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[2025_07_30_12]ついに故障原因が判明も「山形新幹線」に不安の声…トラブルが発生しやすい「特有の事情」とは(デイリー新潮2025年7月30日) | ![]() |
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11:12 1992年の開業から約33年、首都圏と山形県を結ぶ大動脈として機能してきた山形新幹線の信頼が揺らいでいる。6月17日、鳴り物入りで導入されていた新型車両、E8系に重大なトラブルが発生。乗り換えなしで山形県内へ直通できることがウリだった新幹線が、福島駅で乗り換えが生じるケースが多くなり、本来のメリットを発揮できなくなったのだ。【取材・文=宮原多可志】 「山形新幹線は奥羽本線の一部区間で、線路の幅を新幹線と同様に広げることで首都圏との直通運行を可能にしました。いわゆるフル規格の新幹線を建設したものではないため、時間短縮効果はそれほど大きくありませんでしたが、開業のインパクトが大きかったのは間違いありません。当初は山形駅までの開業でしたが、のちに新庄駅まで延伸されました。 それまでに多数あった山形と羽田空港を結ぶ航空路線が激減したことからも、乗り換えをせずに首都圏に行けるという利便性の高さが支持されたのは間違いありません。山形県民はもちろん、観光客やビジネス目的の利用者の間でも、首都圏との往来には山形新幹線を使うスタイルが定着したといえます」(鉄道ライター) これからの帰省シーズン、山形新幹線は帰省客によって大混雑する。E8系のトラブルは原因究明に約1ヵ月を要した結果、補助電源装置の半導体素子の損傷が原因と特定された。原因がはっきりしたことで、対策を行ったうえで、8月1日からは通常のダイヤに戻して運行する見込みという。ただし、お盆の時期に運行されていた臨時便は、車両が不足していることから、66本が運休になると発表された。 早期に運行を再開していいのか 早々とE8系の運行を再開することに対し、不安を感じる利用者も多い。秋田県出身のA氏がこう話す。 「山形新幹線は秋田県南地方の人たちにも結構利用者がいます。というのも、秋田新幹線よりも時間はかかるものの、数千円安く東京に行くことができるので、故郷と首都圏の往復に無くてはならないインフラなのです。それゆえ、早く復旧してほしいと思っていたのですが、本当に大丈夫なのかと不安が拭えなくて、今年のお盆の帰省は飛行機を使うことにしました」 E8系に限らず、JR東日本の新幹線全体に対する不安の声がSNSでも上がっている。というのも、最近起こっている新幹線の大きなトラブルが、ことごとくJR東日本に集中しているためである。前出の鉄道ライターもこう話す。 「昨年の9月、東北新幹線の“はやぶさ”と“こまち”の連結部分が走行中に外れるという前代未聞のトラブルが発生し、鉄道ファンの間でも騒然となりました。解決したと思ったら、今年の3月にも同じトラブルが発生。事故になりかねないトラブルを二度も引き起こし、“JR東日本は大丈夫なのか”と衝撃を受けた人が多かったのです。 そして、今回のE8系のトラブルです。わずか1年間の間に、新幹線の信頼を揺るがしかねない問題が立て続けに起こっている。そのうえ、例年JR東日本はお盆や年末年始、ゴールデンウィークなどの多客期に、運行上のトラブルなどで遅延をたびたび引き起こしています。そのたびに駅が大混乱に陥っており、新幹線を使いたくないという声が上がるのも無理はありません」 トラブルが発生しやすいJR東日本特有の事情 JR東日本の新幹線が遅延すると、同社が運行する他の路線にも問題が波及することがある。それは、東京〜大宮駅間の線路を東北・山形・秋田・上越・北陸新幹線が共有している(一部の東北新幹線は北海道新幹線にも直通している)ため、各地に向かう新幹線や各地から首都圏に集まってくる新幹線とで、既に線路が逼迫しているためである。 そのうえ、JR東日本の新幹線は大宮駅から先も、線路が分かれている。JR東海が運行する東海道新幹線は分刻みで東京駅を発着しているものの、途中の駅から新幹線が枝分かれすることがない。新大阪駅から先は山陽新幹線と直通運転しているものの、分岐や連結なども必要としないシンプルな路線だ。さきの鉄道ライターが言う。 「JR東日本の下りの新幹線は、大宮駅でいきなり東北方面と新潟・北陸方面に線路が分岐します。東北方面では福島駅で山形新幹線の線路が分かれますし、盛岡駅では秋田新幹線の線路が分かれている。新潟・北陸方面に向かう新幹線も、途中の高崎駅で線路が分かれています。 異なる方面に向かう新幹線が同じ線路を共用したり、途中で列車の切り離しや連結があったりと、東海道新幹線とは異なる複雑な運用をしているのがJR東日本。しかも、福島駅や盛岡駅で行われる切り離しや連結に要する時間は、わずか数分という短さです」 秋田〜盛岡駅間の秋田新幹線の運転に携わっていたJR東日本の社員に話を聞いたところ、「うちが遅れてしまうと、盛岡駅で待っている新幹線に迷惑がかかってしまう」という心理的なプレッシャーが大きいのだという。秋田県の区間はクマやカモシカが出没したり、雪による障害が発生したりしやすいため、運行の際は相当な気を使うのだそうだ。 「これほど複雑なダイヤで運行される新幹線を毎日捌いているのは神業と言ってよく、日本の鉄道のシステムがいかに優れているのかを物語っています。しかし、正確に運行されることが前提の無理なダイヤを組んでいる印象は否めません。今後、北海道新幹線や北陸新幹線が延伸すれば、ますます線路が逼迫するのではないかと心配です」(鉄道ライター) みどりの窓口に行列が…… E8系の再開が8月1日から始まる背景には、お盆の多客期になんとか間に合わせたいという、現場の強い熱意があったためだろうと想像できる。しかし、解決を急いだのは本当に正しかったのだろうか。昨年と今年に発生した連結器が外れるトラブルも、いまだに根本的な原因は究明されていないという。 JR東日本は合理化やIT化を意図してか、みどりの窓口を次々に撤去しており、主要駅の窓口に行列ができる光景は風物詩となっている。そのうえ、鉄道のトラブルが重なってしまうと、払い戻しや乗車変更を求めて大蛇のような列ができる。JR東日本も券売機の機能の強化に乗り出したものの、いまだに窓口でなければできないことが多い。 鉄道のIT化は、何の滞りもなく運行されていれば可能かもしれないが、想定外のトラブルに見舞われると対応が困難になることは、これまでのトラブルで実証されている。多くの人が帰省する8月、新幹線が滞りなく運行されることを祈念したい。万が一、トラブルが起こってしまったら、今度こそ、新幹線への信頼を根底から揺るがしかねないだろう。 デイリー新潮編集部 |
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KEY_WORD:東北-新幹線-新車両-トラブル_: | ![]() |
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