.5程度以下)と乖離する。」そこで「令和6年能登半島地震の実績を踏まえ,地震本部(2010)の考え方に基づき地震規模を設定することとする。」とし、地震津波評価を行っている。

◎ この考え方は、震災前の既往最大を基本とする考え方で、現在の地震動ハザード評価では「地震規模や発生領域のモデル化で既往最大に囚われずに、物理現象や物理探査等に基づく科学的想像力を働かせて設定すること」としている。
 東電の評価方法は、その観点からは間違っている。

4.能登半島の最大地震評価評価

◎ 地震本部が長期評価で連動して動くとした能登半島北部から佐渡島にかけての海底断層の「門前断層帯、能登半島北岸断層帯及び富山トラフ西縁断層」は差し渡し193kmあると東電は認識している。(地震発生層は門前断層帯、能登半島北岸断層帯を3〜18kmとし、富山トラフ西縁断層帯を既許可と同じ6〜17kmとする。連動を考慮したケースの断層長さは地震本部(2024)より193kmと設定する。(断層面積3782平方キロ))。

◎ 加えて「能登半島北岸断層帯と富山トラフ西縁断層」の間には20km以上の間隔がある。
 さらに能登半島北岸断層帯にも3つのセグメント(猿山沖、輪島沖、珠洲沖)があり、その間も数キロ開いている。
 この連動で発生する地震は、東電も最大規模でマグニチュード8.4(竹村1998)と推定されることは否定していない。

◎ しかし東電はマグニチュード7.7として評価している。その間のエネルギーの差は16倍にもなり、東電の想定が過小評価である。
 これについて規制庁は明確に回答はしなかった。東電に対して地震の規模を含め津波評価を再度説明することを課題としているので、次回の会合を見守るという。なお、次回会合日程はまだ決まっていない。

5.東電の地震、津波参考ケースM8.4の評価

◎ 東電は「参考ケース2 M8.4」として、同じ193kmの断層についてM8.4で評価した応答スペクトル線図を公表しているが、これは、全体としては既許可のF−B断層による地震のそれに包絡している(内側に入っている)として、既許可を超えるものではないと結論づけている。

◎ しかし長周期側(ゆっくり揺れる周期、1秒以上の周期で揺れる地震動)は既許可とは僅かしか差がない。
 地盤の液状化や地滑り、大きな配管や建屋に与える影響は長周期側が卓越している。これが基準地震動に影響を与えないとする評価は正しいのか、大いに疑問である。
 穿っていうならば、既許可に影響を与えないように応答スペクトルや規模を定めたのではないかと疑う。

6.地震に伴う地殻変動の評価について

◎ 能登半島地震では地殻変動により4m以上の隆起が発生した。
 柏崎刈羽原発の周辺の断層においても、同様に離水ベンチの高さを考えれば、同様規模の地殻変動は否定できないと考えるが、その影響は一切評価されていない。

◎ これは大きな欠落であり、このことで原発の地盤が変位して主要配管に影響が出たり制御棒駆動に影響を与えたりする可能性はないか。
 規制庁はこの点についても、東電の解析では、そうした懸念は認められないとしており、独自に評価する姿勢は見られない。

◎ この地域では、今後も大規模な地震が起こり得る。
 その際、M7.7とM8.4では約11.2倍もの開きがある。
 地盤への影響は、地震のエネルギーが大きい場合、非線形(規模に比例するのではなく二乗に比例するなど)の影響を与えることが明らかになっている。
 M7.7とM8.4の差を考慮するならば、既許可の範囲に収まるとは到底思えない。

◎ 液状化は柏崎刈羽原発の大きな欠陥である。
 2007年の中越沖地震でも、敷地内の「土捨て場」の法面が崩れ、敷地内でも激しい液状化が見られアスファルトが車両が走れないほど崩壊した。
 これがマグニチュード6.8で起きた現象である。
 次に何が起きるのか、真剣に考えなければならない。

     (初出:2025年4月25日たんぽぽ舎発行「金曜ビラ」)
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