[2024_11_22_01]能登半島地震の災害関連死は235人に 熊本地震の222人超える(NHK2024年11月22日)
 
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能登半島地震の災害関連死は235人に 熊本地震の222人超える

 20:40
 石川県内の3つの自治体は能登半島地震のあとに亡くなった15人について、新たに「災害関連死」と認定したと発表しました。これによって能登半島地震の災害関連死は235人となり、2016年に発生した熊本地震の222人を超えました。
 能登半島地震の災害関連死と新たに認定されたのは輪島市が6人。能登町が5人。穴水町が4人のあわせて15人です。
 いずれも今月13日に開かれた専門家による12回目の審査会で災害関連死と認定するよう答申が出され、それぞれの市と町が22日までに認定しました。
 これによって、能登半島地震の災害関連死は新潟県と富山県で亡くなった6人を含めて235人となり、2016年に発生した熊本地震の222人を超えました。
 2011年に発生した東日本大震災の後の災害での関連死の人数としては、最も多くなったとみられます。
 能登半島地震の死者の数はあわせて462人となり「災害関連死」が「直接死」の227人を上回る状況になっています。
 石川県内の自治体にはさらに200人ほどの遺族から申請が出されていて、審査が進むと能登半島地震の死者は今後も増える可能性があります。

 災害関連死とは

 災害関連死は、時間がたってから体調を崩すなど災害が原因で死亡したケースをさします。
 災害関連死かどうかは申請を受けてから審査を経て災害と死因に相当な関連があるとされた場合に認定されます。
 自治体ごとに判断され、全国一律の基準はありません。
 災害関連死に認定されると「災害弔慰金」が遺族に支給され、支給額は、生計を維持する人が亡くなった場合は500万円。そのほかの人が亡くなった場合は250万円です。
 災害関連死が初めて公的に認定されたのは1995年の阪神・淡路大震災とされ、900人以上にのぼりました。
 その後も関連死はあとをたたず、2011年の東日本大震災では3800人を超える人が認定されたほか、2016年の熊本地震では222人にのぼりました。
 また、2018年の西日本豪雨や2019年の東日本台風など、地震や津波以外の災害でも多くの人が災害関連死に認定されています。

  災害関連死で母親亡くした遺族「対策徹底を」

 能登半島地震の災害関連死で家族を亡くした遺族は、災害関連死を防ぐ対策を徹底してほしいと訴えています。
 輪島市の森田としみさん(55)は、能登半島地震の発生から3日がたったことし1月4日、市内の特別養護老人ホームに入所していた母親の高山君子さん(83)を肺炎で亡くしました。
 母親は7年ほど前に発症した脳出血の後遺症で体にまひが残り寝たきりの生活でしたが、会話もできる状況で元気だったといいます。
 しかし1月1日の地震の影響で施設では電気や水道を使うことができなくなり、母親は体調が悪化して死亡しました。
 森田さんも地震で自宅が全壊し車中泊をしていたところ、母親の容体が悪いと連絡を受け施設に車で向かいました。
 渋滞がひどく途中から歩くなどしておよそ4時間かけて施設にたどりつきましたが、到着の20分ほど前に母親は亡くなっていたといいます。
 君子さんの死について輪島市は、災害との間に相当程度の関連が認められるとしてことし6月、災害関連死と認定しました。

 早く支援があれば…

 森田さんによりますと母親が亡くなった当時、施設では断水や停電が続いていて、数人の高齢者が入っていた1つの部屋に石油ストーブは一つという状況だったということです。
 施設は発災直後の厳しい状況の中で毛布を重ねてあたたかくしたりおむつの交換をして清潔を保ってくれたりするなど、できるかぎりの対応をしてくれたと感じています。
 しかし、母親が亡くなったあと、施設に入所していた高齢者は行政の支援を受けて医療機関や別の施設に移す対応がとられたということで、もっと早く支援が届いていれば死は防ぐことができたのではないかと思っています。
 森田さんは「今後の災害に備えて高齢者が避難できる態勢を整備するなど対策を徹底し、助けることができる命を守ってほしいです」と話していました。

 認定申請も遺族の負担に

 災害関連死の認定に至る手続きも遺族の負担になっています。
 森田さんは当初、災害関連死の認定に遺族の申請が必要であることを知らず報道を通じて把握したということで、遺族の中には災害関連死の制度を知らずに申請がされていないケースがあるのではないかと考えています。
 また、大切な家族の命を失った遺族にとって申請を行うことは簡単ではありませんでした。
 森田さんはことし1月、自分が避難生活を送っていた輪島市にある中学校の校舎で、申請に必要な「経緯書」と呼ばれる書類に母親が亡くなった経緯などをまとめました。
 しかし、母親の命を守ることができなかったと自分を責める気持ちも強く、精神的にも負担が大きかったと話します。
 森田さんは「母親はつらかったんだろうな、息が苦しかったんだろうなと思い起こすことは遺族として苦しいですが、地震によって命が奪われたと認めてほしいという思いで災害関連死の申請をしました。災害関連死で亡くなるのは母だけで終わりにしてほしい」と話していました。

 専門家「状況に合わせた支援や対策を」

 専門家は、災害関連死を防ぐために行政などが被災者の状況に合わせた支援や対策に取り組むことが重要だと指摘します。
 災害関連死が増えていることについて、東日本大震災では関連死の審査会の委員も務めた在間文康弁護士は次のように指摘しています。
 「避難生活が非常に長期にわたるなど被災者の生活環境の変化が大きく、通常の生活を取り戻すまでに長い時間がかかっている。東日本大震災も似たような状況ではあったが、それに匹敵するような状況に置かれている」

 行政だけでなく専門家やNPOなども連携を

 石川県によりますと県内に設置されている1次避難所と2次避難所では、22日午後2時の時点で能登半島地震の被災者あわせて107人が避難生活を続けています。
 在間弁護士は本格的な冬を前に避難所での寒さへの対策など、災害関連死を防ぐ対策を改めて徹底する必要があるとしています。
 そのうえで「災害関連死を防ぐ観点では人に着目した支援が必要で、お金や生活、家族、仕事の問題などがいろいろ組み合わさり、人によって状況が違ってくる。行政だけでなく専門家やNPOなどが有機的に連携し、人にあった支援をしていくことが非常に効果のある方向性なのではないか」と話しています。

 遺族の負担を減らすには

 また、災害関連死の認定に至るまでの遺族の負担について在間弁護士は「災害のあとに家族を亡くされた遺族は自責と後悔の思いがあり、資料を集めたり経緯書を作成したりするなど災害関連死の申請そのものに相当なハードルがある」と指摘しています。
 そのうえで「災害関連死を防ぐためには今後どういうことをすればいいのか。災害関連死の認定は社会にとっても非常に大きな教訓を示してもらうことになる。申請書をもっとシンプルに『申請するだけ』という形にして、それを受け付けたうえで行政側が事実や経緯の調査を寄り添いながら一緒に行うやり方も考えられる」と話していました。

 林官房長官「被害の甚大さを痛感」

 林官房長官は臨時閣議のあとの記者会見で「改めて今回の災害の被害の甚大さを痛感している。頻発化や激甚化する災害に対し事前防災を徹底して人命最優先の防災立国を構築するため、『防災庁』の設置に向けた準備や避難所環境の抜本的改善などの取り組みを着実に進めていきたい」と述べました。
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