[2022_03_30_05]丸い地形はクレーター?(島村英紀2022年3月30日) |
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中国北東部の山の中で世界一大きなクレーターが発見された。直径は1.85キロ。発見地の名前を取って「依蘭(いらん)クレーター」と名付けられた。 いままで最大のものとされてきたのは、米国・アリゾナ州の「バリンジャー・クレーター」で、直径1.2キロメートルだった。今から約5万年前に落ちてきた隕石によって作られたもので、深さ200メートル。クレーターを取り囲む周壁の高さは30メートルある。この直径でも十分大きい、見渡す限りが丸い大きなクレーターだ。 中国で新たに見つかったクレーターは、4万6000〜5万3000年前に作られた。後期旧石器時代だ。米国のクレーターは約5万年前に作られたので、ほぼ同時代である。 ともに、これだけの凹みを作るだけに、すさまじい衝突だったに違いない。これからも、地球のどこかに隕石が落ちてクレーターを作ることがある可能性は大きい。 ところで日本にもクレーターがないわけではない。長野県飯田市の南アルプスにある御池山(おいけやま)クレーターは小型で直径900メートルながら、立派なクレーターだ。 火山が多くカルデラや火口が多い日本列島では丸いものがクレーターとは限らない。しかも降水による浸食が盛んな日本ではクレーターがあっても痕跡が残りづらい。 香川・高松市仏生にある緩やかな凹地は「高松クレーター」と呼ばれていたが、近年、1400万年前のカルデラ跡だと判明した。つまりクレーターではなくて、火山起源だったわけだ。 逆のこともある。当初は、多くの地質学者はバリンジャー・クレーターが火山の火口であると認定していた。 クレーターかどうかを決定するのは、岩に溶けて再結晶化した痕跡が見られることや、粉々になった衝撃石英が含まれていることだ。いずれにせよ、近代的な解析が必要になる。 秋田・青森の県境にある十和田湖は丸い。周長は46キロメートル。面積は日本で12番目。かつて、丸いがゆえにクレーターかも、という説もあったが、このたび秋田県と青森県が火口噴火の対応策を決めた。 想定される火口は、半径3.4キロメートルの圏内に設定されている。圏内には約200人が住む。火口の想定範囲をさらに4キロメートル外側まで広げると約350人だ。 だが、直近の噴火は平安時代の西暦915年で、日本史上最大級の噴火だった。この規模の噴火が起きたら約34万人が避難対象になる。十和田湖は1000〜3000年ごとに噴火を繰り返している。将来いつ噴火してもおかしくはない。 今回は危険度を示すレベル指標を5段階ではなく3段階にして引き上げやすくした。十和田湖は小規模な噴火をしても住民の生命に危険が及ぶ可能性があるためだ。レベル2とレベル3は、レベル引き下げに限って発令される。特別な体制だ。 2018年には噴火被害を予想したハザードマップを作って配布した。秋田県は最寄りの国道を使って火口から避難する経路も示した。 十和田湖は怖い火山のひとつなのである。 |
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