[2025_10_17_06]柏崎刈羽原発 再稼働へ躍起の政府、東電 施策連発も「信頼勝ち得ず」(東奥日報2025年10月17日)
 
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柏崎刈羽原発 再稼働へ躍起の政府、東電 施策連発も「信頼勝ち得ず」

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 東京電力ホールディングスは16日、新潟県に立地する柏崎刈羽原発1、2号機の廃炉の検討に入ることと、地域責献策として県に計1千億円規模もの資金を拠出する方針を県議会で表明した。政府、東電は地元の要望に応える施策を次々打ち出すことで、経営再建の頼みの綱とする同原発6、7号機の再稼働に理解を得ようと躍起だ。ただ、こうした姿勢には「信頼を失わせるだけで、勝ち得ることはできない」との批判もある。

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 「柏崎刈羽の再稼働は極めて重要だ。新潟県の皆さんに丁寧、真撃に対応させていただくことを約束する。何とぞ理解を賜りたい」。16日の県議会に参考人として出席した経済産業省資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が「長官としての決意」と前置きした上で、改めて再稼働の必要性を訴えると、傍聴席の市民から「事故の責任を取るのか」「理解ができない」との声が上がった。
 柏崎刈羽は全7基の原子炉を抱え、総出力は世界最大だ。事故が起きれば被害が拡大するのではないかと、地元には集中立地を不安視する意見も出ている。1、2号機が立地する柏崎市の桜井雅浩市長は、6、7号機の再稼働を容認する条件として、東電に1〜5号機の1基以上の廃炉計画を出すよう要求。東電は優先させる6号機の再稼働後にできるだけ早く提示すると回答していた。

 この日県議会に出席した東電の小早川智明社長は、閉会後の取材に「廃炉するかしないか分からない状態を長く続けていくことは地域の皆さまにも不誠実に映る。適当な機会と考えた」とこのタイミングで表明した理由を説明した。
 東電が打ち出した資金拠出や、避難路整備の必要経費を全額国費で負担する政府の方針も、県などの求めに応じたものだ。

 質疑に立った第2会派「未来にいがた」の樋口秀敏県議は、再稼働の引き換えにみえる施策の数々に「新潟県民の頬を札束でたたいているようなものだ」と語気を強めた。
 一方、柏崎商工会議所の西川正男会頭は、東電の資金拠出に関し「地元が考えている地域振興策とうまく連動できたら」と期待を寄せた。

 東電は福島第1原発の廃炉や被災者への賠償など巨額の事故対応費用を背負う。加えて原発の安全対策や送電網整備の費用もかさみ、厳しい経営を強いられている。1基動けば年間約1千億円の収支改善が見込める柏崎刈羽の再稼働は、経営を持ち直す上で「生命線」だ。再稼働は待ったなしの状況が続いている。
 原発を最大限活用する方針を掲げる政府にとっても、柏崎刈羽は、火力発電に大きく依存した東日本の電力供給の改善や、人工知能(AI)の普及などに伴う電力需要の増加に対応するため重要な電源だ。再稼働は「喫緊の課題」として、東電に加勢し理解を広げようと画策している。

 再稼働に向けた最大のハードルとなるのが新潟県などの地元同意だ。関係者によると、政府と東電は年内に同意を取り付けることを「最短コース」ともくろみ、今回の県議会を「仕掛け時」と位置付けてきた。
 焦点となる花角英世知事の判断だが「どのような形で決着しようと考えているのか腹の底が見えてこない。着実に積み重ねてきたが、今何合目にいるのかは分からない」と政府関係者は明かす。依然として先行きは見通せない。
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