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[2025_05_18_03]台湾 アジア初の脱原発 運転期限迎え停止作業 ルポ・蘭與 搬出先見つからず40年以上廃棄物貯蔵の島 無力感(東奥日報2025年5月18日) | ![]() |
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04:00 【台北共同】台湾で唯一稼働していた第3原発(南部・屏東県)2号機が17日に運転期限を迎え、停止作業に入った。アジアで脱原発は初めて。ただ電力需要増を見据え、野党や経済界は再稼働を要求。与党、民主進歩党(民進党)の頼清徳政権も将来の小型モジュール炉活用には含みを持たせている。原発を巡る議論は続きそうだ。 民進党は党綱領に新規原発の建設反対を盛り込んでおり、脱原発を党是とする。同党の蔡英文前政権は原発ゼロを推進。頼政権も老朽化した原発の再稼働に否定的だ。2026年にグリーンエネルギーの発電比率を20%以上にすることを目標にする。 台湾は電力を大量に消費する半導体製造や人工知能(AI)を産業の柱に据える。経済界からは原発活用を求める声が出ている。立法院(国会)は13日、多数派の野党主導で運転期限の延長により再稼働を可能にする改正法案を可決した。第2野党、台湾民衆党は再稼働の是非を問う住民投票の実施を提案している。 頼政権は、今年新たに稼働する火力発電所の容量は第3原発2号機の5倍に当たるとし、電力供給は32年まで安定していると強調している。 一方、反原発団体の幹部は、頼政権は蔡前政権と異なり「反原発堅持が揺らいでいる雰囲気がある」と主張。卓栄泰行政院長(首相)は核廃棄物の処理などが解決されることを条件に、将来の小型モジュール炉活用への期待を表明している。 米国の対台湾窓口機関、米在台協会(AIT)台北事務所長のグリーン氏は台湾紙に、米国は原発を含めたエネルギー源を台湾に提供できると述べた。エネルギー安全保障の観点から原発活用を考えるよう米国の立場を示唆した形だ。 第3原発2号機は1985年に営業運転を開始し、17日に40年間の運転期限を迎えた。 ルポ・蘭與 搬出先見つからず40年以上 廃棄物貯蔵の島 無力感 台湾本島の南東の太平洋に浮かぶ離島・蘭與(らんしょ)。先住民タオ族を中心に約5千人が暮らす島に、低レベル放射性廃棄物の貯蔵施設がある。当局は一時保管だと説明し島外搬出を目指してきたが、「核のごみ」の行き場は見つからず40年以上たった。島民らはアジア初の脱原発実現にも関心はなく、無力感を口にした。 「時間だけが過ぎていった。やるせない」。トビウオ漁から自宅に戻ったタオ族のルーマイ(51)に貯蔵施設のことを尋ねると、力なく語った。 低レベル放射性廃棄物の蘭嶼(らんしょ)への搬入は1982年以降、島民の猛抗議があった96年まで続いた。その後抗議は下火になったが、2011年3月の東京電力福島第1原発事故を受け再燃した。 ルーマイも島の「青年行動連盟」に加わり、廃棄物の島外搬出や脱原発を求めて台北などでデモに参加した。だが当局は島外搬出に言及するものの搬出先は見つからない。「今の若者にとって貯蔵施設はもう過去の問題だ」。かつて白身が参加したデモの写真を、じっと見つめた。 ルーマイは今、地域の交流活動を担う「社区発展協会」の理事を務める。協会運営の原資は廃棄物貯蔵の見返りに台湾電力が地元に支払う補助金だ。「(台湾電力に相対してきた)自分がこの役職についているのは複雑な気持ちだが、地域の発展に責任を持ちたい」 島の南にある貯蔵施設は真っ青な海の目の前。緑色の構造物が23棟、整然と並んでいる。廃棄物の入ったドラム缶計約10万個を保菅。敷地内を見学すると「自然界にも放射性物質は存在する」と強調するパンフレットを渡された。近くには廃棄物搬入に使われた龍門港があるが、今は小型ボートが係留され静かだ。 島内には放射線レベルを示す電光掲示板が随所にある。「蘭しょならではだ」。本島からの観光客が珍しがって掲示板の写真を撮っていた。 観光ガイドの男性(66)は「(貯蔵施設は)この土地に根差してしまった。どこも好んで受け入れるわけはないし…」。 反原発や廃棄物搬出の運動の中心にいたシナン・マビボ(51)は言う。「反原発を主張する人たちも廃棄物処理の難しさを説明するために蘭しょを持ち出すだけ。歴代政権も廃棄物の問題解決に正面から取り組もうとはせず、島に残った」(敬称略、蘭しょ共同=渡辺 靖仁) 台湾の原発 台湾電力第1、第2原発(新北市)、第3原発(屏東県)の各2基の計6基体制が1985年に確立。99年に日本メーカーが関わった第4原発(新北市)に着工した。2011年の東京電力福島第1原発事故を受け、反原発世論が盛り上がり、15年、第4原発の建設を正式に凍結。民主進歩党(民進党)の蔡英文政権下の17年に、25年までの原発廃止を定めた脱原発法が成立した。第1原発1号機が18年に廃止措置に移行したのを皮切りに、順次運転を停止している。(台北共同) |
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