[2024_11_29_03]電気料金値上げ招く、国民民主・玉木氏の非現実的な「現実的な政策」(ヤフー_志葉玲2024年11月29日)
 
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電気料金値上げ招く、国民民主・玉木氏の非現実的な「現実的な政策」

 11:50
 国民民主党代表の玉木雄一郎氏は同党の幹部らと共に今月27日、石破茂首相を訪問し、政府が策定する次期エネルギー基本計画に原発新増設を盛り込むこと等を求める要望書を手渡した。これについて、玉木氏は自身のX(旧ツイッター)でも報告、原発推進の国民民主党の政策を「現実的なエネルギー政策」だとし、「安価で安定的な電力供給がなければ経済成長も賃上げもできません」と訴えた。だが、こうした主張は大きな矛盾があり、実際には、実質的な電気料金の値上げを招く可能性が高い。

〇原発の電気は安くない

 先に行われた衆院選の公約において、自民党ですら原発(従来型)の新増設については明記しなかっただけに、国民民主党の原発への執着ぶりは、各党の中でも群を抜いていると言える。それは、国民民主党が電力総連や電機連合など、原発に関連した産業別労働組合から支援を受けており、こうした労組の組織内議員も党内に抱えていることも無関係ではないのだろうが、いずれにせよ、原発が「安価で安定的な電力」だという類の主張は、控えめに言っても「周回遅れ」であり、よりはっきり言えば、「デマ」だと唾棄されるべきものだ。
 原発は競争力において、太陽光や風力に太刀打ちできないのが、近年の厳然たる事実である。世界的な総合情報サービス会社ブルームバーグが各発電方式別に発電のコスト(均等化発電原価)を比較しているが、それによると、世界平均での新設の風力や太陽光のコストは、原発のそれと比較して、3〜6倍も安いとのことだ。

〇原発推進のための負担増

 原発新増設のコスト高の理由としては、莫大な安全対策費に加え、建設計画が遅延することが多々あり、それによるコストが増大する等の問題がある。長期的なコストでは、運転を終えた原発の廃炉にかかるコスト、放射能廃棄物の処分のためのコストも莫大だ。だからこそ、玉木氏ら国民民主党は「費用回収のための予見性確保及びファイナンスなどの事業環境の整備を行うこと」を求めているのだろうが、それはあくまで原発利権を持つ側の論理であり、それ以外の大多数の人々にとっては負担増となる。
 実際、原発の新増設のための負担増が、今、まさに画策されているところだ。経産省は、原発の建設費を電気料金に上乗せする新制度(RABモデル)の導入を検討しているのだという。このRABモデルの問題点として、大島堅一教授(龍谷大学政策学部)は、

・RABモデルの対象となる電源(原発+火力?)の特別扱い、これらの電源を持つ事業者に独占的地位を与える
・多額の費用を、電力消費者(にもなっていない一般国民)に、建設期間中から(発電前から)転嫁
・一般市民にリスクを転嫁

 などを指摘している。

〇原発では電力需要を補えない

 もう一つの論点、「安定的な電力の供給」であるが、こちらも原発は分が悪い。いよいよ地球温暖化が猛暑や豪雨等の異常気象というかたちで、その猛威を振るい始めた昨今、温暖化の主要な原因である二酸化炭素を大量に排出する火力発電、とりわけ石炭火力発電は早急に停止していく必要がある。だが、建設地となる自治体の合意形成や建設自体に時間のかかる原発では、あまりにスピード感が無く、火力に代わる電力源となることは非現実的だ*。

*昨年、経産省が公表したデータで、全電源の内、原発が占める割合はたったの5.6%。福島第一原発事故以前の、日本の原発の全盛期でも全体の3割程度だった。

 その点、再生可能エネルギーは極めて迅速に新設していくことができる。山林を破壊してのメガソーラーは自然保護の観点から規制すべきであろうが、農地と共存するかたちでのソーラーシェアリング(営農型発電)は、太陽光パネルを設置できる面積の広さ、農家の収入を増やし、食料自給率の維持・向上にもつながるなど、そのポテンシャルは極めて大きい。再生可能エネルギーの弱点とされてきた「天候次第の不安定さ」も大型蓄電施設の活用等で需給バランスを調整できるようになった。

〇国民民主党の政策は本当に「国民のため」か?

 なお、国民民主党は、原発推進の口実に「脱炭素」をあげながら、一方で火力発電の延命も主張している。それは「火力発電の高効率化や、低炭素化、炭素貯留の促進」というものであり、やはり政府与党や大手電力会社に同調した政策であるが、これらは、脱炭素の効果が乏しく、技術的にもコスト的にも課題がある。
 また、火力発電のための化石燃料(石油、ガス、石炭)の輸入のために年間20兆〜35兆円もの国富を海外に流出させてしまっていることに、これまで火力発電を推進してきた経産省ですら危機感をもっている状況だ。とりわけ2022年以降、電力大手は電気料金の値上げを繰り返しているが、その原因も「燃料費の高騰」であり、それはウクライナ侵攻や中東情勢による変動だけでなく、世界的に化石燃料への上流投資(探鉱・開発・生産段階への投資)が減少していることも大きい。国際経済の構造変化の方向性から言って、海外の資源に依存した火力発電を主軸とする日本経済の在り方は今後ますます厳しいものなることは避けられないであろう。
 先の衆院選で自公が少数与党に転落したことで、国民民主党がキャスティング・ボートを握るかのような動きをしているが、はたして、その政策が国民全体の利益となるものなのか、はたまたは利権構造の枠の中にあるものなのか、しっかりと監視していく必要があるだろう。

(了)
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