[2024_08_08_06]<東海第2原発 再考再稼働>(68)安全性 最優先に考えて 「県民投票日立の会」代表・中山弘子さん(66)(東京新聞2024年8月8日)
 
参照元
<東海第2原発 再考再稼働>(68)安全性 最優先に考えて 「県民投票日立の会」代表・中山弘子さん(66)

 07:30
 日本原子力発電(原電)は、東海第2原発(茨城県東海村)の防潮堤工事の施工不良を把握してから4カ月近く公表しなかった。しかも公表した日は、工事関係者からの内部通報を受けた共産党県委員会が記者会見する日だった。状況から考えると、自発的に公表したとは思えない。
 原発周辺住民の生活にも関わってくるだけに、何か問題があれば、しっかりと情報公開してもらうことが信頼関係の前提になる。こういうことがあると、やっぱり原電は信用できないなと感じるし、防潮堤以外の安全対策も本当に大丈夫なのかと心配になってくる。
 県や周辺自治体の首長は東海第2の再稼働の可否を判断する際に、施設の安全性だけでなく、このような企業体質も問うべきだ。再稼働を目指す原電にとって、今回の安全対策はとても重要な位置付けだったはずだ。そこで重大なミスを犯した。原発の安全性を担保できる組織なのかという点にも、厳しい目を向けてほしい。
 施工不良を原電が4カ月近く公表しなかったことを、原子力規制庁も県知事も問題視しなかったことにも疑問を感じる。
 東日本大震災で被災した福島県に、プライベートで毎年のように足を運んでいる。震災から13年が過ぎたが、いまだに帰還困難区域が残っており、帰りたくても帰れない人がいる。日立市東大沼町の自宅は、東海第2から約7キロの場所にある。もし重大な原子力災害が起きたら、一時的な避難ではなく、実質的には移住になるんだろうなとしみじみ感じている。
 私たち一般市民は原電に「安全です」と言われれば、問題点を見抜くのが難しい。だからこそ、専門的知見を持つ規制庁や、県の役割は大きい。住民の生活を守るという観点で、しっかりとチェック機能を果たしてほしい。
 防潮堤の一部建て直しも含めた対策の検討を求める規制庁に対し、原電はまだ態度を明確にしていない。そもそも、規制庁に言われたから検討するのではなく、主体的に考え、設計通りに造り直すという判断になるのが普通ではないか。
 東日本大震災では津波で多くの船が陸に打ち上げられた。施工不良が見つかった防潮堤の近くには港があり、タンカーや船も入ってくる。津波に巻き込まれたタンカーや船が防潮堤にぶつかり、防潮堤が損傷を受けないかと心配だ。さまざまな不測の事態にも対応できるように、ちゃんとした強度が必要だと思う。
 軽微ではない施工不良が判明した以上、原電がいまだに9月としている事故対策工事の完了時期がずれ込むのは当然だ。安全対策に遅れが生まれることも問題だが、工期を優先し中途半端な防潮堤で済ませることの方が、よっぽど問題だ。
 安全性を最優先に考え、疑念を持たれないような防潮堤を造り直すべきだと思うし、原電にはその責任がある。(聞き手・佐野周平)

<なかやま・ひろこ> 1957年に栃木県で生まれ、20代半ばで日立市に移り住んだ。東日本大震災の被災地支援で現地の惨状を目の当たりにし、反原発運動に参加。現在、市民団体「いばらき原発県民投票の会」で、日立市を担当する地域支部「県民投票日立の会」の代表を務める。同会は、東海第2の再稼働に関する県民投票実施を県知事に求める署名運動を計画している。
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