[2025_05_02_02]秋田 風力発電の風車の羽根落下 近くで倒れていた高齢男性死亡(NHK2025年5月2日)
 
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秋田 風力発電の風車の羽根落下 近くで倒れていた高齢男性死亡

 20:57
 2日午前、秋田市の海浜公園にある風力発電の風車から羽根が落下し、近くで80代の男性が意識不明の状態で倒れているのが見つかりその後、死亡が確認されました。男性は頭にけがをしていて、警察が落下した羽根との関連など、詳しい状況を調べています。

 警察によりますと、2日午前10時半ごろ、秋田市新屋町の新屋海浜公園で「風力発電の風車からプロペラが落下している」と警察に通報がありました。
 警察や消防によりますと、現場に倒れていたのは秋田市新屋元町の宍戸敬さん(81)で、頭にけがをし、意識不明の状態で市内の病院に運ばれましたが、その後、死亡が確認されたということです。
 警察は風車から落下した羽根との関連など、詳しい状況を調べています。
 NHKが午後2時ごろ、現場上空からヘリコプターで撮影した映像では、風車の3枚の羽根のうち、1枚が付け根部分が折れて垂れ下がり、地面の道をふさぐように破片が落ちているのが確認できます。
 秋田地方気象台によりますと、秋田市には当時、強風注意報が出され、午前8時前には23メートルの最大瞬間風速を観測していました。

 風車設置の会社 “3月の定期点検では異常見つからず”

 風車を設置した「さくら風力」によりますと、事故が起きた風車は羽根の長さがおよそ40メートルあり、最も高いところで高さ120メートルほどになるということです。
 現場の風車は年に2回の定期点検を行っていて、ことし3月に行った際には、事故につながるような異常は見つからなかったということです。
 羽根が落下する原因として落雷や想定外の突風、それに定期点検に不備があった場合が考えられるということですが、会社の担当者はNHKの取材に対し「今回の事故との因果関係については警察の捜査を待ちたい。周辺の住民に迷惑をかけたことは事実で、原因や状況を確認しながら対応していきたい」と話していました。

 過去にも羽根折れて落下する事故

 秋田県によりますと、現場の風車は東京に本社がある「さくら風力」が設置し、2009年から運転していますが、15年前の2010年12月にも3枚ある羽根のうちの1枚が折れて地面に落ちる事故があったということです。
 当時、けがをした人などはいませんでしたが、この会社の責任で修理が行われ、その後も運転が続いていました。
 一方、年2回の法定検査や定期点検などの保守業務は「日立パワーソリューションズ」の秋田県内の営業所が請け負っているということで、日立パワーソリューションズはNHKの取材に対し「現在、現地で確認作業を行っている」としています。

 専門家「周辺の風車も至急 点検を」

 今回の事故について、国内の風力発電の事故に詳しい足利大学の永尾徹特任教授は「風車は非常に頑丈に作られているので、風速60メートルとか、80メートルとかまで耐えられるようにできている。きょうの強さの風が原因で折れたとは考えにくい」と話しています。
 同じ風車で15年前に羽根が地面に落ちる事故が起きていたことについては「事故のあと10数年運転していたことから考えると、その時の痕跡が残っていて壊れたということも一般論としては考えにくい。これは仮定の話だが、あまり遠くない過去に雷などで不具合があり、十分に検知できないまま運転していた可能性もある」と述べました。
 その上で「周辺の風車は風や雷などの自然環境が同じになるので、至急、点検をする必要がある」と指摘しています。

 秋田市 公園の立ち入りを規制

 羽根が落下した風車がある新屋海浜公園は秋田市南西部の日本海に面した場所にあり、敷地内は砂浜と緑地が広がっています。
 風車を支える柱は一部に柵が設けられるなどしてすぐそばまでは近づけないようになっていますが、その周りには舗装された道や休憩所があり、公園を訪れた人が利用していました。
 事故を受けて、秋田市は2日から公園の立ち入りを規制することにしました。

 市民「事故 あってはならない」

 風車の羽根が落下した現場周辺の風景の撮影を10年以上続けているという秋田市の70代の男性は「ニュースを見て心配で見に来ました。事故はあってはならないし、残念です。普通の人では危険かどうか分からないので、強風の時は立ち入り禁止にするなどしてほしい」と話していました。

 風力発電所 秋田は全国3番目の多さ

 経済産業省によりますと、ことし1月時点で、秋田県内の風力発電所の数は31と全国で3番目に多く、最大出力の合計も45万6744キロワットと北海道、青森県に次いで3番目に多いということです。

 風力発電の事故 全国でも

 日本風力発電協会によりますと、風力発電で使われる風車は去年12月末の時点で、全国に2720基あるということです。
 一方、風力発電の事故は、過去にも起きています。
 令和2年に鳥取県琴浦町に設置された高さ65メートルの風力発電用の風車で、羽根が1本折れる事故がありました。
 また平成30年には台風の影響で、兵庫県淡路島の高さおよそ40メートルの風車が倒壊しています。
 こうした事故の総数は、経済産業省の統計調査によると、令和5年度までの5年間で、204件に上っています。事故の内訳をみると、204件のうち、風車の羽根部分の破損は27件でした。また、同じ期間の人身事故については、令和2年度は2人でしたが、その後はありませんでした。
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