[2025_10_16_06]高レベル廃棄物最終処分「第2段階」調査 寿都町長選 2度目の審判 23日告示 国民的議論乏しく(東奥日報2025年10月16日)
 
参照元
高レベル廃棄物最終処分「第2段階」調査 寿都町長選 2度目の審判 23日告示 国民的議論乏しく

 04:00
 高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定を巡り、第1段階の文献調査を終えた北海道寿都町の町長選が23日に告示される。第2段階の概要調査に進むべきだとする現職と反対派新人の一騎打ちの見通しだ。全国で調査が進む自治体はわずか3町村。国民的議論が乏しい中、前回選に続き選択を迫られる町民は複雑な思いを抱える。

 寿都町は2020年、現町長の片岡春雄氏(76)の決断で文献調査を受け入れた。「交付金を活用できることだけでなく、全国に一石を投じたかった」。翌21年の町長選で勝利し、今回7選を目指す片岡氏は9月中旬、取材に強調した。
 原子力発電環境整備機構(NUMO)の処分場選定調査は3段階。交付金を受けられ、いつでも撤退可能とされるが、調査に手を挙げた自治体は、07年の高知県東洋町以降、途絶えていた。

 片岡氏は、実際に処分場を受け入れることまでは想定せず、呼び水になればとの考えがあったとする。しかし後に続いたのは北海道神恵内村と佐賀県玄海町のみ。「問題意識が広がればと思ったが⊥と声を落とす。寿都町の男性(77)は「最後は寿都に押し付けられないか」と心配する。
 文献調査で寿都町が得た交付金は18・5億円。21年度から当初予算の約5%に当たる3億〜4億円を町立保育園運営などの事業費に割り当ててきた。概要調査ではさらに最大70億円が入り、片岡氏は選挙戦でも、概要調査までは受け入れたいと主張する考えだ。

 町は高齢化が進み、主力の漁業や水産加工業は担い手不足に悩む。今年9月末時点の人口は2555人で、5年前から350人減った。40年には2千人を切る見通し。2年前に町議となり、概要調査に反対の立場で町長選に出る新人の大串伸吾氏(42)は「町のにぎわいを取り戻したい。交付金に依存しない財政を目指す」と訴える。
 一方、原子力利用を推し進めてきた国は静観を続ける。原子力政策に詳しい長崎大の鈴木達治郎客員教授は、処分場が地震や噴火などの影響を受けないよう、国が科学的な見地から主体的に候補地を探り、地元自治体や住民に働きかけるのが筋だと指摘。「自治体の『手挙げ』を待つだけでは、全国的な議論にならない」と批判する。

 町長選の投開票日は今月28日。どの候補が当選しても、概要調査に進むかどうかはあらためて住民投票を行う流れだ。国家的事業の行方を巡り、町民が繰り返し判断を求められる状況に、60代女性は「寿都だけの問題になっている気がする」とぼやいた。
KEY_WORD:寿都町_調査応募検討_: