[2025_10_29_05]外環道陥没事故から5年、地盤補修で「変わり果てたまち」。シールドトンネル工事で続く健康被害の訴え、「大深度地下工事」は安全か (東洋経済オンライン2025年10月29日)
 
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外環道陥没事故から5年、地盤補修で「変わり果てたまち」。シールドトンネル工事で続く健康被害の訴え、「大深度地下工事」は安全か

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 「東京外郭環状道路」(東京外環道)のシールドトンネル工事が原因で、住宅地の道路で陥没事故が起きたのは2020年10月18日。それから5年が経過したが、事故現場周辺の住宅地では家屋の解体や地盤補修工事が続き、多くの住民が住み慣れた我が家を手放さざるをえなくなっている。

 陥没事故や、その前後に発生した騒音、振動、低周波音による住民の健康被害を「第1次被害」とすると、家屋解体や地盤補修工事による立ち退きやまちの姿が一変するありさまは「第2次被害」だとも指摘されている。
 事故現場である東京・調布市東つつじヶ丘や、現在、シールドトンネル工事が続けられている東京・練馬区の青梅街道インターチェンジ建設予定地周辺で、被害の実態を探った。

 「まちを壊したのは許せないが、壊した後、こういう風にまちを再建するという青写真も一切ない。まともなやり方ではない」
 40年以上にわたって東つつじヶ丘2丁目で暮らしていた丸山重威さん(84歳)は、工事現場と化したまちを見て、憤懣やる方ない様子だった。
 陥没事故が起きた東つつじヶ丘2丁目では住宅の多くが取り壊され、大型の機械がうなり声を上げている。街のあちこちが通行止めとなり、地域を流れる入間川の上には、工事用のセメントスラリーを運搬するためのパイプラインが敷き詰められている。公園は工事用ヤードとして占有され、子どもの遊び場はない。

 事業者の都合で二転三転した生活

 丸山さん自身も陥没事故によって翻弄された1人だ。
 陥没事故の後、事業者である東日本高速道路(NEXCO東日本)は、シールドトンネルの真上部分に当たる幅16メートル、長さ220メートルのエリアに限って地盤補修工事を実施するとした。しかし、丸山さん宅はそこからわずかだが外れているという理由で地盤補修の対象とはならず、「土地建物の買い取りはできない」と言われた。
 ところが、2022年2月に東京地裁が下した一部工事の差し止め命令では丸山さん宅について、「有効な対策が採られないまま工事が再開されれば、居住場所に地盤の緩みを生じさせ、地表面に陥没を生じさせたりする具体的なおそれがある」と判断された。つまり、丸山さん宅は「危険」だとされたのである。老後の資金確保のためにと考えていた、住宅を活用したリバースモーゲージが銀行によって断られる事態にもなった。

 そんな事態が急転したのは24年に入ってのこと。NEXCO東日本から「資材置き場」として買い取りを打診されたのである。「それにしても、80代になって、一から家を探すのは大変だった。昨年の今頃から半年かけて作業をしたが、本当に疲れた」(丸山さん)。
 今年10月5日、調布市の公民館で開催された「外環被害住民連絡会・調布」の集会では、参加者から外環道の工事について、不安の声が多く上がった。
 「工事現場のすぐ近くに住んでいる。私は年なので不安はあまり感じないけれども、娘が言うにはお母さんの家には行かない。何かあったら恐ろしいからと言われている」(80代の女性)
 「シールドマシンが我が家に近づいてきて、初めて音を感じたのは20年7月末。最初は何の音かわからず、ずしんずしんと気持ちの悪い音がした。お盆休み明けには激しい揺れを感じた。健康被害が出るはずだと思うほどだった」(別の80代女性)
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