[2025_01_31_01]海底にならんだ「謎の巨大リング」の正体が判明、直径約20mの完全な円形で真ん中に“点”(NATIONAL_GEOGRAPHIC2025年1月31日)
 
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海底にならんだ「謎の巨大リング」の正体が判明、直径約20mの完全な円形で真ん中に“点”

 11:30
 当初は「一体何なのか、まったく見当がつきませんでした」、水深120m近い仏コルシカ島沖

水深120メートル近い地中海の海底。この一帯で、1300を超える謎のリングが発見された。(PHOTOGRAPH BY LAURENT BALLESTA)

 2011年9月中旬、海洋生物学者のクリスティーヌ・ペルジャン=マルティニと海洋学者で夫のジェラール・ペルジャンらは、地中海に浮かぶフランス領コルシカ島の沖、約20キロを航行中だった。ペルジャン夫妻たちは、そうした海底に生息する生き物の調査を試みていた。海上を進む船のスクリーンには予想通り、ぼやけた白黒の画像が延々と映し出された。砂、小さな岩、そしてまた砂―ところが突然、とても奇妙な画像が視界に飛び込んできた。

ギャラリー:「謎の巨大リング」に手つかずの生態系、地中海の海底に潜ってみた

 完全な円形をしたリングが、一つ、また一つと、いくつも続いている。どれも大きさはほぼ同じで、直径は20メートルほど。輪郭がはっきりしていて、驚くほど左右対称だ。さらに奇妙なことに、ほとんどのリングには、ちょうど真ん中に暗色の“点”がある。数十はありそうだ。

 「一体何なのか、まったく見当がつきませんでした」とペルジャン=マルティニは話す。動画を撮影したものの、視界が濁っていて、沈んだ貨物ではないという以上のことはわからなかった。

 熱水噴出孔によるクレーター? 特殊な地形? それとも……

 このリングの調査することになったローラン・バレスタは、海底探査の世界では、大胆な挑戦をすることで知られている。写真家、海洋生物学者、そして特殊環境でも潜ることのできるテクニカル・ダイバーでもある。修士号の取得の際、ペルジャン夫妻の下で学んでいたことがあり、二人とは接点があった。そのかつての恩師の論文を読み、心を奪われた。
 彼は、海底の熱水噴出孔によってできたクレーターか、特殊な地形によるものと推測したが、ペルジャン夫妻は、潜水艇による探査の結果から、未知の形状に成長するサンゴモ類(紅藻)ではないかと考えていた。
 バレスタは、同意を得てペルジャン夫妻のデータからリングの場所を特定し、謎を解明すべく彼らの調査を引き継いだ。

 驚きの調査結果とさらなる謎

 2020年7月、バレスタはチームを組む2人のダイバーと自社の調査船でリングの上に到着し、スキューバダイビングの装備を着け、明るい海の表層から下へ下へと泳いでいった。2分もしないうちに水深120メートル近くまで潜り、目的地に近づいた。
 バレスタは海底まで降り、リングの一つに近づいた。その中心部には、紅藻が大きなこぶを形成している。そこから少し下った先、中心から10メートルほどのところに、暗色の外側のリングがある。そのリングは、サンゴモ球と呼ばれる、ごつごつした固い小石ぐらいの大きさの藻類が集まってできているようだった。
 リングの構造を目の当たりにしたバレスタは、ペルジャン夫妻が正しかったことを悟った。「生き物だったのです」と彼は言う。
 ただ、なぜサンゴモ球がいくつもの完全な円形を作ったのかは、まだ説明がついていなかった。バレスタはもう少し時間をかけて調査する必要があると感じていたが、それには、深い海底に長期間滞在する手段が必要だった。

※ナショナル ジオグラフィック日本版2月号「海底の不思議なリング、正体が判明 仏コルシカ島沖」より抜粋。
文=ベロニク・グリーンウッド


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