[2026_01_08_07]中部企業に波紋広がる 募る不信、競争力に足かせか(中部経済新聞2026年1月8日)
 
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中部企業に波紋広がる 募る不信、競争力に足かせか

 04:00
 中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)での原子力規制委員会による審査で不適切な地震評価を行っていた問題が、中部地方の企業に波紋を広げている。浜岡原発の再稼働が遠のけば産業界にとって高い電気料金などが足かせになり、地域の競争力にも影響を及ぼす懸念がある。

 揺らぐ信頼

 「一番信頼している会社が揺らぐと困る」―。岐阜県の自動車部品メーカーの社長は憤る。
 尾張地区の製造業経営者は「そもそも原子力関連の事案は『聖域』とされ、何か問題があってもすぐに表に出てこなかった。昨年11月に浜岡原発工事の契約不祥事が判明して『また次も何かあるのでは』と思っていた。今後も何か問題が出てくるのではないか」と不信感を募らせる。
 浜岡がある静岡県でも失望する声が相次ぐ。静岡県の鈴木康友知事は7日、県庁で記者団の取材に応じ「信頼を失わせる大変遺憾な出来事」と批判した。原子力規制委の審査停止の方針に関しては「新規制基準の審査の前提が崩れた。推移を見守りたい」と述べた。
 中電は中部経済界のリーダー的な存在だ。今年設立75年を迎え、エネルギー供給を通じて自動車など地元産業を支えている。加えて、地元財界も率いており、企業の間では動揺や疑念が広がっている様子だ。

 早期再稼働は困難

 さらに各社が懸念するのは、浜岡の早期再稼働が困難になることだ。浜岡での原子力規制委の審査は約12年と長引いていた。地震や津波などに関する審査に続き、直近までプラント審査も始まっていたが、問題を受けて昨年12月には審査自体が停止。現時点で審査自体の行方は見通せていない。
 愛知県の自動車部品メーカーの社長は「浜岡の再稼働はさらに遠のく可能性がある」と懸念する。
 中電は、原発の再稼働で出遅れており電気料金に跳ね返っている。他電力に比べて中電管内の電気料金の水準は高く、中電の2月分の平均的な家庭向け電気料金が7110円。複数の原発を稼働している関西電力(6621円)や九州電力(6341円)に比べて差が生じている。
 愛知県の自動車部品会社の幹部は「コストのうち電気使用量が結構占める。今回の問題で原発再稼働がさらに延びるのか心配だ」と表情を曇らせる。
 別の企業の社長は「日本の電気料金全体でみても高い。中国に比べると1・5倍もする。電気料金が高いままでは国際競争力に影響する」と指摘する。
 外食大手の幹部は「原材料などさまざまなコストが上昇するが、物価高で消費者の節約志向が強まり、コスト上昇分をメニュー価格に転嫁しづらくなっている。中電不祥事の問題は先が見えないが、電気料金の値上げに及ぶようだと困る」と話す。

 真摯に対応

 中電は7日、原子力規制委の定例会見を受け「地域の皆さまをはじめとするステークホルダー(利害関係者)の皆さまからの当社原子力事業に対する信頼を失墜させた。同事業の根幹を揺るがしかねない重大な事案であると極めて深刻に受け止めている。浜岡原子力発電所を運営する原子力事業者としての適格性をも疑われるものであり、審査対応を行っていただいている原子力規制委員会に対しても大変申し訳なく考えている。今後、原子力規制委員会のご指示・ご指導に真摯(しんし)に対応してまいります。このような事案を発生させたことについて心より深くお詫(わ)び申しあげます」とコメントを出した。
(勝又佑記、近藤直樹、岩〓(崎)幸一、鈴木隆宏)
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