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[2025_03_12_04]屋内退避 浸透に課題 東通原発30キロ圏住民 「具体情報を」 災害時「交通規制」 県が見直し(東奥日報2025年3月12日) | ![]() |
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参照元
04:00 交差点に立つ警察官が、ドライバーに引き返すよう促す。「自宅での屋内退避をお願いします」 2024年11月、県は東北電力東通原発1号機の事故を想定した訓練で、初めて「交通規制」を試みた。放射性物質が大量に放出される恐れが高まった−として、原発から半径5キロ圏に入る東通村小田野沢地区(約700人)の避難を優先。村中心部の交差点に警察官を配置し、国道338号に合流しようとする車を止め、5キロ圏以外の住民の場合は自宅などへ戻って屋内退避するよう求めた。 県は、5キロ圏住民がむつ市中心部の東側(酪農1号線)を通って青森市方面へ避難する経路に沿い、計4カ所で交通規制を実施する方針。そのうち一つは、むつ市大曲の国道279号と県道を結ぶY字路で、青森市方面に向かう大動脈を事実上、封じることになる。 人口約5万人を抱えるむつ市をはじめ、住民が一斉に車で動くと渋滞を引き起こし、移動中に被ばくの恐れが高まるためだ。県は交通規制が約2時間で済むと試算。一方で規制に拘束力はなく、5キロ圏以外の「自主避難」を強制的に止めることはできない。流入が増えれば「避難にかなりの時間を要する」と懸念する。 2時間たてば、むつ市中心部を含む30キロ圏住民も車移動できるかというと、必ずしもそうではない。原子力規制委員会は能登半島地震を受け、原発事故時に5〜30キロ圏に求める屋内退避の目安を「3日間」とする方向で議論を進める。大量の放射性物質を含むプルーム(雲)の通過時に避難行動を取ると、「吸い込んでしまう可能性が高くなる」(県担当者)という。 退避の解除は、プルームの滞留や新たに到達する恐れがないことなどが条件となる。ただ、原発の状態が安定したとの判断には「数日程度は必要」としている。 屋内退避で県は、最大の課題を対象住民への周知・浸透とみる。東通村も「自然災害と比較すると認知度は高くない」(川上博之原子力対策課長)と認める。 30キロ圏で子育て中の小野彰香さん(37)=むつ市=は、事故時に屋内退避の指示が出て、目安が3日間であることを「知らなかった」と率直に語る。食料の備蓄に心配はないが「冬場に停電が続くなら恐ろしい」。同市の野菜料理研究家・さいとうとまえさん(63)は「(事故時に)どんな指示が出るかを具体的な情報として持っておきたい。周りと話し合うきっかけにもなる」と話した。 東通村の早掛平地区の自主防災会会長・中野義信さん(70)は、地区内は訓練などを通じ、屋内退避の必要性が浸透しているのではないかとみる。一方で県が実施した交通規制訓棟後、周囲から「引き返せと言われてもできない」といった声を聞いたと明かす。 取材に応じた3人とも、「子どもを守りたいーとか事情は人それぞれ」「一刻も早く逃げたいと思う人を責められない」と話した。規制を担う警察側の一人も「バリケードでも張らない限り、強制力はないので突破されたら通すしかない」(むつ署員)とこぼす。 県は取材に対し、5キロ圏住民の避難経路に流入しようとする全ての車に自宅へ戻るよう求める訓練について、見直しを検討すると回答。神正志・原子力安全対.策課長は「避難したい人を完全に止めるのは難しい」とし、5キロ圏の避難状況に応じて、車の流入を認めるかなどを再検討する方針。 「放射性物資を含む空気は見えないから怖い。情報の『見える化』が必要」と中野さん。屋内退避や避難の在り方を考える上で、モニタリングの数値など「住民が見える形で情報を出すことが、安心感をもたらしてパニックを防げるのではないか」。発生から14年の「3・11」を機に、考えを巡らせた。 (佐々木大輔) |
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KEY_WORD:避難計画実効性_:HIGASHI_TOUHOKU_:NOTOHANTO-2024_: | ![]() |
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