[2025_10_31_07]米韓首脳会談による原子力潜水艦計画公表に抗議する 韓国の原潜建造計画は北東アジアを深刻な危機に陥れる 朝鮮半島の核開発を止めるために日本も共に原潜計画を放棄せよ 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2025年10月31日)
 
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米韓首脳会談による原子力潜水艦計画公表に抗議する 韓国の原潜建造計画は北東アジアを深刻な危機に陥れる 朝鮮半島の核開発を止めるために日本も共に原潜計画を放棄せよ 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

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 韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領がトランプ米大統領に対し原子力潜水艦(原潜)の燃料供給を要請したと報じられている。
 (毎日新聞10月29日付)
 (トランプ米大統領と韓国の李在明大統領は29日、韓国南東部・慶州で会談した。李氏は核兵器開発を高度化させる北朝鮮の動向を念頭に、韓国が原子力潜水艦を独自に開発するために核燃料の保有を認めるよう米国側に求めた。)

 この事実は、北東アジアの平和と安定を根底から揺るがす危険な一歩であり、断固として反対する。
 この計画は、単なる防衛力の強化にとどまらず、地域の核軍拡競争を不可逆的に激化させ、核戦争への道を開きかねない極めて無責任な行動である。

 1.具体的事実関係と過去の経緯

 李大統領が米大統領に原潜用燃料の供給を求めたことは、韓国独自の原潜建造計画が存在し、その原子炉と燃料が米国から供与されることを前提としていることを意味する。
 米国の強い関与と特別の許可がなければ、そもそも建造・運用は不可能であり、米韓原子力協定の下で軍事利用可能な核燃料の供給を実施することを意味する。これは日本にとっても無関係ではない。
 過去、韓国の原潜開発の試みは、盧武鉉政権下の2003年に極秘に進められた「362事業団」まで遡る(ニューズウィーク2017年)。
 この計画は、国際的な疑惑により解体された経緯があり、国内だけでなく国際的な核の透明性に対する懸念を生じさせてきた。
 その後も、次期潜水艦が原潜ではないかとの報道(中央日報2021年)があるなど、韓国は政権が変わっても原潜建造への強い意志と計画を継続している。
 第一次トランプ政権に対して文在寅大統領が同様の要請を行ったが、事実上拒否されている経緯がある(中央日報2017年)。
 それにもかかわらず、再び原潜という「核のフタ」を開けようとする行為は、国際的な核廃絶運動に対する破壊的な行為にほかならない。

 2.日韓・米朝関係、そして北東アジアの軍事拡大

 韓国政府は、原潜が北朝鮮の弾道ミサイル搭載潜水艦(SLBM)への対抗策であり、日本海での防衛任務を担うことで米軍の負担軽減につながると主張している。
 しかし、これは極めて短絡的で危険な、軍事合理性をも超える地域の戦略的バランスの破壊を意味する。

 一方で確実に、米朝関係の緊張激化を引き起こすだろう。
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核・ミサイル開発が継続する中、韓国の原潜保有は、北朝鮮にとって「対話」の拒絶とみなし、「核抑止力」をさらに強化するための決定的な口実となる。
 結果として、朝鮮半島における軍事的緊張レベルは過去最高に引き上げられる。核実験も再開され、この狭い地域に戦術核弾頭を大量配備する事態も想定される。これに対抗する米側も、核弾頭搭載型ミサイル原潜を近海に配備するなど、エスカレーションする危険性が高まる。

 その後に続くのは、連鎖的な軍拡競争の波である。
 韓国の原潜保有は、中国、ロシア、そして日本を含む周辺国に対し、対潜水艦戦(ASW)能力の急速な強化、あるいは戦略兵器のさらなる導入という連鎖的な軍拡競争を誘発する。
 北東アジア全域が、「疑心暗鬼」と「相互確証破壊」の瀬戸際に立たされることになる。

 日韓関係の悪化も起きる。
 日本海に原潜の活動領域が広がった場合、安全保障上の透明性を巡り、日韓間の深刻な不信感と軍事的な摩擦は避けられない。
 過去に竹島をめぐり自衛隊機へのレーダー照射事件をきっかけに日韓関係が悪化したこともあり、歴史問題がからめばさらに冷え込む両国関係に、加えて原潜配備となれば、軍事的な火種を投下する行為であり、地域の経済的かつ安全保障的連携を根本から崩壊させる。

 3.被ばく、海洋汚染、そして核戦争への道という絶対的な危険

 原潜の建造と運用は、技術的な側面を超えた、人類と環境に対する深刻な脅威を内包している。
 被ばく・海洋汚染リスクは、軍事衝突がなくても避けられない。

 艦艇用原子炉の運用に伴い必然的に発生する、運転時の放射性廃棄物の蓄積と海洋投棄、そして事故による潜水艦の破壊に伴う膨大な放射性物質の拡散は、日本海や東シナ海などの狭い閉鎖海域で起きれば、半永久的な環境リスクを生む。
 北東アジア全域の海洋生態系と人々の健康に、取り返しのつかない深刻な汚染(被ばく)をもたらすだろう。

 過去に、ソ連崩壊時に起きた原潜の管理不能による汚染水日本海投棄問題では、汚染水処理のための設備を当時のソ連に供与したことがあった。
 その悪夢がよみがえる。
 そしてこれは「核戦争への道」へと直結する。
 原子力潜水艦の導入は、軍事大国クラブへの扉を開くことと同義であり、究極的には核兵器開発への技術的な誘惑となる。

 原潜の推進技術は核兵器開発に転用可能な技術的基盤を提供し、国際的な監視の目を逃れた技術のブラックボックス化は、核不拡散体制の最終的な崩壊を意味する。
 韓国の今回の行動は、「核ドミノ」の第一歩として歴史に刻まれる可能性さえはらんでいる。

 4.平和と安定のための即時撤回を求める

 韓国の原潜建造計画は、地域の平和維持という名目とは裏腹に、北東アジアを軍事衝突のリスクにさらす極めて危険な道へと誘導するものである。
 韓国政府に対しては、目先の軍事的な優位性や内政的な主張を超え、地域の未来と人類の安全に対する重大な責任を自覚するよう強く求める。
 北朝鮮も日本も含め、原潜建造計画を即刻、無条件で撤回し、対話と外交を通じた持続可能な平和構築の努力に復帰することを強く求める。

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