[2024_08_02_12]日本海側の海域活断層の長期評価 ―兵庫県北方沖〜新潟県上越地方沖―(令和6年8月版)(地震調査委員会2024年8月2日)
 
参照元
日本海側の海域活断層の長期評価 ―兵庫県北方沖〜新潟県上越地方沖―(令和6年8月版)

 04:00
令 和 6 年 8 月 2 日
地 震 調 査 研 究 推 進 本 部
地 震 調 査 委 員 会

      日本海側の海域活断層の長期評価
  ―兵庫県北方沖〜新潟県上越地方沖―(令和6年8月版)

 地震調査研究推進本部地震調査委員会では、日本海側の海域活断層の長期評価を順次進めており、令和4年3月に日本海南西部(九州地域・中国地域北方沖)の評価を公表した。その後、その東方(近畿地域北方沖以東)の海域活断層の評価を進めている。
 本評価は、近畿地域北方沖以東の海域活断層について、これまでに評価を行った活断層の位置・形状やそこで発生する地震の規模に関する情報等を公表するものである。今後、順次、評価対象海域及び評価項目の両面において、審議の進捗に応じて更新を行う予定である。

 1.評価対象海域

 現時点において評価の対象としている海域は、図1に示す兵庫県北方沖〜新潟県上越地方沖の日本海である。
 なお、鳥取県沖以西の日本海側の海域活断層の評価については、既に公表をしている「日本海南西部の海域活断層の長期評価(第一版)―九州地域・中国地域北方沖―(令和4年3月 25 日公表)」(地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2022)を参照願いたい。

 2.対象とした活断層

 評価対象海域に分布する活断層のうち、その活動が社会的、経済的に大きな影響を与えるおそれのあるマグニチュード(M)7.0 程度以上の地震を発生させる可能性がある、長さ 20km 以上の活断層(活動した場合に、陸域で震度6弱以上の揺れ又は海岸で広く 1 m 程度以上の津波高となる可能性がある活断層)を主な対象として、これまでに行われた調査研究成果等に基づき評価対象海域の活断層の評価を行った。また、長さが 20 km 未満の活断層についても、位置と長さについて評価した。これらの評価の対象とした活断層の分布を図2に示した。
 なお、陸域の活断層の海域延長部については、「主要活断層帯の長期評価」や「活断層の地域評価」の中で評価を行っている。そのため、近畿地域や中部地域の陸域の活断層の海域延長部は、今回評価を行っていない。

 3.評価方針

 本評価では、主に反射法地震探査による反射断面データを用いて活断層の評価を実施した。

(1)海域活断層の評価に使用した反射断面
活断層の評価に用いた反射断面は以下のとおりである。なお、以下に記載する機関の名称
は、調査の時期にかかわらず、現在の名称で記載している。

@国立研究開発法人産業技術総合研究所による、エアガンを音源とするシングルチャンネル反射法地震探査(図3−1)及びブーマーを音源とするマルチチャンネル反射法音波探査(図3−2)
 ・ エアガンを音源とする地震探査は海岸からおおよそ 100−150 km 程度の範囲で、3−6 km 程度の間隔の格子状の測線に沿って実施。
 ・ ブーマーを音源とする音波探査は、能登半島北岸からおおよそ 10−30 km 程度の範囲で、2 km 程度の間隔の測線に沿って実施。
A「日本海地震・津波調査プロジェクト」(文部科学省研究開発局・東京大学地震研究所, 2021)によって実施された、マルチチャンネル反射法地震探査(図3−1)
 ・ 断層深部の構造解明を目的として実施されたもの。
B独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構による、大容量エアガンを音源とするマルチチャンネル反射法地震探査
 ・ 資源探査を目的として実施されたもの。
C「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究プロジェクト」(文部科学省研究開発局・防災科学技術研究所, 2013)によって実施された、マルチチャンネル反射法地震探査
・ 海域地殻構造探査を目的として実施されたもの。

 なお、海域活断層の分布は主に産業技術総合研究所の地震探査に基づいているが、水深の浅い沿岸域には幅 3−8 km 程度の調査測線の不足領域 (*1)があり(図2−1)、その中では断層の有無を確認できていない。
 また、「海域における断層情報総合評価プロジェクト」(文部科学省研究開発局・海洋研究開発機構, 2020)では、@〜C等の調査によって得られた反射断面などの断層情報を含むデータを収集・整理し、断層やその活動に伴う地震動・津波の評価のための基礎資料の整備をしている。なお、同プロジェクトでは、断層の活動性についての評価は行っていない。

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(*1) 調査測線に粗密があり、厳格に境界を決めることはできないため、図2−1では浅部沿岸の評価用データ不足範囲として、おおよその範囲を黄色で示した。
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(2)海域活断層の認定

 (1)に記した反射断面や一部の海域で得られている詳細な海底地形データ等を用いて海域活断層を認定した。図4に海域活断層の認定に使用した反射断面の例を、図5に図4の反射断面の位置をそれぞれ示す。原則として、海底直下の鮮新世以降の地層に 5−10 m 以上の上下変位を与える断層構造又は 撓曲(とうきょく)が複数の測線に連続して認められる場合に活断層と認定した。褶曲(しゅうきょく)した中新世の地層が海底に露出する場合には、地層に断層が認められても活断層とは認定していない。ただし、探査システムの仕様の差異などによって反射断面の分解能や探査深度が異なるため、評価対象海域全体を同一の判断基準で認定できているわけではない。また、日本海地震・津波調査プロジェクト及び海域における断層情報総合評価プロジェクトで活断層又は断層とされた一部については、反射断面で確認できる変位の連続性が乏しいなどの理由で、活断層ではないと判断したものもある。
 断層の深部構造については、マルチチャンネル反射法地震探査による反射断面だけでなく、既存の断層モデルや、浅部における反射断面から推定した断層面の形状及びその周辺の地層の傾動や背斜構造を考慮して推定した。

 4.評価項目及び評価結果

 表1、表2に評価結果を示す。また、活断層の位置を図2に、表1に示した断層の矩形断層モデルを図6に示している。
 なお、今回評価対象とした項目は、活断層の位置の情報、活動した場合の地震の規模等、
表1、表2の白背景の項目のみである。背景がグレーになっている地震の発生確率等や、表に示していない平均変位速度、平均活動間隔等については現時点では評価を行っていない。 評価手法の詳細については、後述の「(詳細解説)」を参照のこと。

 このほか、評価対象海域の浅い場所(概ね深さ 25 km 以浅)で発生した主な地震活動及び被害地震について、史料及び地震観測結果に基づき整理を行った。その各地震活動又は被害地震の概要を表3に、震央位置を図7に示す。また、近年の被害地震である平成 19 年(2007年)能登半島地震(M6.9)及び令和6年(2024 年)1月1日に発生した能登半島地震 (*2)(M7.6)、並びにそれらの地震後 24 時間に周辺で発生した地震の震央分布を図8に示す。
 なお、史料は地域や時代によって残存する量の多寡が異なり、ある期間に地震の発生がないように見えても、それはその期間の史料がないことによる見かけ上のものである可能性もあり、地震発生がなかったことを必ずしも示しているわけではない。特に海域を震源とする地震については、顕著な被害を伴う強震動又は津波を伴わなかった場合、史料に記録が残らない可能性があるため、留意が必要である。

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(*2)気象庁では、令和6年(2024 年)1月1日に発生した M7.6 の地震を含む、令和2年(2020 年)12 月から石川県能登地方で継続している地震活動のことを「令和6年能登半島地震」と命名しているが、本評価文の中では、便宜上、令和6年(2024 年)1月1日に発生した M7.6 の地震のことを「能登半島地震」と呼ぶこととする。
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 5.今後について

 今後、評価対象海域の拡大、未評価の項目の評価等を行い、日本海側の海域活断層の長期評価について、順次公表を行っていく予定である。

(後略)
KEY_WORD:能登2024-海域活断層の評価が後回し_:NOTOHANTO-2024_: