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[2025_06_06_13]大型変圧器、全国で不足 DC急拡大、電力需要増招く(電気新聞2025年6月6日) | ![]() |
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参照元
04:00 電力安定供給に欠かせない大型変圧器が、全国的に不足する異常事態が続いている。需給逼迫が継続すれば、データセンター(DC)の新増設などに起因する需要増加や、再生可能エネルギー電源拡大のボトルネックになりかねない。背景を探ると、複数の要因が絡み合う複雑な構図が見えてきた。 「生産枠がかなり先まで埋まっている。いま大型機器で受注があったとしても、納入できるのは2030年以降だろう」。三菱電機で受変電機器の製造などを手掛ける赤穂工場(兵庫県赤穂市)は活況に沸く。中小型も埋まっているが、中でも逼迫しているのが、発電所や変電所に設置する20万V以上の大型変圧器だ。 ◇数年先まで 需給逼迫の原因は何か。一般送配電事業者の幹部は23年度頃すでに兆候がみられたと振り返る。引き金となったのはレベニューキャップ(RC)制度だ。 国が認めた収入上限に基づき一般送配電事業者の投資費用の回収を担保する仕組みで、23年4月の導入を踏まえ、高経年化対策や再エネ対応を理由とした大型変圧器の発注が集中した。「RC以前に発注したものは通常の納期だったが、(導入後)『生産枠が数年先まで埋まっている』と言われるようになった」と先の幹部は語る。 可動部を持たない変圧器は機械的な摩耗がなく、一般的に20〜30年程度という寿命を超え、運用されることも少なくない。高度経済成長期に開発され、延命され続けてきた機器の更新需要が全国的に重なった。 ただ、高経年化対応は事前に想定できる需要であり、メーカー側も織り込んでいた節がある。需給逼迫を深刻化させたのは他の2つの要因だ。 ◇系統増強で 一つ目は将来の電力需要が増加基調に転じたこと。生成AI(人工知能)の普及に伴い大量の電力を消費するDCが急拡大しつつある。半導体工場の建設も進み、基幹系統増強のニーズが高まった結果、想定を超える大型変圧器の需要が生まれた。三菱電機赤穂工場の幹部は「日本全体の電力需要は人口減少で緩やかな縮小傾向にあると予測されていたが、ここまで一気に状況が変わってしまうとは思ってもいなかった」と話す。 大型変圧器の需給逼迫に危機感を持った顧客の駆け込み発注により、既に赤穂工場での生産枠は徐々に埋まりつつある。「一時は海外向けが大半を占めていたが、現在は国内需要が圧倒的に多い。更新需要と新たな需要がダブルで押し寄せてきている」(同)。これまでは1、2年先の案件を受け入れていたが、5〜7年先の案件まで生産枠を確保してほしいと顧客から問い合わせがあり、生産枠の取り合いが起きているという。 ◇生産見直し もう一つの要因として複数の関係者が指摘するのが、日立製作所の生産体制見直しだ。同社は高圧受変電機器の生産について、日立エナジーの海外工場への移管を進めている。大型変圧器の生産は原則として25年度から、中国をはじめとする海外工場に切り替えた。 日立エナジーの変圧器は、世界で流通する国際電気標準会議(IEC)規格に対応している。一方、日本国内にある既存の大型変圧器は電気学会・電気規格調査会(JEC)対応だ。 JECはIECとの整合性を図り制定されており、両規格に上下関係はない。だが、一部事業者からは「(JECは)日本特有の地震や塩害に手厚く、JEC対応の製品を買えるなら買いたいという思いはある」という声も漏れる。 特に、50万V級変圧器は、大手電力向けの製造知見を持つ国内メーカーが限られることもあり、逼迫感に拍車をかけている。「日立のIEC対応機器が国内で流通するのは時間の問題」というのは関係者共通の見立てだが、現状は「1社が抜け落ちたような状況」(一送関係者)となっているという。 限られた大型変圧器のパイをどう割り振るかも、一般送配電事業者にとって頭の痛い問題だ。 DCに代表される需要対応は待ったなしだが、高経年化対応も無視できない。ある事業者は「経年化更新で使う予定だった機器を需要対策に転用できないか検討している」と苦しい台所事情を明かす。 |
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KEY_WORD:能登2024-変圧器の耐震性向上が必要_:再生エネルギー_: | ![]() |
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