[2025_07_22_02]関西電力 美浜原発 敷地内で建て替えに向け調査再開へ【詳報】(NHK2025年7月22日)
 
参照元
関西電力 美浜原発 敷地内で建て替えに向け調査再開へ【詳報】

 20:22
 政府が原子力発電を最大限活用していく方針を掲げる中、関西電力は、福井県の美浜原子力発電所の敷地内で、次世代型の原子炉への建て替えに向けて、地質調査などを再開することを22日、正式に発表しました。地質などの調査は、原発の新設に向けた最初のプロセスで、原発の新増設が実現すれば、2011年の東京電力福島第一原発の事故以降、初めてとなります。

 美浜原発をめぐっては、2010年11月に老朽化した1号機の後継炉の設置に向け、候補地の地質や動植物などを調べる自主的な調査に乗り出しましたが、福島第一原発の事故で調査は中断し、2015年4月に1号機と2号機は廃炉となっています。
 発表によりますと関西電力は、美浜原発の敷地内で次世代炉の建て替えに向け、発電所周辺の地質や地形などの調査を再開するということです。調査は、機械を使って穴を掘り、地質の状況などを詳しく調べるもので、原発事故のあとに策定された「新規制基準」に適合するかどうかを確認するとしています。
 政府が原発事故を受けて「可能な限り依存度を低減する」としていた原発の位置づけを見直し、ことし2月に閣議決定したエネルギー基本計画では、最大限活用していく方針を掲げ、既存の原発の敷地内での次世代炉への建て替えについても具体化を進めるとしていました。
 関西電力は、この調査の結果だけで建て替えを判断するものではないとしています。しかし、地質などの調査は、原発の新増設に向けた最初のプロセスで、原発の新増設が実現すれば、2011年の東京電力福島第一原発の事故のあと初めてとなります。
 会社では、美浜町など地元の理解を得た上で、すみやかに調査の計画を決定したいとしています。

 関西電力 森社長が会見

 関西電力は、福井県の美浜原子力発電所の原子炉の建て替えに向けた地質調査の再開などについて、22日午後1時から森望社長が大阪市内で記者会見を開きました。

 「地元の理解得ながら事業推進していきたい」

 森社長は「国の制度設計や事業者による技術面、経済面での検討に加えて、現地調査から得られる知見も必要となることから、後継機の事業成立性を検討する一環として、自主的な現地調査の実施が必要との判断に至った。地元をはじめとする地域の皆様のご理解を賜りながら、引き続き、原子力発電事業を推進していきたい」と述べました。

 「原子力が将来にわたり役割を果たすことが重要」

 森社長は「資源が乏しいわが国において、原子力が将来にわたってその役割を果たすことが重要だ。また、原子力の新増設や建て替えについては、投資の回収の予見性を確保するということが重要なので、国の政策に基づく事業環境整備などが必要となる」と述べた上で、原子炉の建て替えに向けては国の政策を踏まえた検討も必要になるとの考えを示しました。

 運転開始の時期 「今の時点で申し上げることは難しい」

 今後のスケジュールについて、森社長は「まずはわれわれが自主的な現地調査を実施するが、環境影響評価や設計を具体化して詳細にやっていくというステップを順番に踏んでいく。その調査にかかる時間は、年単位で、複数年、かかる見通しだ」と述べました。
 その上で「事業が成立するかどうかを判断して、そこから建設をしていくことになるので、どの時点で運転開始ができるのか、今の時点で申し上げることは難しい」と述べ、新しい原子炉の設置の判断や運転開始の時期については、現地調査の結果や環境影響評価などを踏まえ、見極めていく考えを示しました。

 関西電力 福井県に調査再開を報告

 関西電力は美浜原子力発電所で次世代型の原子炉への建て替えに向けた調査を再開することを22日、福井県に伝えました。
 22日午後、関西電力の水田仁原子力事業本部長が福井県庁を訪れ、福井県の中村保博副知事と面会しました。この中で水田本部長は「後継炉の事業成立性の検討の一環として自主的な現地調査を実施することにした」などと述べ、美浜原発で廃炉となった原子炉の建て替えに向け、東京電力福島第一原発の事故の後中断していた調査を再開することを報告しました。
 これに対し、中村副知事は「古い原子炉を使い続けるより、新しいほうが安全性が高まるというのが一般的な考えだ。後継機の設置可能性を検討する段階で県が何か申し上げることはないが地元に丁寧に説明しながら進めてほしい」と述べました。
 調査では、地質などを調べるためのボーリングを、発電所の敷地内から北側にある山地にかけての範囲を中心に行うということで、完了までには数年かかるとしています。
 関西電力は今後、地元住民への説明を行い、理解を得た上で具体的な調査計画を決めたいとしています。面会のあと、水田本部長は記者団に対し「地元住民にどのように説明するのかは、美浜町と相談のうえ決め、丁寧に説明する」と話しました。

 建て替えに向けた調査 交付金の対象に

 経済産業省によりますと、原子力発電所の建て替えに向けた調査が始まると、新たに建設する場合と同様に「電源立地地域対策交付金」の対象になるということです。
 地元の県と市町村から申請が行われれば、実際に建設されるかどうかに関わらず、調査開始の翌年度から年間で最大1億4000万円が交付されます。その後、法律で義務づけられた環境影響評価が開始されると、年間で最大9億8000万円が10年間交付され、以降は運転開始まで年間で最大8000万円が交付されます。

 地元 美浜町では “経済上向く” “安全対策を”

 地元の福井県美浜町では経済効果を期待する声の一方、安全対策を徹底してほしいという声も聞かれました。

 「私は大賛成です。今の日本のエネルギー事情を考えると、選択肢を狭めることはしてほしくないです。規制をして監視すればよいと思います」(70代男性)
 「建設が始まれば雇用が必要になるので、地元の経済も上向くと思います。安全面については関西電力が町民に納得のいく説明をする機会を設けてほしいです」(60代女性)
 「まずは地質調査をしっかりしてほしいと思います。建設が始まって人が増え、バスなどの交通の便が充実することを期待しています。ただ、事故が起きて最も被害を受けるのは地元住民なので安全対策はしっかりとしてほしいです」(50代男性)
 「いまさら新しい原発を建てるなんてもってのほかです。原発はどこで事故が起きてもおかしくなく、数が多ければそれだけ事故の確率も多くなると思います」(80代男性)

 大阪市 横山市長「使用済み核燃料のビジョン示して」

 関西電力の株主である大阪市の横山市長は「市としてはこれまでも使用済みの核燃料のリサイクルや処分のあり方を示してほしいと求めている。新たな原発の稼働はそのあたりの整理が前提であり、まずは使用済み核燃料をどうするのか、そのビジョンを可能な限り早く示していただきたい」と述べ、引き続き、関西電力に対し市の考え方を伝えていくという意向を示しました。

 電力供給受ける大阪では

 福井県の原発から電力の供給を受ける大阪では、さまざまな声が聞かれました。

 「電力需要が高まる中、再生可能エネルギーだけでは供給が追いつかないのであれば、原発の建て替えを検討することについてはやむをえないと思います。ただ、関西で使っている電気なので福井県だけに原発を集中させるのはおかしいと思います」(兵庫 40代男性)
 「原発は天災に対するリスクがあるので、新増設に向けた動きについては反対です」(奈良 30代男性)
 「気候変動が厳しくなり、日常生活で電気の大切さを感じるので原発の建て替えには賛成です。原子力以外の電源だけで電力をまかなうのは、無理だと思います」(大阪 60代女性)

 専門家「次世代炉つくるならば明確に価値の説明を」

 関西電力の発表について、エネルギー政策に詳しい国際大学の橘川武郎学長は「東日本大震災を踏まえ、新たな規制基準のもとで原発の再稼働に向けた審査が進み、各種の世論調査でも再稼働に賛成する人が反対を上回るようになった。岸田政権のもとで次世代の革新炉の方向性も打ち出され、原子力に対する世論が電力会社から見れば順風に変わった。それが今回の判断につながったと思う」と述べました。
 ただ、橘川学長は「実際に次世代型の原子炉への建て替えが進むかは、多額の費用がかかることや今後の社会情勢を踏まえた判断も必要になる。今回の動きはアドバルーン的な動きで、まだ実現には程遠いとみられる」との認識を示しました。
 さらに橘川学長は「電力が足りないから原子力が必要だという議論は非常に議論としては弱い。次世代炉をつくるならば、その価値を明確に言わなくてはならない」と述べ、建て替えを検討する会社に対し、丁寧に必要性を説明するよう求めています。

 武藤経産相「必要性を丁寧に説明していきたい」

 武藤経済産業大臣は、関西電力の会見前に開かれた閣議のあとの記者会見で「現時点で関西電力から発表された内容はなく、コメントは差し控えたい」と述べました。
 そのうえで「今後、原子力発電所の供給力の大幅な喪失が見込まれる中で、脱炭素電源を確保していくために、安全性の確保や地域の理解を大前提に次世代革新炉への建て替えなど対応を進めていく必要がある。その必要性を今後とも丁寧に説明していきたい」と述べました。

 林官房長官「地元に丁寧な説明を」

 林官房長官は22日午後の記者会見で「個々の事業者の経営判断に関する事柄であり、コメントは控えるが、調査の実施にあたっては地元への丁寧な説明をお願いしたい」と述べました。
 また、次世代型を含めた原子炉の建て替えの必要性を問われ「今後、既設の原子炉の運転期間が60年に到達することで脱炭素電源としての供給力を大幅に喪失することになる。これを踏まえ、経済成長や国民生活の向上に必要となる脱炭素電源を確保するため、長期のリードタイム、工程期間を考慮しつつ対応を進めることが必要だ」と述べました。

 注目
 【解説】なぜ今 原発の建設か
 今、電力会社が新たな原発の建設に向けた動きを具体化する背景には、全国で、原発の運転開始からの期間が長くなっていて中長期的には減少が見込まれることがあります。
 現在、国内には33基の原子力発電所があり、このうち、原子力規制委員会の審査に合格し再稼働したのは14基です。ことし策定されたエネルギー基本計画では、2040年時点で電源構成に占める原発の割合は2割程度を目安としていますが、これをまかなうには33基のほぼすべてが運転することが必要です。
 ただ33基のうち、半数を超える24基はすでに運転開始から30年以上が経過し、40年を超える原発も7基あるため、仮に、建設中のものも含めすべての原発を60年間、運転したとしても、2030年代からは原発の数は減り始め、2040年代に入ると大幅に減少していくことになります。
 このため、新たな原発の建設が無ければ、中長期的には、2050年の実現を目指す脱炭素社会への貢献は限定的になります。おととし法律が改正され、審査などで停止した期間は60年からさらに延長できるようになりましたが、経団連の試算ではそれを考慮しても2050年時点で残るのは30基程度だとしています。
 一方で、新たな原発の建設には調査開始から運転を始めるまで20年程度かかることが見込まれ、政府や電力業界は検討を具体化すべき時期に来ているとしています。

 ◇関西電力 美浜原発とは

 福井県美浜町の関西電力の美浜原子力発電所は、原発が集中して立地する敦賀半島の西側にあり、周辺には日本原子力発電の敦賀原発や廃炉になった日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」などがあります。
 美浜原発は1号機から3号機まで3基あり、このうち1号機は関西電力が初めて建設した原発で、1970年11月に営業運転を開始しました。
 東京電力・福島第一原発の事故のあと
 ▽1号機と2号機は2015年に廃炉が決定し
 ▽3号機は2016年に新しい規制基準に合格して2021年に再稼働しました。運転中の3号機はことしで運転開始から49年になり、国内で運転中の原発では3番目に古くなっています。
 敦賀半島には多いときで7基の原発が稼働していましたが、このうち5基は廃炉になっていて、敦賀原発2号機も再稼働の見通しが立っていないことから、美浜原発3号機が敦賀半島で運転している唯一の原発となっています。

 ◇「革新軽水炉」とは

 福井県にある美浜電子力発電所の原子炉の建て替えに向けて動き出している関西電力が、次世代型の原子炉として念頭に置いているのが「革新軽水炉(かくしんけいすいろ)」です。
 関西電力が三菱重工業などと共同開発していて、福島第一原発の事故のあとに定められた「新規制基準」に対応するための設備などを設計段階で取り入れることで、これまでの原子炉よりも安全性が高いことが強みとされています。
 関西電力によりますと原子炉などが入っている建物の耐震性を強化し、メルトダウンが起きた際に、溶け落ちた核燃料を受け止めて冷やす「コアキャッチャー」と呼ばれる設備を導入するとしています。
 関西電力や三菱重工などでは、2030年代半ばに「革新軽水炉」の実用化を目指していて、開発状況も踏まえながら、建て替えについての検討を進めることにしています。

 ◇今回の調査は

 関西電力によりますと、新たに行う調査では、原子炉の建て替えにあたって、地盤の強度などを調べる「地質調査」を行うとしています。
 この地質調査はボーリング調査などを通じて断層の様子や地盤の強度などを詳しく調べるもので、会社は、東京電力福島第一原発の事故のあとに地震や津波など、自然災害への備えを強化するために策定された「新規制基準」に適合するかどうかを確認するとしています。
 また地質調査の範囲は「発電所の敷地の内外で広く行う」としていますが、地元への説明を踏まえて正式に決定するとしています。
 調査の期間は複数年かかるとみられるということで、建て替えに向けた最初のステップとなるこの調査を経て、敷地を造成するなど、建設の準備のための工事を進めたいとしています。
 会社では、今回の調査について「事業が成立するかどうか検討するために自主的に行うものだ」とした上で、地元自治体や住民への説明を丁寧に行っていくとしています。

 これまでの経緯は

 美浜原子力発電所の新増設をめぐっては、2000年に地元、美浜町の商工会が増設を求める請願書や陳情書を町議会に提出し、採択されました。
 しかし、当時は将来、人口が減少し電力需要が伸び悩むと予想されていたことに加え、2004年に3号機で配管が破損して高温の蒸気が噴き出し、作業員5人が死亡する事故が起きたことから、増設に向けた動きはしばらく進みませんでしたが、1号機が運転開始から40年となった2010年、関西電力は後継機の建設に向けた現地調査を開始しました。
 当時の調査では、発電所の敷地内から北側の山地にかけてのおよそ0.6平方キロメールの範囲で、地盤の強度などを調べるボーリング調査や野生生物の生息状況を調べる環境調査などが行われましたが、翌年の2011年3月に東京電力・福島第一原発の事故が起きると中断されていました。

 政府の原子力政策 大きく方針転換

 関西電力が、原子炉の建て替えに向けて最初のプロセスとなる地質調査に乗り出すのは、政府の原子力政策が大きく転換したことが背景にあります。
 政府は、原子力発電を含む日本の電力政策の骨格として、およそ3年ごとに「エネルギー基本計画」を策定しています。
 東京電力福島第一原発の事故の前に策定された2010年の計画では、原子力発電は、二酸化炭素を排出せず、経済的にも優れた「基幹エネルギー」と位置づけ、原発の新増設を推進する方針が明記されていましたが、事故のあと原子力政策は大きく見直されます。
 最初となる2014年の計画では「原発の依存度を可能な限り低減する」という方針に切り替わり、この方針は、前回、2021年の計画まで一貫して盛り込まれてきました。
 しかし、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、エネルギー価格が上昇したことに加え、AIの普及に伴うデータセンターの増加など、電力需要の拡大も見込まれるとして、政府は、おととし、2023年になって一転して原発を最大限活用する方針を打ち出しました。
 ことし2月に閣議決定された新たな計画にも、それまで盛り込んできた「原発の依存度を可能な限り低減する」という文言を明記せず、方針転換を鮮明にしました。
 さらに計画には、廃炉となる原発の建て替えの条件を、これまでより緩和するとともに、次世代型の原子炉の開発を進めることなども盛り込まれ、電力会社がどう対応するかが焦点となっていました。

 背景に老朽化やエネルギー情勢の変化も

 国内の原発は、現在、14基が稼働していますが、このうち関西電力は、いずれも福井県にある美浜原発の3号機、大飯原発の3号機と4号機、高浜原発の1号機から4号機の、合わせて7基が稼働中で、電力各社の中で、最も多く原発を稼働させています。
 会社の電源構成に占める原子力の割合は、2023年度の発電実績で44%余りを占め、福井県に立地が集中する原発から関西電力の管内などに電力を供給しています。
 その一方、稼働中の7基のうち、美浜原発の3号機と高浜原発の1号機から4号機の合わせて5基は、運転開始から40年を超え、このうち高浜原発の1号機は、国内で初めて運転開始から50年を超え、運転している中では最も古い原発となっていました。
 関西電力が次世代型の原子炉への建て替えに向けて動き出した背景には、こうした老朽化への対応に加え、エネルギーをとりまく情勢の変化があります。
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をきっかけに、火力発電の燃料となるLNG=液化天然ガスの価格が一時高騰し、電気料金の上昇につながりました。
 さらに、生成AIの急速な普及に伴って、関西電力管内でも大量に電力を消費するデータセンターの建設が相次いでいて、安価で安定的なエネルギーの供給が課題となっていました。
 こうした中で、政府は、エネルギー安全保障と脱炭素社会の実現を両立させるとして、2011年の東京電力福島第一原発の事故を受けて、「可能な限り依存度を低減する」としていた原発の位置づけを見直し、ことし2月に閣議決定したエネルギー基本計画では、最大限活用していく方針を掲げ、既存の原発の敷地内での次世代炉への建て替えについても、具体化を進めるなどと明記しました。
 これを踏まえ、関西電力の森望社長は、原子炉の建て替えについて「既存の原子力は未来永ごうではないので、原発を活用し続けることを踏まえて、建て替えを検討しないといけない」などと述べ、前向きに取り組む考えを示していました。
 また、会社では、去年、2024年11月、新たな株式の発行などで3700億円余りの資金調達を行い、電源の高効率化と脱炭素に向けた設備投資などに充てる方針も明らかにしていました。

 「安全性の確保」が大前提に

 新たな原発の建設が検討される中で、大前提となるのが東京電力福島第一原発で起きたような事故を繰り返さないための安全性の確保です。
 政府は、既存の原発の再稼働にあたっては独立性の高い原子力規制委員会による科学的で専門的な判断を尊重するとして、規制委員会が基準に適合すると認めた場合にのみ、地元の理解を得ながら再稼働を進めるという方針を示してきました。
 新たな原発の建設についても同様の方針を示していて、建設するのは重大事故に対応する設備を組み込み、安全性を高めるなどした次世代型の原子炉とし、原発自体の数を増やさないために、廃炉になった原発の建て替えだけを対象としました。
 ただ、次世代型の原子炉は従来の原発から設計自体が変わるため、原子力規制委員会は
 ▽新たな基準を設ける必要があるかどうかや、
 ▽実際に安全性が確保できることをどのように確認するかなどについて、電力業界と議論を続けています。
 政府が原発の最大限の活用を掲げる中で、規制委員会が独立した立場から厳格な規制を貫くことができるかどうかや、電力会社が安全性の向上に取り組み続けるかどうかが問われることになります。

 建て替え可能性 ほかの原発では

 原子力発電所の新増設について、政府は、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと「想定していない」としていましたが、3年前の2022年、原発を最大限の活用する方針に転換し、安全性を高めるなどした次世代型の原子炉の開発や建設を検討してきました。
 原発の数を増やすことには与党内からも慎重な声があり、当初は、廃炉となった原発の敷地内での建て替えを念頭に置くとし、事実上の要件としていましたが、ことし2月に策定したエネルギー基本計画では、これを緩和し、同じ電力会社であれば、別の原発の敷地内に建てる場合でも建て替えとすることを明記しました。
 こうした中、国内の電力会社で最多となる7基の原発を運転している関西電力は、次世代型の原子炉のひとつ「革新軽水炉」の開発を三菱重工業などと共同で進め、建て替えに向けた検討を行っていました。
 美浜原発では1号機と2号機が廃炉となっていて、今回の調査再開は政府の方針を受けて建て替えの検討をさらに具体化した形です。
 建て替えの可能性が取り沙汰されている原発はほかにもあります。
 このうち福井県にある日本原子力発電の敦賀原発は、原発事故の前には3号機と4号機の建設に向けた準備工事が行われていました。
 1号機が廃炉になっていて、地元からは、計画を具体化するよう求める声も上がっていますが、日本原電は今ある原発の再稼働を優先する考えを示しています。
 また、九州電力は佐賀県にある玄海原発の1号機と2号機が廃炉となっていて、ことし5月に策定した経営ビジョンでは、次世代型の原子炉の開発・設置を検討することを盛りこみました。
 具体的な予定地は示していませんが、玄海原発の敷地内以外に、原発事故の前から3号機の建設が計画されてきた鹿児島県にある川内原発の敷地も対象となります。

 建設費など膨大なコスト 課題に

 建て替えに向けた課題のひとつが建設費などにかかる膨大なコストです。
 経済産業省が去年示した試算では、原発1基あたりの建設費は7200億円で、4年前の試算よりも1000億円あまり高くなりました。
 これは資材費の高騰や人件費の上昇が反映された結果で、20年程度と想定されている建設期間がさらに長期化するなどした場合、コストがさらに上振れする可能性も指摘されています。
 実際に海外では建設コストの上昇が相次ぎ、フランスで去年9月に稼働したフラマンビル原発3号機が132億ユーロ、日本円で2兆円以上、イギリスで建設中のヒンクリー・ポイントC原発では、2基あわせて310億ポンドから340億ポンド、日本円で6兆円以上となっています。
 背景には、工期が延びたことに加え、長期間、建設経験が無かったことによる部品製造企業の減少や技能の低下などがあると指摘されています。
 国内では、電力自由化の前には、原発の建設から廃炉までにかかるコストをすべて電気料金で回収できる「総括原価方式」という仕組みがありましたが、自由化されて以降、確実にコストを回収する仕組みがなくなり、投資判断が難しくなっています。
 電力各社は、投資を回収できなくなるリスクが大きいとして、政府に対し民間の投資を後押しする仕組みの検討を求めていて、政府は6月、コストの上昇分を回収できる支援策についての大枠をとりまとめました。
 このほか、次世代型の原子炉には規制のルールが定まっていないため、原子力規制委員会による審査にどの程度時間がかかるか不透明なことや、地元や国民の理解を得られるかなど、建て替えの実現には多くの課題が残されています。
KEY_WORD:MIHAMA_:FUKU1_:GENKAI_:HIGASHINIHON_:MONJU_:OOI_:SENDAI_:TAKAHAMA_:TSURUGA_:ウクライナ_原発_:岸田首相_次世代-原発_検討指示_:再生エネルギー_:廃炉_: