[2024_12_05_05]四国36万戸の大停電、操作ミスが起きた状況は北米で想定されていた 事故の背景に透ける一般送配電事業者間の連携不足 青柳聡史(日経クロステック2024年12月5日)
 
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四国36万戸の大停電、操作ミスが起きた状況は北米で想定されていた 事故の背景に透ける一般送配電事業者間の連携不足 青柳聡史

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 11月9日、四国エリアで過去最大となる36万戸の大停電が発生した。四国電力送配電は、関西電力送配電との認識の違いによって起きた「操作ミス」が原因として謝罪した。状況を一見すると「想定外」の事態にも感じられるが、電力システムの専門家は事前に想定できたという認識を示す。さらに停電が起きた背景には、一般送配電事業者間の連携不足が見え隠れする。

 秋の穏やかな土曜日の夜、四国の広い地域が突然漆黒の闇に包まれた。11日9日の20時22分に発生した大規模な停電は、瞬く間に36万5300戸の電力供給を絶ち、ニュース番組は次々と光を失っていく街の様子を、こぞって映し出していた。
 大規模停電は、基礎インフラである道路の信号や飛行場の誘導灯などの光も奪い、徳島県では暗くなった室内で2人が転倒し、病院へと搬送された。調整運転中だった伊方原発3号機は停電により外部電源を1系統しか確保できなくなり、独立した2系統を確保するという原子炉保安規定を一時満たせなくなった。停電は四国4県の広範囲に及んだが、復旧は徐々に進み、約1時間半後の21時49分、全面的に復旧した。
 四国送配電によると、36万5300戸という停電戸数は過去最大。停電戸数には一般家庭など低圧の需要家数をカウントしているが、四国エリアの低圧戸数は222万5000件なので、全体の約16%が停電したことになる。幸いにも深刻な人的被害は報告されていないが、停電が真夏や真冬だったらと考えると、看過できるものとは言い難い。
 四国送配電は3日後の11月12日に会見を開き、停電の原因は設備の故障ではなく操作ミスだったと謝罪した。具体的には、四国エリアと関西エリアをつなぐ連系線の調整機能を停止する際に、共同で連系線を運用する関西送配電と四国送配電との間に認識の差があり、誤った操作を行ったことが原因だったという。

 ただし「操作ミス」の一言で片付けられるほど、実際の状況は単純ではない。具体的な状況を時系列に沿って見ていきたい。

 本州とは交流と直流で連系

 今回の停電を引き起こしたとされる四国エリアの連系線は2系統あり、中国エリアとつながるのが本四連系線で、関西エリアとつながるのが阿南紀北直流幹線だ(図1)。
 本四連系線は瀬戸大橋を利用していて、送電容量120万kWが2回線、最大240万kWを送電できる。一方の阿南紀北直流幹線は、徳島県と和歌山県を隔てる紀伊水道を海底ケーブルでつなぐ。送電容量70万kWの2回線で、最大140万kWを送電できる。本四が通常の交流送電であるのに対し、阿南紀北は直流送電なのが大きな差だ。
 交流送電と直流送電との違いは、電気の流れを水に例えると分かりやすい。交流は2つの池(エリア)の水位が等しくなるまで自然に流れるイメージだが、直流は双方の水位に関係なくポンプで能動的に水を流すことができる。ポンプの出力を変えるのと同じように、直流では瞬時に送電量を変えることができるのも大きな特徴だ。また交流の連系線は「同期連系」とも呼ばれ、両エリアの電力の周波数と位相をそろえる(同期すると呼ばれる)ことが必要だが、直流連系は「非同期連系」とも呼ばれ同期が伴わない。この点も大きな違いだ。
(後略)
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