[2025_03_15_01]「福島原発の近く、放射線やはり不安」常磐線運転士の「被ばく線量」大丈夫? 自主測定の結果とJRの消極対応(東京新聞2025年3月15日)
 
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「福島原発の近く、放射線やはり不安」常磐線運転士の「被ばく線量」大丈夫? 自主測定の結果とJRの消極対応

 12:00
 東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)付近を走るJR常磐線の運転士や車掌について、JR東日本が十分な被ばく管理をしていないことが分かった。労働組合の自主測定では、年間の被ばく線量は国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告する上限には達していないものの、運転士らからは不安の声が上がる。だがJR東日本は、労働組合が求める低線量の被ばく管理には消極的だ。(宮尾幹成)

 大野駅に到着する常磐線の特急列車「ひたち」=3月9日午後、福島県大熊町で(宮尾幹成撮影)

 ◆JRが用意した機器は100μSv未満を測定できず「意味がない」

 2025年3月14日。福島第1原発事故後、9年間にわたり不通となっていた常磐線の富岡(富岡町)〜浪江(浪江町)間は、2020年3月14日の再開から5年が過ぎた。線路や駅周辺の避難指示は解除されたが、沿線には放射性物質による汚染で人が住めない「帰還困難区域」が多く残されている。
 JR東日本が富岡〜浪江間に設置する空間線量計は、現在も毎時1μSv(マイクロシーベルト)前後を示す。東京都内の空間線量が毎時0.03〜0.04μSv程度で推移しているのに比べれば、依然として高い数値だ。
 JR東日本やJR東日本輸送サービス労働組合への取材によると、JR東日本は社内文書で、原発近くの屋外で設備点検や修繕工事に当たる作業員の年間の追加被ばくを1mSv(ミリシーベルト)=1000μSv以下とする目標を掲げている。原発作業員や放射線技師などを除く一般公衆の被ばくを年1mSv以下に抑えるとするICRP勧告に基づくものだが、この区間を通過する運転士や車掌は対象外だ。
 JR東日本は運転士や車掌にも、ガラスバッジと呼ばれる積算線量計を携行させている。だがこれは、原発作業員などが使う、比較的高い線量を測るタイプ。100μSv未満の低線量は測定できないため、運転士らは「いつもND(検出限界未満)としか表示されず、意味がない」とこぼす。
 [交通機関の乗務員では、航空機のパイロットや客室乗務員は宇宙からの放射線による被ばくが避けられないことから、国は各航空会社に年間の追加被ばく限度を5mSv以下とするよう求めている。一方、鉄道の乗務員については、こうした対応は行われていない]

 ◆倒竹やイノシシとの衝突で停車することも

 輸送サービス労組は2020年6月〜2023年6月の約3年間、運転士と車掌の有志による自主的な線量測定を実施。1μSv以上を検知する線量計「Dーシャトル」を非番の日も含め装着してもらい、1カ月ごとの積算線量を集計した。
 例えば、2023年6月3日午後から翌4日朝にかけて、富岡〜浪江間の往復を含む乗務があった運転士が浴びた線量は計1.77μSv。この運転士の6月の積算線量は53.35μSvだった。
 測定に協力した全員の月平均は、運転士が55.65μSv、車掌が48.25μSvで、単純に掛け算すれば年600μSv前後となる。正常に運行している限り、年1mSvを上回ることはなさそうだ。ただ、区間内で列車のトラブルなどで停止すれば、積算線量は上乗せされることになる。
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