[2025_10_11_02]南極周辺の海底でメタンの漏出が拡大、科学者が発見 将来の温暖化予測に影響か(CNN2025年10月11日)
 
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南極周辺の海底でメタンの漏出が拡大、科学者が発見 将来の温暖化予測に影響か

 11:20
 (CNN) 南極地域の温暖化に伴い、現地の海底の亀裂から地球温暖化を促進するメタンが放出されていることが科学者らによって判明した。新たな漏出地点が「驚くべき速度」で発見されていることから、将来の地球温暖化予測が過小評価されている可能性への懸念が高まっている。

 世界中の海底には、数千年かけて形成された貯留層に膨大な量のメタンが存在する。この目に見えない気候汚染ガスは海底の割れ目から海水中に漏れ出し、しばしば泡の列となって海面へ上昇する様子でその存在が明らかになる。
 こうした海底からの漏出について、その仕組みや発生数、大気中に到達するメタン量と海中に生息するメタン分解微生物が消費する量とのバランスなどは、あまり解明が進んでいない。

 それでも科学者たちは、メタンに関する知見を深めることに余念がない。大気中での最初の20年間でこの超汚染ガスが閉じ込める熱は、二酸化炭素の約80倍にも上るからだ。
 南極のメタン噴出孔は地球上で最も解明が進んでいない場所の一つであるため、国際的な科学者チームが調査に乗り出した。彼らは船舶による音響調査、遠隔操作の潜水装置、ダイバーを組み合わせ、南極海にあるロス海の湾内約5〜240メートルの深さに位置する複数の地点でサンプルを採取した。

 その結果は驚くべきものだった。ネイチャー・コミュニケーションズ誌に今月掲載された論文によると、ロス海の浅海域で40カ所以上のメタン漏出源を特定したという。
 多くの漏出源は過去に繰り返し調査された地点で発見されており、これらが新たな漏出源であることを示唆している。報告書によれば、これは同地域におけるメタン放出の「根本的な変化」を示している可能性がある。
 研究機関「アース・サイエンス・ニュージーランド」の海洋科学者で報告書の著者であるサラ・シーブルック氏は、メタン漏出は世界的に比較的よく見られる現象だが、これまで南極で確認された活動中の漏出は1カ所だけだったと述べた。同氏はCNNに対し「例外的と考えられていた現象が、今や広範囲に広がりつつあるようだ」と語った。

 今回の発見で懸念されるのは、これらの漏出箇所がメタンを大気中に急速に移行させ、将来の気候変動予測に現在組み込まれていない地球温暖化汚染源となる恐れがある点だ。
 科学者らはまた、メタンが海洋生物に連鎖的な影響を与える可能性も危惧している。

 この地域でメタン漏出が発生している理由は不明だが、研究者らは気候変動の影響を受けている可能性を調査中だ。
 地球の反対側の北極圏では、地下からのメタン放出増加が気候変動の影響と関連しているとシーブルック氏は述べた。具体的には気温上昇、海面変動、そして陸地の緩やかな隆起などが挙げられる。こうした隆起は最終氷期に氷河が溶けた後に持続的に起きている。

 シーブルック氏は、気候変動によってメタン漏出が増加し、それがさらに気候変動の速度を増すというフィードバック・ループが生じる可能性があると付け加えた。
 科学者たちは来週から2カ月間、再び南極大陸に滞在し、漏出について詳細に分析する予定だ。

 米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の海洋生物学教授であり、この研究論文著者の一人であるアンドルー・サーバー氏はメタンに関して「大気中に増加しているものの、その理由はわかっていない」と述べている。
 サーバー氏はCNNに対して、最も重要な懸念事項の一つは、膨大なメタン貯蔵庫がある南極大陸で何が起こっているかということだと説明。人間が地球の温暖化を進め続けるなら、これらの漏出は「自然の実験室から危険の震源地」に変わりかねないと警鐘を鳴らした。
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