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[2025_04_11_01]「特定重大事故等対処施設」ができない 柏崎刈羽原発で再稼働を差し止める「未完の工事」 東電の甘すぎる工程管理で再稼働ストップの現実 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2025年4月11日) | ![]() |
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04:00 【1】柏崎刈羽原発の再稼働をめぐり、新たな問題が浮上した 「特定重大事故等対処施設」(以下、「特重」)の建設に関して、次のような経緯と現状が確認できる。 (1)「特重」工事完了時期の延期 東電は柏崎刈羽原発7号機の「特重」工事完了を2025年3月と設定していたが、この期限までに工事を完了できない見込みであることを明らかにした。 具体的には、7号機の工事完了時期を2029年8月、6号機を2031年9月としている。 (2)地元「柏崎市長の見解」とする文章の公表 柏崎市の櫻井雅浩市長は「特重」の工事完了時期の延期について、「資機材や人材の問題は理由にならない」と述べ、東電に対し他の電力会社よりも工事に時間がかかっている理由の説明を求めている。 (3)東電の対応 東電は、「特重」に関する設計および工事計画の認可申請やその補正を、2023年から2024年にかけて原子力規制委員会(規制委)に提出し許可を得てきた。 これらの申請は、「特重」の建設に際して建屋や設備について分割して小出しに許可申請をしてきたもので、一部構築物の構造変更に伴う。この審査は引き続き続いていくものと考えられる。 (4)原子力規制委の対応 規制委は「特重」の建設遅れについて把握はしているものの理由等を東電に問い合わせてはいないという。 出来ないならば規定通り運転停止を求めるだけとしているが、原発の安全上重要な施設の建設が出来ない事態に対し、原発を運転する資格があるのか、監督官庁としてあまりに無責任ではないかとの批判も出ている。 (5)「特重」の概要 「故意による大型航空機の衝突その他」の「テロ攻撃」を含む過酷事故の際に、施設設備が大規模に損傷して使用不能になった際、原子炉格納容器の破損を防止することを目的として設置される。 原子炉圧力容器の減圧や注水、原子炉格納容器の減圧や冷却機能等を備え、原子炉から100m以上離して建設する。 法令上、工事認可から5年以内に作ることを義務づけており、期限を過ぎると原発の運転ができない。 (6)「特重」の設置猶予期限の根拠 「5年」の猶予期間の根拠は、過去に何度も国会や記者会見の場で質されてきたが、納得できる回答はない。 今回も規制委の会見の場で質問されたが、中山伸介委員長は「特重」について「バックアップ施設でございまして、この施設ができるかできないかでリスクが大幅に何か変わるようなものではございません」などと回答している。 (7)「特重」完工見通し延期の原因に関する規制側の見解 「特重」の完工遅れについて、原子力規制庁柏崎刈羽原子力規制事務所の伊藤信哉所長は3月25日の定例記者会見で、「私見」とした上で、同原発のテロ対策不備を踏まえた追加検査が影響したとの見方を示した。「作業員やお金が追加検査で取られた分、影響が出たのかなとは思っている」と述べた。(新潟日報3月26日)つまり「身から出た錆」というわけだ。 【2】「特重」の目的と設置期限のアンマッチ 「特重」とは、何を目的に作られることになったのか。 国は東電福島第一原発事故の反省として、原子炉冷却を維持し炉心溶融を起こさない対策を強化することにしたが、それでも否定できないリスクが残ることから、既存の設備に追加して自立的に格納容器を冷却する能力を持たせることにした。 これを「テロ対策」と銘打って整備することにしたが、既存の原発に後から付け加えるため、莫大な費用と時間がかかる。事業者や原子力産業側から猛烈な反発を受け、その設置期限について緩和策をもうけた。 しかし猶予5年の根拠を説明することは難しい。 つまり原発が動いているのに法律で定めた設備がなくても良いというのは、いくらなんでも不当である。 なお、テロにより「大規模な損壊で広範囲に設備が使えない事態を想定」というが、このような事態は何もテロに限った話しではない。 福島第一原発事故はまさしくそのような状況であったし、地震や津波または火山の被害は同様の事態を招くことは容易に想像が付く。 「特重」は、その際も過酷事故を回避または緩和することが期待されるはずである。 【3】「特重」の秘密主義 テロ対策設備と銘打ったため、「特重」の仕様は一切明らかにされていない。 各電力会社が公表している図はどれも似たり寄ったりで、概念図(ポンチ絵)に過ぎない。 これでは過酷事故時に想定されているような性能が発揮できるのか、過酷事故を緩和するほどの能力を有しているのか、その成立性を第三者が検証することも出来ない。 「特重」の設置理由は「故意による航空機の墜落」と、まるで米国の9.11テロを想定しているような書きぶりだが、大規模自然災害にも適用される(期待される)。 「特重」の出来如何により、広域避難の必要度が変わり得る。 すなわち私たちの命運も左右されるのであるから、可能な限り、例えば侵入経路が分かるといったレベルではなく成立性が確認できる程度の仕様や過酷事故時に運用される規定や、それらにより想定される緩和程度を明確にするべきだ。 明らかにされない限り、予断を持って緩和されるとか事故を回避できるなどと考えるべきではない。 国や電力会社も「特重」への疑問に対しての説明を不当に拒否するべきでもない。 【4】柏崎刈羽原発の「特重」建設遅れ 柏崎刈羽原発に話を戻す。 柏崎刈羽原発6、7号機はいずれも、原子炉等規制法(炉規法)第43条の3の23第1項及び規則(実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則)第82条が定めた期限までに工事完了できないことが確実になった。 東電による変更後の工事完了予定は、7号機が2029年8月、6号機が2031年9月を目途とすることになり、7号機は約4年5月、6号機は5年の遅れである。 なお、変更後の見通しについても目途であって完工する見通しが立っているわけではない。 許容された5年を含めると工事は少なくても9年以上もの年月がかかることになった。 地元の 櫻井雅浩柏崎市長は、声明文で「なぜ他電力よりも時間がかかっているのかという疑問。資機材や人材の問題は理由にならない。柏崎刈羽原子力発電所における特定重大事故等対処施設という特殊事情があり、根拠とするならばその旨を原子力規制委員会に伝えるべきである。」といらだちを隠さない。(柏崎市のホームページで「市長の見解・感想」(2025年2月27日報道発表)より) 花角英世新潟県知事は「東電には積極的な情報公開と分かりやすい説明に努めてほしい」とコメントしている。(新潟日報3月12日) しかし東電は、なぜ他電力よりも時間がかかっているのか、機材や人材の何が問題なのかも含めて公式には一切説明していない。 柏崎市長が声明で言及しているから、理由を市長に説明したかの印象だが、おそらくそうではない。 そこには公言できない極めて深刻な理由もあると思われる。 それは、東電の経営不振、具体的には経営破綻の危険性が日々高まっていることである。 言い換えれば、東電は国(この場合は経産省)に対して柏崎刈羽原発を動かしたいのならば、資金を含む支援策を講じろと「威迫」あるいは今はやりの「ディール」を仕掛けているのだ。 (初出:2025.4.11たんぽぽ舎「金曜ビラ」505号) |
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KEY_WORD:柏崎刈羽-テロ対策施設-4年以上-延期_:FUKU1_:KASHIWA_: | ![]() |
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