[2025_04_15_03]タイの超高層ビル崩壊はパンケーキクラッシュか、「低品質な鉄筋」巡り捜査本格化 木下順平(日経クロステック2025年4月15日)
 
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タイの超高層ビル崩壊はパンケーキクラッシュか、「低品質な鉄筋」巡り捜査本格化 木下順平

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 ミャンマー中部を震源とする2025年3月28日の地震で、震源から約1000km離れた隣国タイの首都バンコクでは、建設中だった鉄筋コンクリート(RC)造の超高層ビルが一気に崩壊した。高層の建物が大きく揺れる長周期地震動の影響と見られるが、バンコクでの大規模被害はこの1棟のみ。タイ当局は、ビルに使用されていた鉄筋の一部が基準に満たない低品質のものだったとして、鉄筋を製造した中国系企業の捜査を進めている。

ミャンマーで発生したM7.7の地震によりタイ・バンコクで建設中の超高層ビルが倒壊。2025年4月2日時点で15人が死亡し、70人以上が生き埋めとなっている可能性がある(写真:ロイター=共同)
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 複数の現地メディアによると、崩壊したビルはおよそ30階建てで、タイ会計検査院の新庁舎として建設中だった。施工者は、タイ大手建設会社のイタリアン・タイ・デベロップメントと中国国営建設会社である中鉄十局の合弁会社。25年4月2日時点で15人が死亡し、70人以上が生き埋めになっている可能性がある。
 今回の地震はミャンマーを南北約1000km以上にわたって縦断する世界有数の活断層「サガイン断層」で地盤が水平方向にずれ、破壊が起こったことで生じた。断層破壊の規模が大きく、震源が10kmと浅かったため、長周期地震動が猛威を振るった恐れがある。

 3000人超死亡のミャンマー地震、400km以上の「非常に長い」断層破壊で広範囲に揺れ

 ミャンマー地震では、震源に近いマンダレー以外に、タイ・バンコクでも大きな被害をもたらした。被害はなぜ広範囲に及んだのか、専門家に聞いた。
 実際、バンコクでは25年4月2日までに1万件以上の建物損傷が報告されている。ただし、外装の亀裂など軽微なものがほとんどだ。3棟から成る超高層マンション「Park Origin Thonglor(パークオリジントンロー)」では、地震で建物が大きく揺れて各棟を結ぶ渡り廊下のジョイントが損傷したものの、不動産会社のOrigin PropertyはSNSで、調査の結果、建物の安全性に問題はなかったと強調している。
 この他にも、屋上プールから大量の水が落下した超高層マンションなどはあるものの、崩壊した1棟以外に大規模な被害は確認されていない。建設中とはいえ、なぜこのビルだけが崩壊に至ったのか。
 タイ会計検査院は25年3月30日に公表した声明で、「専門家によって構造上の完全性が検証され、設計変更はなかった」としている。しかし、タイ当局は使用された資材に問題があった可能性があると見ている模様だ。

 タイ工業省は現場から採取した鉄筋を検査。一部が安全基準を満たしていないと判明したことから、詳しい調査を進めてきた。捜査当局も鉄筋を製造した中国系企業の捜査を本格化させている。

地震の震源はミャンマー・マンダレー付近の深さ約10kmの地点だった(出所:米地質調査所)
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(後略)
KEY_WORD:ミャンマー中部-M7.7大地震_: