[2024_08_07_05]<東海第2原発 再考再稼働>(67)原発を動かす資格ない 東海第2運転差し止め訴訟弁護団・丸山幸司さん(54)(東京新聞2024年8月7日)
 
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<東海第2原発 再考再稼働>(67)原発を動かす資格ない 東海第2運転差し止め訴訟弁護団・丸山幸司さん(54)

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 日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の運転差し止め訴訟で、原告(住民側)弁護団に加わっている。6月の東京高裁での口頭弁論では、防潮堤工事の問題点を訴えた。原電は原発を動かす能力と資格が欠けていること、さらに原子力規制委員会の審査が不十分なため、厳格な司法審査が必要と主張した。

 東海第2の敷地高は海抜8メートルと福島第1原発より低い。設計も古く、福島第1同様、電気室が地下に集中している。サイトが平たんで海岸線に近いので、規制委の審査会合では防潮堤を超える津波への対策も求められていた。この点から、東海第2において津波対策はとりわけ重要だ。

 まず、原発を動かす能力の欠如について。原子炉等規制法(炉規法)では、原子力事業者に「発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力」が備わっていない場合、申請を許可してはならないと定められている。
 今回の施工不良は、防潮堤の取水口付近の鋼製防護壁を支える南北の基礎部分でコンクリートの未充てん(じゅうてん)があった。原電は審査会合に提出した資料で「地盤の特性や掘置期間の長さ、掘置期間に受ける荷重などに対する視点が不足していた」などと説明し、その原因分析で「考えが至らなかった」と述べている。
 これは土木の教科書に載っているような基本的かつ重要な話で、当然想定すべき事項だ。「考えが至らなかった」というのは、明らかに能力が欠如していることを示している。南側の基礎で犯した失敗と同じ失敗を、その直後に北側の基礎でも犯している。これも極めて初歩的なミスだ。

 より重大な点は、原電は実務的な能力だけでなく、発電用原子炉を運転する資格(姿勢)も足りない。原電は、北側基礎のL字鉄筋が掘削深度に届いていないことを知りながら、コンクリートを打設している。認可された設計に反して工事を進めているのに、「問題ない」という態度で規制委に報告もしなかった。原子力災害の発生防止に万全の措置を講ずる責任に、真っ向から反している。
 しかも防潮堤の施工不良について、原電は内部告発で事態が公になるタイミングで公表した。内部告発がなければ、公表せずに隠蔽(いんぺい)し続けた可能性もある。

 本来なら、こうした能力、資格の欠如については規制委が厳格な審査をすべきだが、実態はそうはなっていない。マンションなどの一般の建設工事では、耐震偽装問題などもあって建築基準法で中間検査が厳格化されているのに対し、原子力規制検査では行われない。一般の建設工事よりもチェックが甘いというのが実態だ。規制委の審査が十分でないなら、司法審査を厳格にしないと再び重大事故が発生しかねない。
 ただ、6月の審査会合で規制委事務局の規制庁が、防潮堤の施工不良部分の建て直しを検討するよう指摘したことは、本来あるべき対応をしてくれたという印象を受けた。少なくとも周辺住民は、規制庁の基準に沿ってやっていると信じているので、期待に応えてもらいたい。
 最近は福島第1事故の風化を感じる。それが、議会で再稼働に賛成した東海村など地元の世論にも影響してきている。だからこそ、東海第2の運転差し止め訴訟では一審から毎回、福島の被害の話を取り上げてきた。被害をきちんと伝えれば、被害者を踏みにじるような判決は出ないと思うからだ。 (聞き手・長崎高大)

<まるやま・こうじ> 1970年、新潟県出身。東京外国語大スペイン語学科を卒業し、2005年に弁護士登録。神栖ヒ素事件の損害賠償請求訴訟や、霞ケ浦導水事業の差し止め訴訟などに携わる。東海第2原発の運転差し止め訴訟では、水戸地裁での一審から住民側弁護団に参加している。
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