[2025_10_19_03]<主張>柏崎刈羽原発 廃炉は再稼働の「代償」か(産経新聞2025年10月19日)
 
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<主張>柏崎刈羽原発 廃炉は再稼働の「代償」か

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 東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)6、7号機再稼働へのハードルが幾分低くなった感がある。
 東電の小早川智明社長が16日の新潟県議会で、柏崎刈羽1、2号機を廃炉にする方向で具体的検討を進める、と表明したことによる変化だ。だが、諸手(もろて)を挙げての歓迎は控えたい。

 この検討の表明は、以前から柏崎市の桜井雅浩市長から再稼働への地元同意の条件として東電に示されていた求めに沿ったものである。
 計7基の原子炉を擁する柏崎刈羽の総出力は約820万キロワットで、世界最大級の原子力発電所だ。だが、福島第1原発事故以降、全基が停止したままだ。

 原子力規制委員会の安全審査に合格した6、7号機でさえ地元同意が得られていない。東電のテロ対策の不備なども重なって、再稼働のめどが立たない状況が続いてきた。
 この膠着(こうちゃく)状態を脱して6、7号機の再稼働を達成しなければ、東電の経営は改善を望めない。東電は桜井氏の要求に従わざるを得なかったのだろう。小早川氏は同日の県議会で地域貢献として1千億円規模の資金提供も申し出ている。

 運転年数の長い1、2号機の廃炉は地元の安心感につながるのかもしれないが、再稼働への「人柱」を思わせる措置だ。関西電力では、より古い原発が再稼働しているではないか。
 そもそも柏崎刈羽原発の再稼働の遅れが長引く最大の原因は、新潟県の花角英世知事の優柔不断な姿勢である。

 花角氏は今年8月に県内市町村長との意見交換、県民の公聴会を終えた。9月には県が1万2千人の県民意識調査を行っている。再稼働への決断を急ぐべきだ。
 再稼働の是非の棚上げが続けば、国家のエネルギー安全保障にも影響が及ぶ。生成AIや半導体など電力多消費産業の拡大が進む中で、安定供給の基盤となる原子力の役割は大きい。海外の化石燃料に多くを依存する電源構成を改める契機を柏崎刈羽原発の再稼働に求めたい。

 原発の再稼働に当たって立地自治体が地元同意を絶対権限のごとくに振りかざすのは不適切だ。地元同意は電力会社と自治体との安全協定で、一種の紳士協定だ。法律ではないことを忘れると行き過ぎに陥る。
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