[2025_06_01_02]再稼働した東北電・女川2号機 非常時の備え 幾重にも 東通も多様な安全対策?(東奥日報2025年6月1日)
 
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再稼働した東北電・女川2号機 非常時の備え 幾重にも 東通も多様な安全対策?

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 東日本大震災で被災し、2024年10月に再稼働した東北電力女川原発2号機(宮城県)。本紙は28日、運転中の原子炉建屋内を取材した。原子炉格納容器の庄力を下げて破損を防ぐ「フィルター付きベント(排気)装置」をはじめ、何重にも施された非常事態への備え。東通村の東北電・東通原発1号機(運転停止中)も今後、再稼働に必要な安全対策の導入や工事が多岐にわたる可能性がありそうだ。
 女川原発は、過酷事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)。女川町、石巻市にまたがり、入り組んだリアス海岸沿いに立つ。震災では震度6弱、地震の加速度567・5ガルを観測。津波によって海水が取水路から流入し、2号機原子炉建屋地下が浸水した。複数の外部電源が故障した一方、残った電源で1〜3号機全てを冷温停止させた。
 2号機の原子炉建屋内に入り、重厚な水密扉を開けて最上階へ。壁沿いには、炉心損傷の発生時に充満する水素を水に戻す「水素再結合装置」19台が点在していた。福島事故のような水素爆発を防ぐため、震災後に新たに導入した安全対策。フロアの天井などに張り巡らされた鉄骨部材も、地震動の目安を千ガルに引き上げた耐震強化の一つだ。
 原子炉を冷却できず温度と圧力が高まると、格納容器が壊れる恐れがある。上昇を抑える冷却ポンプなどを設置しているが、さらに切迫した事態も想定。容器内の蒸気を大気中に出して破損を防ぎつつ、放射性物質の放出量を干分の1以下に抑えるためフィルター付きベント装置を導入した。
 建屋外に設ける原発が多いとされるが、女川2号機は建屋内の一室を活用。壁をいったん取り外し、ステンレス鋼製で円簡形のフィルター装置3台を入れた。非常時は原子炉と装置をつなぐ配管の弁を操作して排気するが、女川原発の増井伸一専門役は「中央制御室から操作するので、作業員が弁に近づく必要はない」と説明する。
 建屋の外に出ると、海抜29mの防潮堤がそびえる。震災では1mほど地盤沈下し、海抜13・8mとなった敷地に向かって、高さ最大約13mの津波が押し寄せた。震災後、原子力規制委員会の安全審査で津波の想定水位を23・1mと決めたが、防潮境は「建築可能な最大の高さ」(増井専門役)にした経緯がある。
 竜巻対策として敷地内の車両は自家用車を含め、駐車のたびにロープなどで地面と固定。千ガルへの耐震補強は一部の道路にも施している。再稼働までにかかった安全対策工事費は5700億円規模に上るという。
 東通1号機も同様にBWRで、安全審査が長期化している。フィルター付きベント装置は、導入に向け建屋外側で専用ピットを施工中。水素再結合装置は現段階で、女川2号機より多い24台以上を計画している。
 ガスタービン発電機や代替循環冷却系なども計画するが、導入・整備はこれから。敷地の一部をかさ上げする新たな津波対策を含め、今後の審査で詳細が決まる内容も少なくない。東北電は「女川の知見を反映し、審査や安全対策工事に引き続き全力で対応する」としだ。 (佐々木大輔)
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