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[2024_12_24_07]女川原発と島根原発に迫る大地動乱 半島部に建つ原発からの避難はとても困難 再稼働強行を強く批判し、運転停止と廃炉を求める (上) (2回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2024年12月24日) | ![]() |
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参照元
04:00 今年10月から12月にかけて、東日本では東北電力女川原発2号機が、西日本では中国電力島根原発2号機が、それぞれ再稼働した。 原子力関係者にとって沸騰水型軽水炉(BWR)の再稼働はいわば「悲願」である。 これまでは西日本で再稼働してきた原発が全て加圧水型軽水炉(PWR)だったが、東日本大震災後13年余を経て立て続けに東電福島第一原発と同型の沸騰水型軽水炉が再稼働したことで「大きく前進した」と考えている。 世界では圧倒的にPWRのシェアが大きく、BWRは少数派。前者は約300基に対して後者は約40基しかない。日本では東電が17基もBWRを建設したこともあり半々程度だった。 しかし東日本大震災以後、再稼働した12基は全てPWRで、現時点は12対2、新規制基準適合性審査を受けている原発を含めても16対11である。 言い換えるならばBWR型が再稼働しなければ、2030年に20から23%の電力を原発で作るという、第6次エネルギー基本計画の達成は到底不可能だ。 従って、BWR再稼働は国の政策でもあった。安全性などの考慮は最初から存在しないのである。 ★2024年能登半島地震の教訓は 今回再稼働した2つの原発には共通点がある。それは、半島部に建つ原発で、周辺住民の避難はとても困難だということだ。 ◎東北電力女川原発2号機 2024年11月15日に再稼働した。 津波対策として海抜29mの防潮堤を建設するなど、安全対策に巨額の投資をし、沸騰水型軽水炉として初めて再稼働した。 ◎中国電力島根原発2号機 2024年12月7日に原子炉を起動した。 福島第一原発事故の翌年に定期検査のために停止して以来、12年10カ月間止まっていた。地震や津波による重大事故を防ぐ安全対策工事を進め、11.9mの津波対策として15mの防潮堤を建設した。 半島部に建つ原発が、地震や津波でどのような被害を受けるか、そのことを示したのが能登半島に建つ北陸電力志賀原発だ。 2024年1月1日に発生した能登半島地震において、志賀原発周辺も震度7の大きな揺れに遭遇した。その影響で道路は寸断され、地盤が隆起したことで船舶の接岸も不可能になった港が多数生じた。 こうした現実を目の当たりにして、原子力防災の実効性に深刻な問題が生じたと誰もが思った。 ところが原子力規制委員会は、これについて「能登半島地震への対応に問題はない」と述べ、大幅な見直しにはならない考えを示した。 多数の家屋倒壊や道路寸断が発生したことを踏まえた見直しの必要性を問われても、「現在の指針や自治体が策定する地域防災計画で対応できる」と述べるだけだった。(東京新聞2024年1月17日『原子力災害対策指針を見直しへ…でも規制委は大幅変更を否定 能登半島地震で「避難の前提」総崩れになったのに』より) 能登半島の地形と地質から、こうした問題が生じることは分かっていた。 しかし4mも地盤が隆起したり、高規格の道路である「のと里山海道」が全面的に使えなくなる、能登空港へのアクセスが完全に遮断されるなどは想定もしていなかった。これらが原子力防災での避難の基幹施設だった。 加えて、21箇所設置されていた「屋内退避施設」のうち、6箇所が損害を受け、2箇所が破壊されて使用不能になった。 これは、原発から20km以上も離れたところで発生した地震の影響である。原発の直下で起きれば、これより遙かに多くの被害があったことは想像に難くない。 原子力規制委は課題として捉えたのか。そうではなかった。 地震と原発事故の「複合災害」に対する見解は『各地域の地域防災計画・避難計画においては、家屋倒壊が多数発生する場合には、地震に対する避難行動を最優先で行い、地方公共団体が開設する近隣の指定避難所で屋内退避するほか、当該指定避難所への屋内退避が困難な場合には、UPZ外に避難することとしていることから、複合災害時の基本的な対応は示されている。』というものだ。 施設が破壊され道路が寸断し、港も使えない。そんな現状は無視されたのだ。 ★女川原発の防災体制の問題点 女川原発の場合、原発が半島基部に建っている。さらに町の中心部は低い土地にあるため、津波により水没してしまう危険性が高い。 実際、2011年3月11日の東日本大震災では、低い地域が水没し、住民の多くは高台に避難し、原発も高台にあるため364名が原発に避難した。 周辺の道路が寸断され、物資が不足する厳しい状況であり、他に避難できるところがなかった。 原発は海抜14.8mに位置していたが、地震の衝撃で1m地盤沈下したところへ13mの津波が押し寄せた。 2号機の原子炉建屋が浸水し、熱交換器や冷却ポンプ室が水没した。 しかし非常用ディーゼル発電機と外部電源が一系統残っていたため、福島第一原発事故のような被害は免れた。 津波があと数メートル高かったら、福島第一原発と同じ運命をたどっていた可能性が高い。 女川原発の重大事故時の避難計画では、原則として船で避難した後、自治体が準備したバスなどで内陸部の避難所へ向うとされる。 天候状況などによってはヘリも活用することになっているという。津波に襲われて船で避難できるというのは、幻想に過ぎなかろう。 日本海溝沿いの地震は、2011年の東日本太平洋沖地震だけではない。 更に北側の千島列島にかけての海溝沿いや、海溝の先の「アウターライズ」と呼ばれる地震など、多数の地震の巣がある。 30m級の津波が来ないという保障などない。 ★島根原発の防災体制の問題点 島根原発の5キロ圏内人口は約1万人だが、30キロ圏内には約46万人が住む。 県庁所在地の松江市に加え鳥取県側にも境港市があるため、東海第二(92万人)、浜岡(90万人)に続き日本で三番目に人口が多い。 しかも半島の先端部に建つ原発で、アクセスが悪い。放射性物質の拡散状況によっては原発事故時の支援さえも難しい。 防災体制についても大きな問題がある。 島根県東部は2021年7月6〜12日にかけ梅雨前線の活発化で線状降水帯が発生、記録的大雨に見舞われた。 島根原発がある島根半島では土砂崩れや冠水が相次ぎ、海沿いに点在する集落をつなぐ道路は寸断され孤立する地区もあった。 原発の東13kmほどの松江市美保関町北浦地区にある「松江鹿島美保関線」脇の斜面が、延長30m、高さ25mにわたって崩落し、1カ月以上、通行止めが続いた。ここも重要な避難道路の一つだ。 能登半島では2024年1月1日に発生した地震に加え、9月の集中豪雨と線状降水帯の発生により土砂崩れが多発し、主要避難道路が寸断されたが、似たような状況は島根半島でも起きていた。 原発事故は地震と津波の発生がきっかけになる可能性は高い。日本ではこれまで原発が地震に遭遇した際、大きな損傷を受けたり、基準地震動を超えたりするケースが続出した。そして2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震で福島第一原発がレベル7の事故を起こした。 島根原発の近傍には、大きな活断層が存在していることが分かっている。 宍道(しんじ)断層だ。 この断層について中国電力は、島根原発建設時には活断層と考えていなかった。 3号機の調査で無いはずの断層が確認された。そのときは8kmとされていた。 変動地形学者の中田高氏や渡辺満久氏らが、この断層はもっと大きいと指摘していたが、設置許可時には原発に影響のない断層とされていた。 しかし研究者らによる宍道断層の調査が重ねられた結果、断層の規模がはるかに大きいことが明確になったことで8kmから10km、さらには22km(2008年3月中間報告書)と変転し、現在はこれが39kmの長さになり、それに合わせて基準地震動も820ガルにまで高くなっている。 中国電力と国の立地評価のいい加減さに呆れるばかりだが、宍道断層が実際に活動した場合、39km以内で活動する保障もない。 こうした「断層値切り」「過小評価」は何処の原発でも起きていたが、島根原発の場合は存在すら否定していたのだ。 こうした問題を抱えていながら再稼働を強行したことに対し強く批判し、運転停止と廃炉を求める。 (初出:2024年12月発行「月刊たんぽぽ舎ニュース」No348) |
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