[2025_10_29_06]むつ中間貯蔵に 2度目核燃料搬入 40年後搬出揺らぐ担保 再処理工場工程に遅れ(東奥日報2025年10月29日)
 
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むつ中間貯蔵に 2度目核燃料搬入 40年後搬出揺らぐ担保 再処理工場工程に遅れ

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 むつ市に立地する中間貯蔵施設に、使用済み核燃料が新たに搬入された。原子力事業者は県、市と約束した貯蔵期限(2074年)を踏まえ、施設から核燃料を出し始める時期を約40年後と想定。確実に運び出す担保として、国や事業者は搬出先に定めた日本原燃・再処理工場(六ヶ所村)の操業、長期運転の確立へ総力戦で臨む。しかし26年度完成を見込む原燃の計画は既に遅れが顕在化し、中間貯蔵事業の担保が揺らぐ。

 9月、経済産業省が核燃料サイクルに関して新設した有識者会議の初会合で、口火を切った委員は「再処理工場の操業開始は出発点で、重要なのは長期的な安定操業だ」と強調。さらにむつ中間貯蔵施設にも触れて「核燃料処理の具体的な計画が必要」と指摘した。
 再処理工場の操業は、全国の原発で逼迫する使用済み核燃料の保管にゆとりを持たせるほか、中間貯蔵後の核燃料搬出先という側面もある。運び出せず施設内に残されたままでは、中間≠フ位置付けが崩れる。

 むつ中間貯蔵施設に核燃料が初搬入された24年9月、50年後の貯蔵期限に向けたカウントダウンが始まった。東京電力ホールディングスなどは、64年ごろから10年ほどかけて再処理工場へ運び出す。前もって施設の2棟目を建設し、並行して貯蔵も続ける計画。搬出先の再処理工場が、少なくとも「2090年代初頭」まで稼働する前提に立つ。
 政府は時間的な帳尻を合わせる形で、操業期間の目安を40年間としてきた再処理工場の「長期利用」を打ち出した。エネルギー基本計画に明記し、有識者会議で必要な取り組みを検討。原燃の増田尚宏社長も「2100年ぐらいまで運転を続けるための設備更新はできる」と歩調を合わせる。

 しかし完成する見通しはいまだ立たない。目標延期は通算27回。現在は26年度完成を目指し、原燃が原子力規制委貞会の認可審査に対応中だが、安全対策の説明に難航。「11月説明終了」の目標を断念し、26年3月を見込んだ認可取得も困難な情勢だ。さらにずれ込めば、28回目の完成延期も現実味を帯びてしまう。
 未完成のままでは各地の原発に使用済み核燃料がたまり続け、運転に支障が出る可能性もある。電力各社は原燃に対し、審査対応の支援員として計84人を派遣。福井県で原発7基が再稼働済みの関西電力は最多の37人を送り込んでいる。

 2日に工場を視察した武藤容治経済産業相(当時)は、原子力業界と国が「総力を挙げて対応しないといけない」と強調。中間貯蔵施設への核燃料搬入に対する27日の抗議集会で、参加者の一人は「工場が完成するか分からないのが実態だが、完成を前提に搬入を強行している」と訴えた。(佐々木大輔、佐藤悠多)
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