[2024_05_01_04][誰のための原発か]能登の警告編<1>―断層<上>想定超えた広範囲で「連動」か、激震に津波…複合災害は「どこでも起き得る」 東京電力柏崎刈羽原発の新潟から問う(新潟日報2024年5月1日)
 
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[誰のための原発か]能登の警告編<1>―断層<上>想定超えた広範囲で「連動」か、激震に津波…複合災害は「どこでも起き得る」 東京電力柏崎刈羽原発の新潟から問う

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 能登半島地震は、原発の防災対策への疑問を改めて突きつけた。原発の安全性議論の土台となる地震研究は、どこまで深まっているのか。原発の設備や、事故時の住民避難の態勢は十分なのか。長期企画「誰のための原発か 新潟から問う」の今シリーズでは、自然の脅威が浮き彫りにした課題を検証する。(7回続きの1)=敬称略=

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 つぶれた多数の家屋が無残な姿をさらし、道路には瓦や割れたガラスが散乱していた。2024年1月1日に発生した能登半島地震から約1カ月後の2月上旬、大きな揺れの爪痕が残る石川県輪島市の中心部を、土木学会の調査団が視察した。

 地上7階建てビルが横倒しになり、基礎部分まであらわになった現場で、一行は足を止めた。「非常に衝撃だ」。副会長で調査団の副団長を務めた東北大教授(津波工学)の今村文彦(62)は、建物の地震対策は地盤と一体で考えるべきだと報道陣に語った。
 最大震度7の強い揺れに津波、液状化、土砂崩れ、大規模火災…。珠洲市なども巡った調査後の会見で今村は、地震に伴い想定される種々の災害が複合的に生じたと指摘。「全国どこででも起きる可能性がある。特に地方で対策が必要だ」と険しい表情を見せた。
 能登半島の中央部、石川県志賀町にある北陸電力志賀原発では、1号機原子炉建屋地下で震度5強を記録。変圧器が壊れて外部電源が一部使えず、敷地内に段差が生じた。「全国どこでも」という今村の言葉は、原発の立地地域が抱える懸念と重なる。

 能登半島は多くの専門家が注視するエリアだった。2020年12月以降、地震活動が活発化し、震度5弱〜6強の揺れが繰り返し発生してきたからだ。
 金沢大教授(地震学)の平松良浩(55)は1月1日、帰省先の滋賀県で大きな揺れを感じた。「珠洲の方か」。直感は当たっていた。
 マグニチュード(M)7クラスの地震が起きると警鐘を鳴らし続けてきた。多数の地震が起きてもなお、能登半島沿岸の海底の活断層が動くリスクは残ったままだと気がかりだった。
 政府の地震調査委員会は能登半島地震について、複数の断層が連動した可能性が高く、150キロほどの範囲で活発な地震活動が続いていると分析。連動の範囲は、警告を続けてきた平松にとっても「何かの間違いではないか」と思える長大さだった。どの断層が連動し、どれだけの規模の地震を起こすかは、専門家の間でも議論になっていた。
 地震が起きるとしても、今回より小規模である可能性が高いと踏んでいた平松は、断層の連動を受けて語る。「想定外とまでは言わないが、シナリオとしては可能性が低いと考えていた。そういうものでも発生する時は発生してしまう」

能登の警告編―断層<下> へ続く
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