| [2025_10_23_07]<社説>原発地元に資金 民意みくびる懐柔策だ(東京新聞2025年10月23日) | 
| 
 
  
参照元 
 
 07:10 東京電力ホールディングスの小早川智明社長が柏崎刈羽原発(新潟県、全7基)の一部廃炉の検討と県への巨額の資金拠出の方針を打ち出したことは、再稼働に向けた「地元同意」を引き出すための露骨な懐柔策といえよう。最近の県の意識調査でも、多くの県民が東電に対して抱く不信感の強さは明白だ。それをみくびり、「結論ありき」で駆け引きを仕掛ける姿勢に真摯(しんし)さはうかがえない。 福島第1原発事故の賠償や廃炉の費用を背負う東電は、柏崎刈羽を稼働させれば火力発電の燃料費を削減でき、1基当たり年間約1千億円の収支改善を見込めるとして、経営再建の柱と位置付ける。「地元同意」はそれに向けた最後のハードルで、花角英世知事の判断が焦点となっている。 小早川社長は今月16日の県議会に参考人として出席し、原子力規制委員会の審査に合格した6、7号機のうち、優先する6号機を再稼働させた後、1年半ほどかけて1、2号機の廃炉を検討すると説明した。7基もの原子炉が集中立地するリスクを重く見る地元自治体の意向に沿うものと言えるが、再稼働とは別問題であろう。 また、地域経済の活性化などに貢献するとして1千億円規模の資金を県へ拠出する考えも示した。これも再稼働による収支改善分が原資といい、「アメ」で同意を買おうとする意図は明白だ。 政府も原発の半径10キロ圏の自治体が対象となる財政支援を30キロ圏に広げるほか、柏崎刈羽の事故に備えた避難道路を全額国費で整備する方針を打ち出し、地元の理解を得ようと躍起になっている。 だが、県が9月に実施した柏崎刈羽の再稼働に関する県民意識調査の中間報告では、東電が原発を動かすことが心配だとする回答が7割に上った。原因は、ほかならぬ東電の安全軽視の企業風土といえる。2002年には福島第1と第2、柏崎刈羽の3原発で悪質なトラブル隠しが発覚。東日本大震災では十分な津波対策を取らずに福島事故を起こし、その反省を経たはずの21年には、柏崎刈羽で社員が他人のIDカードを使って中央制御室に不正入室するなどのテロ対策不備が判明した。 県民が、東電は原発事業者としての適格性を欠くとみるのは当然である。知事は、東電の戦略に幻惑されず、あくまで民意を酌んで判断すべきだろう。  | 
|   | 
  KEY_WORD:KASHIWA_:廃炉_:FUKU1_:HIGASHINIHON_: |