[2025_12_15_08]巻原発計画で住民投票実施の旧巻町、元町長笹口孝明さん「判断を仰ぐ先は県民だ」 県議会に信を問う花角知事の選択を批判(新潟日報2025年12月15日)
 
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巻原発計画で住民投票実施の旧巻町、元町長笹口孝明さん「判断を仰ぐ先は県民だ」 県議会に信を問う花角知事の選択を批判

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 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働「容認」の意向を表明した花角英世知事は、自身の判断について「信を問う」先に県議会を選んだ。かつて東北電力巻原発計画の是非を問う住民投票を行った旧巻町(新潟市西蒲区)の元町長笹口孝明さん(77)は、知事の選択を批判し、「判断を仰ぐ先は県議会ではなく県民であるべきだ」と語った。(論説編集委員・原 崇)

 −知事が自身の信任、不信任を県議会に問うとした手法をどう考えますか。
 「知事の『信を問う』としてきたこれまでの言葉を額面通りに受け止めれば、県内有権者に何らかの形で問うことだと考えるのが自然だろう。ところが、いよいよという段階で問う先が県議会になっていた」
 「県議会は(与党として知事を支える)自民党の県議が過半数を占める。そもそもどれだけの県議が県議選出馬時に、柏崎刈羽原発の再稼働の是非や原発エネルギー政策の将来像について明確に自身の考えを訴えていたのか」
 「自民県連の幹部が県議会で、一般県民は原発に関する知見があまりないから判断を任せることを控えるべきだという趣旨の発言をしていた。だが、どれだけの数の県議が、原発に関して一般県民より詳しいと言えるほどの知見を持っているのか。極めて疑わしい。上から目線であり、県民をばかにしている」
 −かつて巻原発計画については、住民投票が行われる前の1977年に建設推進派が多数を占める旧巻町議会が原発誘致決議をし、80年には当時の町長が建設同意表明をしていました。
 「原発は稼働中だけではなく、核のごみの処分を含め未来にわたる問題だ。時の議会や時の首長だけで未来への責任をとれるのか。実際には無理だし、責任の所在もうやむやになる」
 「だからこそ県民一人一人にどうすべきかを問うべきだと思う。問われた県民は、子や孫ら将来世代に責任を持つことになり、改めて真剣に考えた上で、結論を導き出すことになる」

 −花角知事が再稼働を巡る判断材料の一つにしたとする「県民意向調査」。どう受け止めましたか。
 「『再稼働ありき』の調査だったといわれても仕方がないのではないか。(県当局が公表した)分析内容も、再稼働という前提に都合良く当てはめたような印象だ」

 −新潟市の中原八一市長が県議会で県民意思を確認するよう知事に要望しました。その際、理由として出直し選挙に触れ「原発だけが争点の選挙は県民の分断を招き、県政が混乱する」と語りました。また、旧巻町の住民投票を挙げ「町の中で対立、混乱があり、今なおしこりが残っている」とも述べました。

 「住民投票をしたら地域に分断を招くというが、巻の場合、仮に住民投票をしていなかったら今ごろは原発は着工され、稼働していた。だが東電福島第1原発事故以降、かつての反対派のみならず推進派だった巻住民も『巻に原発ができなくて本当によかった』と語るようになった。中原氏が、巻原発の歴史的な経緯や事実関係をよく分からぬまま、巻のことを引き合いに出して語るのは、住民に対して大変失礼なことだと思う」
 「住民は弱い存在で『国策』に表立っては反対しづらい。だからこそ直接県民に本音を聞く姿勢が重要だと思う。首長と議会だけで物事を進めてしまえば、県全体の将来にしこりを残すことになるのではないか」

 ◎笹口孝明(ささぐち・たかあき)1948年旧巻町(現新潟市西蒲区)生まれ。明治大卒。地元で酒造会社を営む中、94年に町民有志で「巻原発住民投票を実行する会」を設立し、初代代表となった。96年、巻町長に就任。同年8月に町条例に基づく東北電力巻原発計画の是非を問う住民投票を行った。
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