[2002_04_16_01]「もし漁をしていたら・・・」 F16深浦沖墜落 現場は漁場の一等地 油流出、漁業者怒りと不安 大戸瀬漁協 強風の中 迅速対応 パイロット救助に活躍(東奥日報2002年4月16日)
 
重要箇所の抜粋

 「機体は頭からほぼ垂直に海に突っ込んだ」「船が現場で漁をしていたらと思うとぞっとする」「漁場の一等地。油流出がひどい。壊滅的な打撃にならないよう祈るだけ」ー。米軍三沢基地所属のF16戦闘機が15日、深浦町の千畳敷カブト岩沖合約200-300メートルに墜落した。美しい海岸線が売り物の観光地であり、主要漁場にもなっている海域への墜落事故に、町民や漁業者からは不安と怒りの声が上がっている。

 墜落現場は、大戸瀬漁協のまさに主要漁場。同日は風と波が強く、朝方出漁した船約20隻は午前9時ころには帰港していた。同漁協によると水深は20メートルほど。定置網、刺し網、底建網がびっしり入っている。機体は小型定置網のすぐ前に墜落し、底から6メートルほどの深さに張り巡らせてた底建網を直撃しているとみられる。
 救助に出た漁業者は「流出した油が500メートルほどの青い帯になっていた。油のにおいが強烈で、顔がひりひりするような感じもあった」と油の影響を話す。
 古川俊組合長(61)は「今年は不漁で、これからのホンマスやタイ、漁場のエゴノリ、モズクなどに期待していた。油のにおいで魚は網によりつかないだろうし、ノリ類も心配だ。明日は沖止め(休漁)し被害調査をする」と険しい表情で語った。さらに「パイロットを救助したのに、米軍から一言もない。はらわたが煮えくり返っている。誠意を尽くしてもらいたい。われわれは被害者だ」と語気を強めた。
 また、千畳敷で民宿を営む兼平敏読さん(54)は戦闘機の墜落を目撃。「ドンドンと二回低い音がしてから機体が水面に突っ込み水しぶきが上がった」と信じられないといった表情。他の民宿でも「事故が起きても今までは人ごとのように思っていたが、ただごとではない」「家に落ちたらたまらない」「もっと大きな事故も起きるのでは。何が原因か分からないと精神的に安心できない」と不安を募らせていた。

 大戸瀬漁協 強風の中 迅速対応 パイロット救助に活躍

 墜落したF16のパイロットは、現場から最も近い大戸瀬漁協(古川俊組合長)の迅速な対応によって救助された。墜落当時、現場海域は20メートル近い南西の強風が吹き、朝方出港した漁船も、強風で午前9時すぎには漁港に引き揚げたほど。
 午前11時半ごろ、漁協に一報を入れたのは漁協職員の田村啓介さん(27)。「車を運転中、すぐ脇の海に機体が落ちた。鈍い音がした。機体はすぐ海中に消えた」と振り返る。
 また、同漁協田野沢支所の吉田松男支所長(53)も支所から一部始終を目撃。「フラッシュのような光が走ったかと思うとパラシュートが開き、その先に人がぶら下がっていた。同時に残がいのようなものが2、3落ちた」と説明。すぐに電話機に飛びついた同支所の小林巨樹さん(26)は「パニック状態だったが千畳敷の方に落ち、人がいるようなので救助をお願いしたい、と話したと思う」と言う。
 古川組合長は、すぐ大型船11隻に出動命令をかけた。同40分には船が墜落現場を確認。付近を30分以上捜索し、同漁協所属の明神丸(山崎國隆船長)が沖合二千数百メートルでパイロットを船上へ引き揚げ、海上自衛隊のヘリコプターへ、その場で移された。
 「出動時点で、どこからも救助要請はなかったが、あの強風と波ではパイロットの命が危ないと判断した。みんなよくやった」と、人命第一に行動した組合員をねぎらった。

KEY_WORD:ROK_KIROKU_:米軍三沢基地_:F16_:墜落落下事故_: