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[2024_12_27_01]東海地震と富士山噴火の連動は国家喫緊の課題 「鎌田浩毅の役に立つ地学」(サンデー毎日2024年12月27日) | ![]() |
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参照元
16:11 被害総額220兆円が予想される南海トラフ巨大地震の発生が警戒されているが、同様に50年近く警戒されてきた東海地震が南海トラフ巨大地震に含まれる事実は意外に知られていない。東海地震が起きると東海地域から首都圏まで甚大な被害が出るだけでなく、日本最大の活火山である富士山の噴火を誘発する可能性がある。 南海トラフは静岡県沖から宮崎県沖まで続く水深4000メートルの海底にある凹地だが、北側には三つの「地震の巣」があり「震源域」と呼ばれている。それぞれ東海地震、東南海地震、南海地震を起こした場所で、一部は陸地にもさしかかる。 古文書からひもとくと、南海トラフ沿いに巨大地震と大津波が約100年おきに発生したことが分かっている。そして、3回に1回は東海、東南海、南海の三つの震源域が同時に活動する「連動型地震」で、次回はこの連動型地震の番に当たっており、総人口の約半数の6800万人が被災すると予測されている。 このうち、最も東で起きる東海地震は富士山の直下20キロメートルにあるマグマだまりを刺激する。実際、1707年には南海トラフ巨大地震の一つである「宝永地震」の49日後に富士山が大噴火し(「宝永噴火」と呼ばれる)、それ以来300年以上もマグマが地下でたまり続けている。 ◇「宝永」は三つ連動 南海トラフ巨大地震はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界が急激にずれることによって発生する。強い地震波を発生させるだけでなく、日本列島へのひずみのかかり方を劇的に変化させる。この変化が富士山のマグマだまりを膨張させる方向に働いた場合には、マグマだまり内で圧力が急に下がる。 その結果、マグマ中に5%ほど溶けている水が減圧によって急激に泡立ち水蒸気となる。「発泡」と呼ばれる現象で、炭酸飲料のビンを勢いよく振ると中の液体があふれるように、地上からのマグマの噴出を促す。逆に、地震の強い揺れがマグマだまりを急激に圧縮させた場合には、マグマ内部の圧力が増加することによって、マグマが地上へ向けて絞り出される。 こうしたマグマだまり周辺の地盤に対して、膨張もしくは圧縮を起こす急激な地殻変動は、現在「噴火スタンバイ状態」にある富士山の噴火を誘発する危険性をはらむ。宝永地震では東海、東南海、南海の三つの震源域がほぼ同時に(数十秒で)活動し、マグニチュード(M)9クラスの巨大地震となった。 発生時期が2035年±5年に予測されている南海トラフ巨大地震も同じ規模(M9.1)だが、重要なポイントは次回は東海地震がほぼ確実に起きることである。前回の1944年(昭和東南海地震)と46年(昭和南海地震)では東海地震の震源域だけが動かず、その分のエネルギーが地下でたまっているからだ(本連載の第16回を参照)。 南海トラフの東端にある「駿河トラフ」は、北方で上陸した後、活断層の「富士川河口断層帯」につながっている。そのわずか20キロメートル北に富士山頂があり、東海地震のエネルギーを伝えやすい状況にある。東海地震と富士山噴火の連動を国家喫緊の課題として早急に対策を行う必要がある。 ■人物略歴 かまた・ひろき 京都大学名誉教授・京都大学経営管理大学院客員教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。 |
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KEY_WORD:南海トラフ巨大地震_:HOUEI_:NANKAI1946_:TOUNANKAI_:火山_: | ![]() |
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