[2025_03_25_10]ペロブスカイト太陽電池…“競争力”獲得へ政府支援さらに(ニュースイッチ2025年3月25日)
 
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ペロブスカイト太陽電池…“競争力”獲得へ政府支援さらに

 10:10
 日刊工業新聞の社説
 日本発の「ペロブスカイト太陽電池」が2025年度中に事業化される。経済産業省を中心に政府全体で開発から量産まで支援してきた。ここまでの政府の後押しを評価したい。日本メーカーが国際競争力を獲得し、再生可能エネルギーを主力電源化するためにも、政府には引き続き強い支援を求めたい。
 “次世代太陽電池”と呼ばれるペロブスカイト太陽電池の最大の強みは軽さだ。重量は、現在の主流であるシリコン系太陽電池の10分の1程度。重さから設置を諦めていた建物の屋根や壁面にも取り付けられる。
 薄さも武器となる。フィルム形状に加工すると“曲がる太陽電池”になる。福岡ドーム(みずほPayPayドーム福岡)の円形屋根にも搭載予定だ。ペロブスカイト太陽電池の特徴を生かすと、太陽光発電の用途を飛躍的に拡大できる。
 政府はこれまで事業化を強力に支援してきた。積水化学工業は先陣を切って、25年度中にペロブスカイト太陽電池を事業化する。総額3145億円を投じて生産設備を整える計画で、その半分を政府の補助金で賄う。
 初期需要の創出も政府が担う。政府は2月、各府省庁の建物にペロブスカイト太陽電池を率先導入する方針を決めた。さらに40年に家庭使用電力の1割程度に相当する2000万キロワット規模の導入目標を設定した。
 ただ、量産計画を正式発表したのは積水化学だけ。開発を公表している他社も続くように、政府には継続的な支援が求められる。日本メーカーの競争力向上も課題になる。かつて世界首位だった国内太陽電池メーカーは、中国勢との価格競争に敗れて撤退した。太陽光発電協会によると、国内に流通する太陽光パネルのうち国産は5%だ。
 中国からの太陽光パネルの供給が途絶えると、日本は温室効果ガス(GHG)削減目標の達成が難しくなる。化石燃料への依存が続くため、エネルギー安全保障も揺らぐ。撤退した過去と同じ轍(てつ)を踏まないよう、日本発の太陽電池では政府支援と官民連携を一段と強め、新たな成長軌道を描いてほしい。
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