[2025_07_15_01]<社説>’25 参院選 エネルギー政策 原発回帰の矛盾、議論を(東京新聞2025年7月15日)
 
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<社説>’25 参院選 エネルギー政策 原発回帰の矛盾、議論を

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 その恐怖を胸に刻み、原発に依存しない社会を目指すことが、フクシマの教訓だったはずだが、政府はすっかり忘れてしまったらしい。政府がエネルギー政策で「原発回帰」へとかじを切って初めて迎える参院選だが、大きな争点になっていないのは不可解だ。
 石破政権が2月に閣議決定した国のエネルギー政策の指針「第7次エネルギー基本計画」では、福島の事故以降、第6次計画まで一貫して盛り込まれてきた「可能な限り原発依存度を低減」との文言が消えた。脱炭素などを理由に原発の「最大限活用」を掲げ、新増設を推進する方針さえ示した。
 この6月には「原則40年、最長60年」だった原発の運転期間に審査などによる停止期間を上乗せできることを含むGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法が全面施行された。60年を超えての運転は世界でも例のない未知の領域である。危険な「安全神話」の復活と言うべきだろう。
 各党の公約は原発への言及が全体的に目立たず、物価高騰対策の現金給付や減税、コメ問題を巡る論戦の中に埋もれた感がある。原発も災害大国で暮らす私たちにとって死活問題だ。活発な議論はないとしても、各党の立ち位置をきちんと見極めたい。
 与党の自民、公明両党に加え、野党の日本維新の会、国民民主党、参政党が原発活用に積極的だ。これに対し、れいわ新選組は原発の即時廃止、共産党、社民党は原発ゼロを訴える。立憲民主党は脱原発依存を目指すとするが、再稼働は条件付きで容認する立場だ。
 政府が後押しする東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働は、残る条件が「地元」同意のみとなった。十分な安全対策をとらないまま福島の事故を起こし、その後も不祥事が続く東電に再び原発を委ねてよいのか。新潟や同原発の電気を使う首都圏だけでなく、国民全体の問題ととらえるべきだ。
 使用済み核燃料など危険な「原発ごみ」の処分先には、めどさえ立っていないのだから、それを放置して、原発依存に立ち戻るとしたら、無責任というほかない。将来世代に負の遺産を押し付けてよいのか。各党は、選挙戦の中で、せめて、この点を集中的に議論すべきだろう。
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