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[2025_03_06_06]世界最悪レベルの原発事故なのに…その責任は一切問わず 東京電力の旧経営陣、無罪確定へ 最高裁が上告棄却(東京新聞2025年3月6日) | ![]() |
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19:41 東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣2人の上告審で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は、巨大津波は予見できなかったとして、検察官役の指定弁護士側の上告を退ける決定をした。5日付。2人を無罪とした一、二審判決が確定する。岡村、草野耕一、尾島明の3裁判官全員一致の意見。 ◆争点は「予見できたかどうか」 被告は原子力部門のトップだった武黒一郎元副社長(78)と、事故対策の実質的な責任者だった武藤栄元副社長(74)。2人とともに強制起訴され、昨年10月に84歳で死去した勝俣恒久元会長は公訴棄却となり、裁判が打ち切られた。 争点は、旧経営陣が巨大津波を予見でき、対策することで事故を回避できたかどうか。東電内部では2008年、最大15.7メートルの津波が来ると試算しており、その根拠となった政府の地震予測「長期評価」(02年公表)の科学的な信頼性が争われた。 ◆一、二審判決は「相当」 第2小法廷は、長期評価について「一般に受け入れられるような積極的な裏付けが示されていたわけではなく、防災対策にかかわる地方公共団体なども全面的には取り入れていなかった」と指摘。「10メートルを超える津波が襲来する現実的な可能性を認識させる情報だったとまでは認められない」と信頼性を否定した。その上で「業務上過失致死傷罪の成立に必要な予見可能性があったと認定することはできない」と結論づけた。 対策すれば事故を避けられたかについては、原発の運転を停止するしかなく、そこまでの注意義務はなかったとした一、二審判決を「相当」とした。 ◆「国に報告する義務あった」補足意見も 草野裁判官は補足意見で、東電が巨大津波の試算を把握した08年当時、速やかに国に報告する義務があったと指摘。報告があれば国が原発の運転停止を命じ、事故を避けられた可能性があったとした。一方で、一、二審判決に不合理な点はないと多数意見に賛成した。 また、第2小法廷に所属する三浦守裁判官は審理に加わらなかった。検察官時代にこの事件処理に関わっていたためとみられる。三浦裁判官は22年6月の避難者による集団訴訟の判決で、国の賠償責任を認める反対意見を付けていた。 起訴状によると、勝俣元会長を含む旧経営陣3人は、原発の敷地の高さ(海抜10メートル)を上回る津波を予測できたのに対策を怠り、避難を余儀なくされた双葉病院(福島県大熊町)の入院患者ら44人を死亡させたなどとされていた。(三宅千智) ◇ ◆「旧経営陣が取るべき対策はなかったのか」検討なし 強制起訴された東京電力旧経営陣を無罪とした最高裁決定は、「巨大津波は予見できなかった」のひと言で、世界最悪レベルの事故を起こした旧経営陣に対して、誰も刑事責任は負わせないとの結論を出した。 13ページの決定文は大半が一、二審判決の要約と補足意見で、第2小法廷としての決定理由は約1ページ分だけ。事故回避には原発の運転を止めるしかなかったとの各判決を踏襲し、旧経営陣がほかに取るべき対策はなかったのかは検討せず、事故に向き合うことを放棄した。 福島第1原発事故の取材を通して感じることは、自然の脅威に対し、事故対策が万全と言えることは決してないということだ。ひとたび事故が起きると多くの国民の命や生活を脅かす原発の危険性を考えれば、巨大津波の可能性を認識しながらも、対策を放置した東電には今後も原発を運転する資格はない。 ◆事故から14年、2万人が福島県外に避難したまま 政府は2月に閣議決定したエネルギー基本計画の改訂版で、事故以降に明記し続けてきた「可能な限り原発依存度を低減する」との表現を削除し、原発の積極活用を加速させようとしている。 事故から14年がたとうとする中、今も福島県には人が住めない地域が残り、約2万人が県外への避難を余儀なくされている。原発事故に対し、司法による責任追及や被害者救済には限界がある現実が突きつけられた。それでもなお、原発を使い続けるのか。立ち止まって考えるべきだ。(小野沢健太) 東京電力旧経営陣の刑事裁判 東京電力福島第1原発事故を巡り、福島県民らが2012年6月、東電元幹部らを告訴・告発。東京地検は不起訴としたが、検察審査会は勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の3人を2度にわたり「起訴すべきだ」と議決。検察官役の指定弁護士が2016年2月、業務上過失致死傷罪で強制起訴した。2019年9月の一審東京地裁判決は無罪(求刑禁錮5年)を言い渡し、2023年1月の二審東京高裁判決は指定弁護士側の控訴を棄却した。 |
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