[2025_04_27_02]“ロシアの攻撃で穴” チョルノービリ原発 シェルターの状況は(NHK2025年4月27日)
 
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“ロシアの攻撃で穴” チョルノービリ原発 シェルターの状況は

 18:45
 ウクライナのチョルノービリ原子力発電所を管理する政府機関のトップがNHKのインタビューに応じ、放射性物質の飛散を防ぐために設置されたシェルターについて、「ことし2月のロシアによる攻撃で機能していない」と述べたうえで、修復には1年以上かかるという見通しを示しました。
 チョルノービリ原発では事故のあと、放射性物質の外部への放出を防ぐため、建物を覆う「石棺」と呼ばれる建造物が造られ、その後、それをさらに覆うシェルターが設置されましたが、ウクライナ政府はことし2月にロシアの無人機による攻撃を受けたとしています。

 “シェルターはもはや機能していない”

 原発周辺の汚染区域を管理するウクライナ政府機関のトップ、イーシェンコ長官がことし4月、首都キーウでNHKのインタビューに応じ、攻撃による被害状況を明らかにしました。
 それによりますと、シェルターにはおよそ15平方メートルの穴があき、火災が発生したということです。
 さらに、消火活動中、シェルター内へホースなどを通すため200以上の穴をあける必要に迫られたということです。
 イーシェンコ長官は「シェルターはもはや機能していない。何らかの危険にさらされた場合穴があいているので、大気中に放射性物質が放出される可能性がある」と述べ、強い懸念を示しました。
 そのうえで「近くには使用済み核燃料の保管施設もある。無人機が衝突する場所によっては何でもありえた」と述べ、ロシアを非難しました。
 一方、「石棺」には被害はなく放射性物質が漏れ出すことはなかったとしています。
 イーシェンコ長官は修復には1年以上が必要だという見通しを示し「われわれは支援を求めているが侵攻を止めることが最も重要だ」と訴えました。

 国際社会の支援を受けて完成

 チョルノービリ原発では、39年前の事故のあと、爆発した建屋は放射性物質の飛散を防ぐため「石棺」と呼ばれるコンクリートなどの建造物で覆われてきました。
 しかし、老朽化で放射性物質が漏れ出すおそれが出ていたため、「石棺」ごと覆う高さ108メートル、幅257メートルのアーチ型のシェルターが9年前国際社会の支援を受けて完成しました。
 総工費は15億ユーロ、日本円にしておよそ2400億円で、ヨーロッパ復興開発銀行が基金を設置し、日本やEU=ヨーロッパ連合、それにアメリカなどが拠出しました。
 ヨーロッパ復興開発銀行によりますと、シェルターは100年使用でき、竜巻にも耐えられる強度で設計され、さびや腐食を防ぐために換気の機能なども備えているということです。
 チョルノービリ原子力発電所の事故が起きてから39年となるのを前に、4月25日、NHKの取材班は特別な許可を得て、現地に入りました。
 原発から半径30キロの区域はいまも立ち入りが厳しく制限されています。「石棺」を覆うシェルターに到着すると、入り口で原発職員から指示を受け、用意されていた防護服とヘルメット、線量計を身につけました。
 そして、奥へ進みシェルターの中央制御室に案内されました。この中央制御室では、職員が24時間常駐し、シェルター内の電源供給や放射性廃棄物を管理しているほか、監視カメラで石棺の状況を確認しています。担当の職員はシェルターの見取り図や写真を使って無人機が衝突した場所や爆発が起きたときの状況などについて説明しました。

15平方メートルほどの大きさの穴

 このあと、取材班はシェルターの外に出て、15平方メートルほどの大きさの穴があいているのを確認しました。
 職員はシェルター内に雨や湿気が入らないように穴を塞ぐことが最優先だとして、「シェルターを100年間使用するためには影響を排除しなければならない」と話していました。
 チョルノービリ原発は、2022年2月下旬から1か月余りにわたってロシア軍に占拠され、一時、技術者の交代の見通しが立たなくなるなど安全への懸念が高まりました。

 シェルター内の状況は

 チョルノービリ原発周辺の汚染区域を管理するウクライナの政府機関、立入禁止区域管理庁は被害状況を確認するため、4月、シェルターの中に入って映像を撮影しました。
 ウクライナ当局によりますとシェルターは外壁と内壁の2層構造になっていて、ロシアの無人機による攻撃でステンレスなどで作られている外壁に15平方メートルほどの穴ができたということです。
 映像からは、シェルターの外壁に穴があき、内部に光が差し込んでいる様子がわかります。また、内側に向かって大きくへこんでいる部分や複数の小さな穴が残っていることも確認できます。
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