[2025_03_08_01]地元首長は「県外最終処分が実現できるのかという危機感」 震災14年福島県知事インタビュー(福島テレビ2025年3月8日)
 
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地元首長は「県外最終処分が実現できるのかという危機感」 震災14年福島県知事インタビュー

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 【2011年3月11日の震災 あの日から14年】

 【写真】内堀雅雄 福島県知事

 3月11日で、東日本大震災の発生から14年となる。
 地震と津波に襲われ、水素爆発や炉心溶融などの過酷事故を引き起こした福島第一原子力発電所の廃炉は2051年と掲げられ、その約3分の1が過ぎた。
 また、事故に伴い拡散した放射性物質を取り除くべく県内外で実施された除染の廃棄物などを運び入れた中間貯蔵施設をめぐり、法定の「県外最終処分」の期限までは残り約20年となる。
 中間貯蔵施設に保管される比較的放射線量の低い土壌をめぐっては、公共工事で再生利用される方針だが、現在は県内のごく一部での実証実験にとどまるのみで、再生利用の受け入れ先すら決まらない。
 全国的な理解が深まらないことから、施設の立地自治体でもある双葉町の伊澤町長が、将来的な町内での再生利用に言及するなど、地元も強い危機感をのぞかせる。

 内堀雅雄 福島県知事は震災から14年を前に福島テレビのインタビューに答え、中間貯蔵施設に保管された除去土壌をめぐり、地元から「残り20年で本当に実現できるのかという危機感」を聞いたとして、国に引き続き具体的な方針や工程を示すよう求める、とした。

 【「これまでの挑戦の成果が目に見える形となって現れている」】

【写真】震災から14年 福島県の面積の約2.2%にはいまだ避難指示が続く

Q 震災と原発事故から14年。1年間の復興に向けた実績、今後の課題は?

<知事>震災と原発事故から14年が経過します。この間、県民の皆さんの懸命な努力と国内外からの温かい支援により福島の復興は着実に前進しています。昨年は、震災後55の国と地域で行われていた県産農林水産物の輸入規制が、6つの国と地域にまで減少したほか、これまでに認定を受けた4つの町すべての特定帰還居住区域において、除染・解体作業が進められているなど、復興に向けた動きが加速しています。
 さらに、県産農産物の輸出量が過去最高を更新したほか、県内への移住者数や移住相談件数、外国人宿泊者数も過去最多を記録するなど、これまで続けてきた挑戦の成果が目に見える形となって現れています。
 一方、いまなお、約2万5000人の方々が避難生活を続けています。
 避難地域の復興再生、廃炉と汚染水、処理水対策、風評と風化の問題をはじめ、急激に進む人口減少や度重なる自然災害、原油価格・物価高騰への対応など、福島県は、いまだ多くの困難な課題を抱えています。さらに、復興の進捗に伴い、それまで顕在化していなかった新たな課題やニーズが生じています。今後も復興の進捗状況に応じて柔軟に対応していく必要があるなど、本県の復興は長く厳しい戦いが続きます。
 こうした課題を乗り越え、福島の復興を成し遂げるためには、県政の羅針盤である総合計画に掲げている様々な施策を1つ1つ着実に前に進めていくことが重要です。
 これからも県民の皆さんをはじめ、福島に思いを寄せてくださるすべての方々と力を合わせながら、福島の復興と地方創生の実現に向け、全力で挑戦を続けていきます。

 【中間貯蔵施設 地元から強い“危機感”】

【写真】大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設には東京ドーム約11個分の除去土壌等が保管される

Q 中間貯蔵施設への土壌搬入から10年、約束の県外最終処分まで20年に迫った。県外最終処分の実現性はどの程度か?また、立地自治体である双葉町長が、町内での将来的な再生利用受入れについて言及したことを知事としてどう受け止めるか?

<知事>除去土壌等の県外最終処分は、中間貯蔵施設の受け入れという苦渋の決断を行った際に、その前提として国が約束し、法律に定められた国の責務です。

 実現性、という問題ではなく、必ず実現されなければなりません。
 2015年に搬入が開始されてから、まもなく10年が経過します。この間、市町村の仮置き場に保管されていた除去土壌等の中間貯蔵施設への搬入がおおむね完了するなど、本県の環境回復は着実に進んでいます。
 一方、中間貯蔵施設を受け入れた大熊町と双葉町においては、長期間にわたる重い負担が続いており、地元の方々からは、町の将来を不安視する切実な声も上がっています。

 そうした中、先日、双葉町の伊澤町長と直接お会いし、残り20年という期間の中で本当に県外最終処分が実現できるのかという強い危機感を持っている、との思いをお聞きしました。
 県としても、地元の大熊町、双葉町とともに、国に対し、県外最終処分の確実な実施に向け、政府一丸となって取り組みを加速させるよう今後もしっかりと訴えていくことを伊澤町長と共有しました。

 県外最終処分を実現するためには、今後とも、様々な取り組みを進める必要があり、相当な期間を要します。しかし、法定された2045年3月までに残された期間は20年しかありません。
 県外最終処分の確実な実施に向け、国は具体的な方針や工程を速やかに明示し、県民や国民の目に見える形で進捗管理をしっかりと行いながら、政府一丸となって取り組みを加速させるよう強く求めていきます。

 【廃炉の最終形を考える上で“デブリ取出し”と“放射性廃棄物の議論”重要】

【写真】2024年11月 事故後初めてとなる燃料デブリの採取を実施(画像提供:JAEA)

Q 福島第一原発は燃料デブリ採取により廃炉が最終段階の「第3期」へと入った。知事が描く「2051年の第一原発の姿」は具体的にどのようなものか。そこに向かっての実現性をどう考えているか?

<知事>東京電力福島第一原子力発電所の廃炉については、2024年に行われた2号機における燃料デブリの試験的取り出しにより、中長期ロードマップにおける廃止措置終了までの期間である第3期に移行しました。
 ここに至るまで多くの時間を要しましたが、これは福島第一原発の廃炉に向けた重要な一歩であると受け止めています。
 現在、JAEA大洗原子力工学研究所をはじめ複数の分析機関において、採取した燃料デブリの分析が進められています。また、今回の取り出しで使用したテレスコ式装置における、追加の燃料デブリを採取する計画が進められています。

 一方、福島第一原発の廃炉は前例のない取り組みです。特に燃料デブリの取り出しは、原子炉建屋という高線量下での作業であることや、原子炉格納容器内部の正確な状況が分かっていないことなど、多くの課題を抱えています。

 福島第一原発の廃炉については、これまでも国に対し、燃料デブリを安全かつ確実に取り出すこと、国の責任において燃料デブリを含む放射性廃棄物の処分方法の議論を進め県外で適切に処分することを繰り返し求めてきました。
 廃炉の最終形を考えるうえで、まずはこの2点についてしっかりと道筋をつけることが必要だと考えています。
 そのためにも、国及び東京電力においては、まずは今回取り出したデブリの性状分析をしっかりと行い、原子炉内部の状況把握や本格的な取り出しに向けた具体的な方策の検討を前に進めるべきと考えています。
 福島テレビ

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