[2025_06_06_10]原子炉の劣化調べる「監視試験片」、電力各社が再利用検討…60年超運転が可能になり不足の恐れ(読売新聞2025年6月6日)
 
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原子炉の劣化調べる「監視試験片」、電力各社が再利用検討…60年超運転が可能になり不足の恐れ

 15:00
 「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が6日全面施行され、原子力発電所の60年超運転が可能となったが、原子炉の経年劣化を調べるのに使う金属片「監視試験片」が不足する可能性が出ている。原発を持つ電力会社は、使用済みの試験片の再利用を検討している。

 原子炉は核分裂反応で生じる放射線を浴び続けると、徐々にもろくなる。そのため電力会社は運転開始時、原子炉と同じ素材の監視試験片を原子炉内に複数設置し、数年から十数年ごとに一つずつ取り出して調べている。取り出した試験片は原子炉と同じ期間の放射線を浴びており、原子炉の劣化状況を推測できる。

 原子炉内に設置される「監視試験片」

 取り出した試験片を調べる際は、機械式のハンマーでたたいて壊し、割れやすさを見る。壊れた試験片はサイズの問題などで、再び使うことはできない。しかし電力会社は運転開始時、40年の運転期間を想定して試験片を準備しており、60年超運転では数が不足する恐れがある。
 読売新聞が、原発を持つ電力各社に聞き取り調査したところ、全10社が試験片が不足した場合には、使用済みの試験片を再利用する意向を示した。中でも日本原子力発電の東海第二原発は、4組あった試験片を使い切ったため、再利用の準備を進めている。中部電力浜岡3号機、関西電力高浜3、4号機、九州電力川内1号機は、試験片が残り1組となっている。

 再利用では、使用済みの試験片で変形していない部分を切り取り、他の材料を継ぎ足して元のサイズにする。通常の試験片と同様に使えるかについて、原子力規制委員会が今後審査する。

 東京科学大の奈良林 直 ・特定教授(原子炉工学)は「再利用は技術的に可能」とした上で「新たな知見も取り入れて、より安定的な手法の開発を目指すべきだ」と話している。

 ◆ 監視試験片 =原子炉に設置する金属片。電力会社が原子炉の経年劣化を把握するために用いる。長さ約5センチ、厚さ約1センチ。金属片は数十個で1組になっており、劣化状況を調べる際は1組ずつ取り出す。
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