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[2025_03_15_03]原発から離れるために原発に近づく 日本一細長い半島、避難の難しさ(毎日新聞2025年3月15日) | ![]() |
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参照元
07:15 四国唯一の原子力発電所を抱える愛媛県。伊方原発のそばではどんな課題があるのか。稼働する3号機が運用開始から30年を超えたいま、改めて考える。 四国電力伊方原発が立地する愛媛県の佐田岬半島は全長約40キロ、最小幅約0・8キロで「日本一細長い半島」とも言われる。2024年1月の能登半島地震では道路寸断による集落の孤立が多発し、半島災害での避難の難しさが浮き彫りになった。佐田岬半島の主要道路は、半島の大部分を占める伊方町を背骨のように貫く国道197号のみ。災害時の避難路としても想定されている。地震とそれに伴う原発事故など複合災害が起きた場合、住民は安全に避難できるのか。 2011年3月の東京電力福島第1原発事故は地震後の津波によって引き起こされた。自然災害に伴って原発事故が起きる複合災害時、自治体がつくる避難計画は住民の命を守るために重要だ。 避難計画の不備を理由に水戸地裁が21年、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の運転差し止めを命じた例もある。地震によって住宅が損壊した場合の屋内退避について具体的な記載がないことや、道路寸断時を想定した複数の避難経路が設定されていないことなどが指摘された。 伊方町ではどうか。四国西部から九州方面にのび、東西に長い佐田岬半島。半島を陸路で出るなら東へ向かうしかない。町の避難行動計画は、原発から5〜30キロ圏のうち西側の住民については事故時、放射性物質の放出まで時間的猶予はあるが道路寸断や港湾などが使用できない場合と、放出リスクが高まった場合は、一時屋内退避をすると定めている。町は防災センターや学校などの47施設を屋内退避施設として確保しているが、住宅損壊時の対応については具体的な記載はない。 同町の住宅耐震化率は37・7%だった13年度から約12年、更新されていない。人員の不足もあり、実態を把握できていない状況が続く。町建設課によると、旧耐震基準で建てられた木造住宅の耐震診断や改修工事などの費用を11年度から補助している。補助制度について繰り返し広報して利用を呼びかけているが、「この家は自分たちの代まで」と話す高齢者もいて耐震化は進んでいないという。地震で自宅が損壊し、屋内退避ができない場合も十分考えられる。同課の担当者は「町民の耐震への意識を上げていきたい」と語る。 陸路避難にも課題がある。避難路はほぼ197号に限られ、西から東への一方向しかない。伊方原発は半島付け根に近いため「原発から西側の住民が陸路で避難する場合、一度、原発の目の前を通らなければならない」と町の担当者。原発から離れるために原発に近づかなくてはならないという矛盾がある。町によると、人口7931人(24年4月現在)のうち約半数が原発より西側に住む。 町内の自営業の50代男性は「197号にはトンネルや橋が多い。一つでも崩れてしまえば陸路避難はできなくなる」と不安を語る。 197号を管理する愛媛県によると、町の西部にある三崎地区まで平たんではない尾根近くを通るため、町内の約31キロの区間にトンネルが18本、橋は40本ある。町内に点在する55の集落から197号につながる道は狭く、カーブも多い。 さらに、町内には土砂災害警戒区域が475カ所、特別警戒区域が345カ所ある。トンネルや橋、道路が崩れたり、塞がれたりすれば孤立が発生する可能性は高いと町の担当者は指摘する。 海路・空路も「あらゆる手段使う」 南海トラフ巨大地震や、県内を東西に走る中央構造線断層帯で発生する地震などが想定される中、町や県は選択肢を増やすことで確実な避難につなげる計画を示す。 県は毎年、地震による原発事故を想定した避難訓練を実施。最新の知見に基づき、訓練の内容や避難方法の見直しを行っている。24年10月の訓練では、能登半島地震で集落の孤立が多発したことを受け、大きな船舶よりも小回りの利くゴムボートでの避難を新たに取り入れた。また、地盤の液状化に伴うマンホールの隆起により車両通行が妨げられる事態への対応も初めて行われた。 8000人近い町民が一度に速やかに移動することを考えると自家用車などでの陸路避難が最初の選択肢になる。しかし、道路の寸断や放射性物質の放出により陸路が使えない時は船やヘリコプターなどを用いた海路・空路避難が想定されている。町内にヘリが離着陸できる場所は41カ所ある。55集落の多くに設けられ、新たに2カ所で整備中だ。町の担当者は「理想は1集落に1カ所だが、離着陸場にできる空き地などがなく難しいところもある」と話す。一方で「適地があれば順次増やしていきたい」との考えを示した。 大雨や台風、降雪など当日の天候次第では海路や空路での避難もできない可能性がある。町担当者は「状況を判断してあらゆる手段を使って避難する」と覚悟を語った。【山中宏之】 |
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