[2024_10_18_08]日本原電敦賀原発2号機新規制基準「不合格」をめぐる問題 7つの問題点(有識者会合の報告書を無視、活断層の定義は誤り、経理的基礎がない、東海第二の欠陥防潮堤等々)を指摘する 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2024年10月18日)
 
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日本原電敦賀原発2号機新規制基準「不合格」をめぐる問題 7つの問題点(有識者会合の報告書を無視、活断層の定義は誤り、経理的基礎がない、東海第二の欠陥防潮堤等々)を指摘する 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

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 原子力規制委員会(規制委)は8月28日の定例会合で、日本原子力発電(原電)敦賀発電所2号機(PWR、116万kW)の新規制基準適合性審査で「安全上重要な施設(原子炉建屋等)は将来活動する可能性のある断層等の露頭がないことを確認した地盤に設置する」との条件に適合しないことから「原子炉設置変更を許可しない」(すなわち再稼働不可)とする「審査書案」を了承し、パブリックコメント(パブコメ)が実施された。
 そのパブコメに送った意見をベースに、この審査書案の7つの問題点を指摘する。

 1.審査書案の位置づけが不明確−
 「具体的な記述がない、明確化して記載するべき」

 まず、この審査書の位置付けである。
 この審査書は「原子炉等規制法第2項の規定により準用する以下の規定に適合しているかどうかを審査した結果を取りまとめたものである。」とし、「本審査書の構成」では『「2(ローマ数字、以下同じ)耐震重要施設の地盤の変位(第3条第3項関係)」には、設置許可基準規則のうち設計基準対象施設の地盤に係る耐震重要施設の地盤の変位に係る規定への適合性に関する審査内容を示した。「3 審査結果」には、規制委員会としての結論を示した。』としている。
 このような位置付けで審査を行った結果が本書であるとして、この後の審査書の記述は事実上断層による地盤変異が生ずる可能性についての議論だけが記載されている。
 原子炉等規制法では、そのほかにも多くの項目があるが、それらについては審査は行われていない。
 地盤変異の可能性が否定できなければ、その後の審査は不要であるとの考え、または意味をなさないとの立場であると思われる。
 そのことについての判断としては正当であると思うが、そうした具体的な記述がないため、明確化して記載するべきであると考える。

 2.有識者会合の報告書を無視した原電−
 「浦底断層の認定、敷地内断層の活動の可能性」

 この原発については、2012年の炉規法改正による新規制基準の策定以前から多くの指摘がされてきた。
 特に浦底断層の認定、敷地内断層の活動の可能性は多くの地震学者や地質科学者が指摘してきたことで、今になって浮上したことではない。
 このうち問題となったK断層は後期更新世以降に活動した形跡がない「断層」とはいえないことは、2013年に原子力規制委員会の有識者会合の報告書において「原子炉建屋の直下に活断層が走っている可能性がある」とした時点で明白であった。

 日本原電は敦賀2号機の新規制基準適合性審査申請(2015年)を行うべきでなかった。また、規制委員会も、その申請を受理するべきではなかった。
 有識者会合の報告を無視して審査の申請書を提出したときから、今日に至るまで行われた審査会合及び現地調査等が、規制委員会が申請書を受理したために行われた。

 有識者会合の現地調査等で、事実上今回の審査書に記載された事項は結論が出ていることであり、改めて新知見が明確になって断層活動による地盤の変位の可能性が生じたわけではない。
 こうした有識者会合における結論と、今回の9年近くにわたり行われた審査において出された結論とは、何が異なるのか、または異ならないのかも合わせて審査書の中で具体的に言及するべきである。

 3.規制される活断層の定義は誤り−
 「国土地理院の定義では260万年以降が正しい」

 規制委が示す「将来活動する可能性のある断層等」は「後期更新世以降(約12〜13万年以降)の活動が否定できない断層等」としているが、これには科学的根拠がない。
 敦賀原発2号機に限らず、他の原発についても、以前は1〜5万年前以降としていた時期もあったし、現在でも40万年以降とする規定もある。
 現在、海洋の断層について調査を強化する動きが地震本部などで開始されているが、特に海底下の断層では、トレンチ調査もできない。

 国土地理院の定義では260万年以降の第四期における活動が認められれば活断層である。
 今回の敦賀原発では、12〜13万年の「境界線」前後の何処で動いたのかを細かく議論しようとしている。
 しかし本来は原発の耐震安全性を、できうる限り強化するために審査することが重要である。
 その観点に立つならば「将来活動する可能性のある断層等」については後期更新世以降よりもさらに遡り、国土地理院が定めている活断層とするべきである。

 4.本審査結果…『この原発が今後適合することはない』の恒久性について−さらに審査を求める行為を拒否することも審査書に明記すべき

 規制委員会はK断層は後期更新世以降の活動が否定できないこと及びK断層は2号炉原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できないことから、設置許可基準規則第3条第3項に適合しているとは認められないと判断した。
 したがって、本申請は、原子炉等規制法第43条の3の8第2項において準用する原子炉等規制法第43条の3の6第1項第4号に適合しているものとは認められないとの結論である。

 上記結論に達した以上、『この原発が今後適合することはない』と考えるべきだ。
 巨額の投資をしているからとか、新たな知見が見つかったなどとして審査を求めることは、大きな費用を追加投入することになるので厳しく批判されなければならない。
 敦賀原発2号機については、この状況においてはさらに審査を求める行為を拒否することも合わせて審査書に明記すべきである。

 5.経理的基礎の不存在について−「敦賀2号機の再稼働を前提とした維持管理費を電力3社(関西、中部、北陸)から調達できない」

 原電については、既に東海第二原発の再稼働を巡り「経理的基礎」についての審査が一度行われている。
 その中で、原電に経理的基礎がある根拠としているのは原電が建設している(審査段階では建設予定である)のは2014年5月20日付けの原電による申請に対する審査で、安全対策工事のうち防潮堤に関しての資金である1740億円についてのみである。
 この安全対策工事にかかる資金を原電が調達できる見込みがあるかどうかを確認しているにすぎない。

 これは、それ以外の経営上必要な費用については、東海第二と敦賀2号機の「維持管理費用」として調達できるからであり、これが土台になっていることが前提だった。
 ところが今回、審査結果として敦賀2号機の運転が不可能となることで、この土台が失われることが確定的になった。

 現時点では日本原電は、依然として敦賀2号機の再稼働を前提とした維持管理費を電力3社(関西、中部、北陸)から調達できるかの前提で経理的基礎はあると主張するのだろうが、それは虚飾と言うほかはなく、三電力の株主及び消費者にとっては、無駄な資金提供を原電に続けることとなる。
 このような不当な状況を回避するために、再び経理的基礎を有するかの審査が必要だ。

 6.東海第二原発の欠陥防潮堤−
 「日本原電の会社としての運営が危機的状況になっている」

 これに加えて、原電は現在、東海第二の防潮堤工事を進めているところだが、この工事に重大な欠陥があり防潮堤が完成できない状況にある。そのため1740億円をはるかに超える費用がかかることは間違いなく、先の経理的基礎が失われていると考えられる。

 敦賀2号機の運転ができない状況となったことから、将来的には東海第二の再稼働どころか、日本原電の会社としての運営が危機的状況になっている。
 そのことは東海第二の安全対策工事にも影響を及ぼすこととなるので、規制委は改めて東海第二の安全対策工事や防潮堤工事について、本当に竣工可能なのか、経理的基礎を改めて審査するべきだ。

 7.日本原電の電気料金収入の問題−「使えない設備の維持のために強制的に費用を負担させるのは不当であり、不正である」

 経理的基礎の喪失と同時に、原電の収入には大きな問題がある。
 2011年度以降2023年度までの電力収入は累計1兆5658億490万円に達している。
 これは発電など全くしていない2基の原発のために5電力会社が支出した金額だ。

 この資金は全て電力会社の電気代つまり消費者から集めた資金である。
 この資金は、原電の2基の原発を再稼働することでまかなうはずだった。
 そのうち敦賀原発2号機の再稼働ができなくなったことについて、原電はいかなる責任を負うのか、規制庁はヒアリングを行い、こうした問題について解明するべきである。

 特に、敦賀原発2号機の審査を更に継続しようとする計画であることを原電自らが主張し、さらに電力3社や経団連がそれを支援するなどとしているが、そのために更に巨額の維持管理費用を各電力会社の顧客は負担しなければならない。
 原発に拘泥し、使えない設備の維持のために強制的に費用を負担させるのは不当であり、不正であることを規制委は明確にするべきである。
             初出:「月刊たんぽぽニュース」10月号
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