[2025_03_29_08]ミャンマーで地震 144人死亡732人けが タイでも死傷者【28日】(NHK2025年3月29日)
 
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ミャンマーで地震 144人死亡732人けが タイでも死傷者【28日】

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 28日午後3時すぎ、ミャンマー中部でマグニチュード7.7の地震がありました。
 ミャンマーで実権を握る軍のトップ、ミン・アウン・フライン司令官は28日夜、国民向けにテレビで演説し、今回の地震でこれまでに144人が死亡し、732人がけがをしたと明らかにしました。
 隣国タイの首都バンコクでは建設中の高層の建物が倒壊するなどして、これまでに3人が死亡したほか、およそ70人が倒壊現場に取り残されていて、救助活動が行われているということです。

 目次
 【タイ】3人死亡 高層の建物倒壊 多数の人取り残されたか
 【専門家】震源から離れたタイで被害 長周期地震動か

 【29日】ミャンマー大地震 144人死亡732人けが タイでも6人死亡

 USGS=アメリカ地質調査所によりますと、日本時間の28日午後3時20分ごろミャンマー中部のマンダレー付近を震源とする地震がありました。
 震源の深さはおよそ10キロ、地震の規模を示すマグニチュードは7.7と推定されています。
 また、この10分あまりあとにも近くでマグニチュード6.4の地震があり、AFP通信が配信した首都ネピドーの映像では道路に大きな亀裂が入ったり、地面がもりあがったりしている様子が捉えられています。

 【中継・ミャンマー】(2分10秒)

 28日 ニュースウオッチ9で放送
 ※データ放送ではご覧いただけません。

 Q。地震発生時、ミャンマーにいて、取材を続けている山香記者に聞きます。山香さん、地震が発生したときはどのような状況でしたか?

 A。地震が起きたとき私は事務所のスタッフとともに車でミャンマーの首都ネピドーから南にある最大都市ヤンゴンに向かっていました。車両が揺れるのを感じたため、とっさに車を道路脇に止めて、避難し、安全を確保しました。車を降りた後も揺れは下から突き上げるように数秒間続いたため、身をかがめて揺れが止まるのを待ちました。はじめに揺れを感じたその10分後にも揺れを感じました。

 Q。地震後、取材を続けてきましたが現地の被害や住民の様子はどうでしたか?

 A。ヤンゴンに向かう道路でも大きな亀裂が入っていたりコンクリートが盛り上がったりしていて、一部の道路は寸断されているのを目にしました。このあたりは田畑が広がる地域ですが地元の人たちは広場や公園など公共施設に集まり、家族や親戚の安否を確認している様子でした。地元当局者によりますと、特に揺れが強かった地域では電気やガスが止まったほか、水道施設にも一部影響が出ているということで、状況の確認を急いでいるということです。

 Q。ミャンマーでは、日本企業なども活動していると思いますが、情報は入っていますか?

 A。現地に進出する知り合いの日本企業関係者に話を聞いたところ、企業の活動に大きな影響が出るかどうか現在被害の有無などを調査中だということです。ミャンマー人従業員の中には家族や親族にけが人が出ていないかなど、安否の確認をしている人もいるということで不安が広がっています。

 Q。地震が発生して6時間が経ち、暗くなってきていると思いますが、現地での救助活動などはどのように行われていますか?

 A。地震の被害にあった地域を中心に軍当局は救助活動を急いでいます。ただ、支援物資を運ぶ車が通る道が一部寸断されていることなどもあり、難航しているという話も聞きます。本格的な救助活動が始まるまでにはしばらく時間がかかりそうです。現地は、少しずつ暗くなり始めています。被害の全容が分からない中、夜を迎えようとしています。

 【タイ】3人死亡 高層の建物倒壊 多数の人取り残されたか

 隣国のタイ当局によりますと震源から1000キロ以上離れた首都バンコクで建設中の高層の建物が倒壊して2人が死亡、12人がけがをしたほか、およそ70人が取り残されていて、救助活動が行われているということです。
 タイ当局は、別の工事現場でもクレーンが倒れ、1人が死亡したとしています。

 【タイ】ビルのプール 揺れ水があふれ出す

 バンコク中心部にある建物の17階にあるNHKアジア総局のオフィスでは、1分以上大きな横揺れが続きました。
 窓からは近くのビルの上にあるプールの水が、揺れであふれ出す様子が確認できました。揺れが収まると建物の中からは大勢の人が外に避難し、状況を見守っています。

 【専門家】震源から離れたタイで被害 長周期地震動か

 ミャンマーの大地震で、震源から遠く離れたタイの高層ビルが揺れたことについて、建築構造の専門家は、遠くまで伝わる「長周期地震動」が到達したと指摘しています。
 ミャンマーで起きたマグニチュード7.7の地震に伴い、震源から1000キロ以上離れたタイのバンコクで高層ビルが揺れるなど、被害が出ました。
 建築構造が専門で、東京科学大学の和田章名誉教授は、揺れ方などから「長周期地震動」によるとみています。
 「長周期地震動」は、超高層の建物などを長くゆっくりと揺らす周期の長い揺れで、2011年の東日本大震災では、震源からおよそ770キロ離れた大阪の超高層ビルも大きく揺れました。
 周期の長い地震ほど遠くまで伝わりやすいため、今回の地震でも「長周期地震動」が到達した可能性は十分ありうるとしています。
 その上で、ビルの建っている地盤などが軟弱な場合は、さらに揺れが増幅するおそれがあると指摘しています。
 和田名誉教授は、「高層ビルはふだんは景色も見えて快適だが、地震の時の『長周期地震動』は相当怖い。家具を壁に固定するなど注意してほしい」と話しています。

 【専門家】軟弱な地盤が揺れを増幅させた可能性も

 ミャンマーの大地震で1000キロ以上離れたタイのバンコクでも被害が出たことについて、専門家は軟弱な地盤が揺れを増幅させた可能性があると指摘しています。
 ミャンマーで起きたマグニチュード7.7の地震では、震源から1000キロ以上離れたタイのバンコクでも建設中の高層の建物が倒壊したほか、ビルやホテルが大きく揺れました。
 こうした被害について、地盤工学が専門の東京科学大学の田村修次教授は地盤の影響を指摘しています。
 田村教授によりますと、固い地盤では震源から遠くなるほど揺れが衰えていきますが、軟弱な地盤があると揺れは増幅され、層が厚いほど揺れの周期は長くなるということです。
 周期が長い揺れは「長周期地震動」と呼ばれ、高層の建物を大きく揺らす特徴があり、東日本大震災でも震源からおよそ770キロ離れた大阪の超高層ビルが大きく揺れました。
 田村教授は、バンコクは軟弱地盤が厚く堆積しているため、増幅された長周期の地震波によって高層の建物だけが選択的に揺れた可能性があるとしています。
 さらに、地震が少ないバンコクでは建物の耐震性能が高くないため、被害が拡大した可能性があるとしたうえで、「『長周期地震動』による被害は1985年のメキシコ地震や東日本大震災でも起きていて、超高層の建物は遠くの大きな地震の影響を受けやすいことを知ってほしい」と話しています。

 【ミャンマー】“広い地域で複数の建物倒壊”国営メディア

 ミャンマーの国営メディアによりますと、地震によって、中部マンダレーや首都ネピドーなど広い地域で複数の建物が倒壊する被害が出ているほか、道路に被害が出て通行止めになっているところもあるということです。
 また、この中では、河川にかかる橋が崩壊している写真も伝えています。

 【ミャンマー】橋の崩壊で物流にも影響か

 地震があったミャンマーの最大都市ヤンゴンにあるIFRC=国際赤十字・赤新月社連盟の事務所の担当者が28日、現地からオンラインで記者会見し、ミャンマー国内での被害について説明しました。
 それによりますと、被害が大きかったのは第2の都市マンダレーを含むミャンマーの北西部を中心に6つの地域で、道路や橋、公共施設などに被害があったということです。
 また、マンダレーと周辺の都市、ザガインを結ぶ主要な橋が崩れたということで「国内の物流にも影響を引き起こすだろう」と指摘しました。
 さらに、被害があった地域には、大型のダムが複数あるということで「ダムの被害を懸念しており、現地では状況の調査が行われている」と述べ、ダムの決壊などの2次被害が起きないか、注視しているとしています。

 【ミャンマー】ネピドー 複数のけが人か 建物にも被害

 AFP通信が伝えたミャンマーの首都ネピドーの映像では、病院の外に大勢の人が集まっているほか、地震でけがをしたとみられる複数の人が横たわり、手当てを受けているような様子が写っています。
 また、道路に亀裂が入り、地面がもりあがっている様子や建物の屋根や壁が崩れている様子も確認できます。

 【ミャンマー】“6地域に非常事態宣言”

 ミャンマーで実権を握る軍は今回の地震を受けて28日声明を発表し、震源付近の中部マンダレーのほか、首都ネピドーや北西部のザガイン管区、中部マグウェ管区など6つの地域に対し、地震の対応を担当する当局が非常事態を宣言したことを明らかにしました。

 【ミャンマー】過去の地震被害

 今回地震が発生したミャンマーではこれまでにも大きな地震が起きて被害が出ています。
 2011年にはタイとの国境に近い東部シャン州でマグニチュード6.8の地震があり、70人以上が死亡しました。
 また、2012年には中部マンダレーから北におよそ110キロの地点を震源とするマグニチュード6.8の地震があったほか、2016年にも中部でマグニチュード6.8の地震が発生し、死者が出ています。

 【中国】雲南省でも被害

 また、中国メディアによりますと、ミャンマーと国境を接する中国南部の雲南省でも揺れが観測され、地元当局は、家屋に被害が出ているほか、少なくとも2人が軽傷を負い、病院に運ばれたとしています。

 【専門家】震度7相当の激しい揺れか

 ミャンマーで発生した大地震について、地震の専門家は内陸の活断層がずれ動いたことで起きたとみられるとした上で、日本の震度7に相当するような激しい揺れが起きていた可能性があると指摘しています。
 ミャンマーで起きたマグニチュード7.7の地震について、地震活動に詳しい東京大学地震研究所の酒井慎一教授は、震源の位置や深さなどからプレートの内部にある内陸の活断層がずれ動いたとみています。
 震源が10キロと浅いことから、周辺では日本の震度階級で震度7に相当するような激しい揺れが発生し、建物が倒壊している可能性もあると指摘しています。
 また、震源からは離れたタイのバンコクなどでも高層ビルがゆっくりと揺れていたことについて、周期の長い「長周期地震動」による揺れが到達していたのではないかとしています。
 その上で、今後もマグニチュード6クラスなど比較的規模の大きな地震が起きるおそれがあるとして、引き続き地震活動に十分注意してほしいと呼びかけています。
 酒井教授は「今回の地震によって建物や地盤はかなりダメージを受けている可能性がある。今後の地震でさらに被害が拡大するおそれがあるので、なるべく危険な場所からは離れてほしい」と話しています。

 【気象庁】熊本地震と同タイプ 能登半島地震と同規模

 気象庁によりますとミャンマーで発生した大地震は、地盤が水平方向にずれ動いたことで起きたということです。
 「横ずれ断層」と呼ばれ、2016年の熊本地震もこのタイプの地震でした。
 地震の規模は2024年1月の能登半島地震と同じ程度で、ミャンマーから中国にかけては、過去にもマグニチュード7クラスの地震が起きているということです。
 また、震源から離れたタイの首都・バンコクで大きな揺れがあったことについて「長周期地震動」の可能性があるとしています。
 「長周期地震動」は大きな地震の際に発生し、震源から離れても揺れが衰えにくいのが特徴で、2011年の東日本大震災では、震源から遠く離れた東京や大阪でも超高層ビルが大きく揺れました。
 マグニチュード7.7の地震のおよそ10分後には、その周辺でマグニチュード6.4の地震が発生していて、気象庁大規模地震調査室の武田清史室長は「ミャンマーのなかでも規模の大きい都市の近くで地震が起きていて、現地では今後の地震活動に注意してほしい」と呼びかけています。

 【外務省】日本人のけが 情報なし

 今回の地震による詳しい被害の状況は明らかになっていませんが、外務省の海外邦人安全課は「日本時間のきょう午後8時すぎの時点で日本人がけがをしたという情報は入っていない」と話しています。

 ミャンマー・タイの日系企業は

 外務省によりますと、2023年10月の時点でミャンマーには日系企業の支店や現地法人などの拠点が434あるということです。
 また、ミャンマー在住の日本人は2024年10月時点で2161人だとしています。
 経済産業省によりますと、ミャンマーに進出した日系企業には自動車や食品などのメーカー、それに小売業などが含まれているということです。
 一方、外務省によりますと、タイにある日系企業の支店や現地法人などの拠点は2023年10月の時点で5856、現地在住の日本人は2024年10月の時点で7万421人だということです。
 経済産業省によりますと、タイに進出している日系企業は自動車関連が多いとしています。
 今回の地震を受けて日本の自動車メーカーの工場では従業員の避難を優先させるため操業を停止したところもあるということです。
 日本政府は現地の大使館などを通じて状況の確認を進めています。

 日本企業の動き

 ミャンマーを震源とする地震で、現地で事業を展開する日本企業は従業員の安否の確認などを進めています。

 【ミャンマー】

 このうち、流通大手のイオンは、現地企業との合弁でミャンマー国内でスーパーを9店舗運営していて、地震による被害は確認されなかったということです。
 ただ、一部の店舗では、商品の片付けなどのため、営業を休止しているということです。
 また、大手食品メーカーの味の素は、現地に調味料などの工場があり、現在、従業員の安否の確認を進めています。
 このほか、ヤクルト本社は、最大都市のヤンゴン近郊に工場があり、現在は一時的に事業を休止していますが、現地の会社に出向している日本人社員2人の無事は確認できたということです。
 スズキはヤンゴン近郊にある工場で人的被害は確認されていないということです。
 また、製紙メーカーの王子ホールディングスは、ヤンゴンに子会社の段ボールの製造拠点がありますが、従業員や機械設備に被害はなく、通常どおり操業しているということです。
 大手商社の三井物産や三菱商事、丸紅、それに住友商事は、ヤンゴン周辺で火力発電所や工業団地の開発や運営などを行っていますが、現地の従業員の安否は確認できたということです。
 一方で、事業への影響については現在、確認中だとしています。

 【タイ】

 この地震では隣国のタイでも揺れがありました。
 この地震の影響でトヨタ自動車はタイの一部の工場をいったん停止したほか、日産自動車もタイのバンコク近郊にある2つの自動車工場での生産をいったん停止し、建物に被害がないかを確認しているということです。
 自動車産業が集積しているタイには、トヨタ自動車やホンダ、いすゞ自動車、三菱自動車工業などが生産拠点を設けていて、各社は地震の影響を確認しています。
 このほか、キヤノンはタイに生産拠点が3か所ありますが、目立った被害の報告はなく、社員も無事が確認されているということです。
 東芝もタイにグループ会社の半導体の工場などがありますが、人的な被害は確認されていないとしています。
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