[2025_02_21_07]福島第一原発で試験的に採取 核燃料デブリ 茨城の施設で初公開(NHK2025年2月21日)
 
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福島第一原発で試験的に採取 核燃料デブリ 茨城の施設で初公開

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 東京電力福島第一原子力発電所で去年、試験的に採取された核燃料デブリが、分析を行っている茨城県の研究施設で初めて報道陣に公開されました。
 福島第一原発2号機では、去年11月にかけて、事故で溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合った核燃料デブリの試験的な取り出しが初めて行われ、重さ0.7グラムのデブリが採取されました。

 採取された核燃料デブリは茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構の研究施設に搬入されて表面観察などの分析が行われたあと、細かく分割されて、大洗町の施設を含む茨城県や兵庫県にある5つの研究施設に分けられ、詳細な分析が進められています。

 今回、初めて報道陣に公開された核燃料デブリは「セル」と呼ばれる部屋の中で2つの透明な容器の中に入れられていて
 ▽このうち一つには銀色に見える2ミリ程度の大きさの粒が
 ▽もう一つには複数の黒っぽいかけらが収められているのが確認できました。
 これまでの分析では、表面から核燃料に含まれるウランや周りの構造物の材料とみられる鉄などの金属が確認されていて、原子力機構は今後、硬さや粘りけといった性質を調べることにしています。

 また、核燃料デブリにレーザーを当てて、中に含まれるウランが核分裂反応を起こしやすいものかどうかも調べる計画です。
 原子力機構はこうした分析により、核燃料デブリを本格的に取り出す工法の検討や、核分裂反応が連鎖的に起きる「臨界」が再び起きるリスクを見極めるのに役立てたいとしていて、ことし夏ごろをめどに主な分析の結果を公表することにしています。
 原子力機構廃炉環境国際共同センターの荻野英樹 技術主席は「今回の結果だけでデブリ全体について把握するのは難しいが、私たちがこれまで培ってきた技術でサンプルを分析し、廃炉に貢献していきたい」と話していました。

 初めて公開された核燃料デブリ。

 今回取り出した量はわずか0.7グラムと、砂粒ほどの小ささで、総量の12億分の1にすぎません。
 このデブリを各地の研究施設が総力を挙げて分析しています。
 何のためにどのような分析が行われ、核燃料デブリについてどこまでのことがわかったのでしょうか。

 Q そもそも核燃料デブリとは何なのか

 A 核燃料デブリは、2011年3月の事故により原子炉から溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合ったもので、福島第一原発の1号機から3号機の3基あわせておよそ880トンに上ると推計されています。
 3基すべてで原子炉の底を突き破って、格納容器の底を中心に広がっているとみられ、核燃料の主な材料であるウランと、核燃料を覆うケースや核分裂を抑える制御棒などに使われていた金属、それにケーブル類など、さまざまな物質が混ざり合っているとみられます。
 極めて強い放射線を出し続け容易に近づけないことから、その取り出しは「廃炉最大の難関」とされています。

 Q どのように取り出す計画なのか

 A 政府と東京電力は、すべての核燃料デブリを取り出して、2051年までに廃炉を完了するという工程表を示しています。
 当初の工程表では、核燃料デブリの取り出しは、事故から10年となる2021年までに着手し、その後10年から15年で、1号機から3号機のすべての核燃料デブリの取り出しを完了する計画でした。
 しかし、取り出しに使う予定だったロボットアームの開発が難航するなどして、計画はすでに3年遅れていて、本格的な取り出しの工法も決まっていません。
 現在の工程表からは、デブリの取り出しを完了する時期の目標は記載がなくなっています。

 Q 初めての取り出しはどのように行われたのか

 A どのように安全を確保しながら取り出すことができるのか検討するため、去年(2024年)初めて試験的な取り出しが行われました。
 8月に始める予定でしたが、着手直前に取り出し装置を押し込む5本のパイプの並べ方を間違えるミスで延期され、その後もカメラの映像が届かなくなるトラブルがあったものの、11月に大きさ5ミリほど、重さおよそ0.7グラムの核燃料デブリを採取しました。
 東京電力は性質や状態を分析して、本格的な取り出しの工法を検討するのに役立てたいとしています。
 ただ、核燃料デブリは、場所や号機によって性質や状態が大きく異なっていると推定されるため、ことし春にも2号機で2回目となる試験的な取り出しを行う計画で将来的には、1号機や3号機でも実施を検討することにしています。

 Q 核燃料デブリの分析作業とは

 A 核燃料デブリの分析は、国の研究機関の日本原子力研究開発機構を中心に去年11月から行われています。
 はじめに、茨城県大洗町にある研究施設で表面にどのような元素が分布しているかなどを見る「非破壊分析」が行われ、先月には、内部などを詳しく調べるため、さらに細かく砕いた上で大洗町の施設や兵庫県にある大型実験施設「SPring-8」など、5つの研究施設に分けられ詳しい分析が行われています。

 Q 何を調べているのか

 A 分析では、数十万倍の高倍率で観察できる電子顕微鏡を使って表面から出るX線を捉えることでウランなどの元素がどの部分に分布しているか調べたり、細断した内部を観察し、混ざり合った元素がどのような構造になっているか調べたりするほか、一部は溶かして液体にして放射性物質の種類ごとの濃度なども調べます。
 原子力機構によりますと、分析を通して、溶け落ちた核燃料のほかにどういった部材が混ざり合っているかや、その硬さ、粘りけといった性質や状態を明らかにすることで、核燃料デブリを取り出す際に切ったり砕いたりできるかや、どのような装置が必要か検討するための情報が得られるとしています。
 また、今後、再び核分裂反応が連鎖的に起きる臨界の状態になるリスクがどの程度あるかといった情報も得ることができるということで、核燃料デブリを取り出したり保管したりする際の安全対策の検討に役立つことが期待されるとしています。

 Q これまでの分析でわかったことは

 A これまでの分析では核燃料の材料であるウランなどの金属が検出されています。
 ほかにも、核分裂反応で生じるユウロピウムといった核燃料に由来する元素や、燃料を覆っていたカバーの材料であるジルコニウム、周辺の構造物の材質である鉄やクロム、ニッケルなどの金属も見つかっています。
 また、カルシウムやマグネシウムといった、もともと原子炉の中には存在しない元素も検出されています。
 こうした元素は観察する部分によって比率が異なっていて、ある部分ではウランなど燃料由来の成分が多く見られる一方で、逆に鉄やニッケルなどの金属が多く見られる場所もあります。

 Q これまでの分析結果から何が言えるのか

 A 分布のしかたについて原子力機構は、核燃料と周りの構造物が溶けて完全に混ざり合ったあとに固まったのではなく、先に溶けた核燃料に巻き込まれて落下した構造物が、完全に混ざり合う前に固まったことを示している可能性があると説明しています。
 その場合、場所ごとの性質や状態の違いが大きいということも考えられます。
 ただ、今回分析している核燃料デブリが少量であることから、全体の性質や状態を代表しているとは言えないとしていて、今後も多くのサンプルを採取して分析を重ね、情報を蓄積できることを期待したいとしています。
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