| [2025_12_31_02]地球の「準衛星」を発見、実は60年前から存在 どこから来た?(ナショナル ジオグラフィック2025年12月31日) |
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05:00 太陽系にわくわくするようなニュースが飛び込んできた。学術誌「Research Notes of the AAS」に先ごろ発表された論文によると、ビルほどの大きさの謎の小惑星が、地球と並走して太陽の周りを回っていることが分かったのだ。PN7と名付けられたこの天体は、2025年の夏まで天文学者も知らなかったが、60年ほど前から「準衛星」としてひそかに地球に寄り添っていた。 米メリーランド大学の天文学者であるベン・シャーキー氏がPN7について最初に聞いたときに思ったのは「また見つかったか、クールだな」。というのも、地球の近くには衛星のような小さな天体が常にあり、PN7はその最新の発見にすぎないからだ。 地球にはPN7のような準衛星が他にもある。これらの準衛星は実際には太陽の周りを回っているのだが、地球とほぼ同じ軌道と公転周期を持つため、あたかも地球の周りを回っているかのように見える。 準衛星に似た天体には「ミニムーン」もある。こちらは実際に地球の重力に捕らえられ、一時的に地球の周りを回ってから脱出する。 準衛星もミニムーンも、地球の唯一の衛星として宝石のように夜空に輝く神秘的な月とは比べものにならないほど小さい。そのためどちらも、暗闇の中で高速で動く小惑星が反射するかすかな太陽光を捉える強力な望遠鏡でないと見えない。それでも、こうした天体が新たに発見されるたびに、「地球には、私たちが思っている以上にたくさんの『月』がある」といううれしい事実を思い出させてくれる。 「私たちは普段、太陽系のことを、整然とした変わらないシステムのように考えています。ときどき発見される準衛星やミニムーンは、実際にはそうではないことを実感させてくれます」とシャーキー氏は言う。 準衛星とミニムーンとは何か? 太陽系で準衛星を持つ惑星は地球だけではない。天文学者たちは2002年に、金星の周囲で最初の準衛星を発見した。今回のPN7の発見によって、地球の既知の準衛星は7個になった(見つかっていない準衛星はもっとありそうだ)。 シャーキー氏によると、準衛星は、重力的な偶然によって地球と軌道を共有したり出ていったりすることがあり、地球の重力の影響もわずかに受けているという。これまでに見つかっている準衛星の大きさは9mから300mまで幅がある。今のところPN7は最小クラスである可能性が高い。 PN7は2025年の8月下旬にハワイのパンスターズ天文台によって発見されたが、地球と同期したのは、人類が初めて月に降り立つ前の1960年代半ばだったと考えられている。PN7は2083年に太陽の周りを回る別の軌道に移行すると科学者たちは予測している。同じくパンスターズ天文台によって2016年に発見されたカモオアレワという準衛星は、約1世紀にわたってこの状態を保っていて、今後300年間は同じ状態を維持すると見られている。 ミニムーンも重力的な偶然の産物だが、実際に地球の重力に捕らえられている点で準衛星とは異なる。ミニムーンが地球の周りを回るのは通常は1年未満だ。その軌道は非常に不安定で、簡単に脱出してしまう。天文学者がこれまでに観測したミニムーンは5個で、2024年に発見されたスクールバスほどの大きさの最新のミニムーンは、わずか2カ月で地球から飛び去っていった。 ミニムーンのほとんどは「非常に小さく、岩ぐらいの大きさ」なので、検出するのは難しいとフィンランド、トゥルク大学の天文学者のグリゴリ・フェドレツ氏は言う。現時点で地球の周囲にあるミニムーンは知られていないが、フェドレツ氏の分析によれば、地球には常に数m程度の大きさのミニムーンが1個はあるという。同じくらいの大きさのミニムーンが6個あるかもしれないとする別の分析もある。 そもそも衛星とは何なのか? 岩をミニチュアの衛星と呼ぶのは無理があるように思えるかもしれない。同じことは、観覧車ほどの大きさのカモオアレワのような小さな準衛星にも言える。実は、天文学者たちは、衛星のようにふるまう天体を分類する公式なルールを持っていないのだ。 例えば2018年には、ある科学者チームが、月とともに地球の周りを回る宇宙塵の雲「ゴーストムーン(幽霊衛星)」を2個発見したと報告した。それぞれの雲が多数の粒子からできているなら、「その雲は1個のゴーストムーンと呼ぶべきなのでしょうか、それとも10万個の衛星と呼ぶべきなのでしょうか?」とシャーキー氏は問いかける。 準衛星やミニムーンを研究している同僚たちをうらやましく思うことがあると言うのは、米惑星科学研究所の惑星科学者であるキャット・ボルク氏だ。「私の研究対象は海王星以遠の小天体で、公転周期が非常に長いので、私が生きている間には太陽の周りを1周すらしないでしょう」。これに対して、準衛星やミニムーンの旅ははるかに短い時間スケールで進行するので、「軌道力学の楽しい実例」を見せてくれると氏は言う。 ミニムーンや準衛星はどこから来たのか? シャーキー氏によると、科学者たちは、地球を時折訪れるこうした天体の起源を突き止めようとしているところだ。 第1の可能性は地球近傍小惑星だ。かつては火星と木星の間の小惑星帯にあったが、木星の重力によって太陽系の内側へと押しやられてきた天体だ。 第2の可能性は、宇宙空間を飛んできた小惑星に衝突されて飛散した月の破片だ。シャーキー氏らが準衛星カモオアレワを調べたところ、その組成は「私たちがこれまでに見てきたどの小惑星よりも月に近く」、典型的な地球近傍小惑星に比べて風化が進み、太陽に焼かれていることが分かった(2024年のミニムーンからも、月に由来している証拠が見つかっている)。 カモオアレワの本格的な探査はすでに進行中であり、その起源の特定に役立つ可能性がある。中国が2025年の春に打ち上げた探査機は2026年の夏にカモオアレワに到達する予定で、準衛星の表面から岩石の破片を採取して地球に持ち帰り、科学者が分析することになっている。 第3の可能性は、太陽系の初期の激動の時代に地球の近くで形成された古い小惑星群の最後の生き残りだ。シャーキー氏は、正解は1つではないかもしれないと考えている。地球の過去、現在、未来の「第2の月」たちは、この3つの可能性のどれにでもあてはまり得る。 地球の「衛星」は増えてゆく 天文学者たちによると、望遠鏡の技術がPN7のような小さな天体を発見できるレベルに到達したのはつい最近のことであり、強力な観測装置、特に新しいベラ・C・ルービン天文台が、次にどんな「月のような」天体を発見するのかを、彼らは楽しみにしている。 かつて天体力学は地球を宇宙の中心から追い落としたが、今日の科学者が準衛星やミニムーンをいくつ発見しても、コペルニクス的転回が起こるわけではない。しかしミニムーンは、宇宙が常に動いていること、重力はこんなに身近な場所でも静かにたゆまず天体の配置を変えていること、そして、人類がその変化を捉えられるようになったのは比較的最近であることを思い出させてくれる。 フェドレツ氏は、1つだけ変わりそうもないことがあると言う。それは地球が今後、重力の少々の乱れでは飛び去っていかないような本物の衛星をもう1つ捉えることは永久にないことだ。そのためには惑星サイズの巨大な天体と接近遭遇する必要があり、「太陽系の歴史上、それはもう不可能なのです」と氏は言う。 けれども未来は、PN7のような旅の仲間で溢れかえっているだろう。その1つひとつが、太陽系で衛星を1つしか持っていない唯一の惑星である地球の孤独を癒やしてくれるのだ。 文=Marina Koren/訳=三枝小夜子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2025年11月20日公開) |
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