[2024_11_27_02]島根原発2号機再稼働 「安い電源」疑問の声も 連載「再稼働秒読み、島根原発2号機 残る課題」(3)(中国新聞2024年11月27日)
 
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島根原発2号機再稼働 「安い電源」疑問の声も 連載「再稼働秒読み、島根原発2号機 残る課題」(3)

 22:10
 石炭火力の1.2トンに対して原発は11グラム…。
 一般家庭が1年間に使う電気を生むのに必要な燃料を示す電気事業連合会のデータだ。中国電力は島根原発(松江市)のパンフレットに引用するなどして「石炭の約10万分の1」と強調してきた。
 島根原発2号機(出力82万kw)の原子炉が12月7日に起動し、発電が軌道に乗れば火力発電の燃料は減る。
 中国電力は収支改善の効果を2024年度末までの約3カ月間で110億円程度とはじく。2025年度以降は年400億円規模とみる。中川賢剛社長は「原発は燃料費が安く、価格変動のリスクも低い」と説明する。
 一方、再稼働に至るまでの工事費は大きく膨らんだ。東京電力福島第一原発の事故を機に、新規制基準に基づく安全対策工事を進め、費用は建設中の3号機(137万3千キロワット)を含めて9千億円程度。今後建設するテロ対策の特定重大事故等対処施設が加われば1兆円を超える可能性がある。
  (中略)
 原発のコストに詳しい龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「設備投資や維持に費用がかかり、燃料代だけを見て『原発は安い』と言っても意味がない。海外では再生可能エネルギーと蓄電池を主な電源にしようとする動きもある」と指摘する。中国電力は「原発は長期運転すれば十分に投資を回収できる」と説明する。
 中国電力はさらに、建設中の島根3号機を2030年度までに稼働する構えだ。ただ、人口が減る中で、将来の電力需要を的確に見通すのは容易ではない。中国電力と取引がある企業の幹部は「3号機を動かすと燃料の削減効果は高まるが、電力の売り先確保という課題に直面する」とみる。
  (中略)
 電力需要が不透明な中で、島根3号機は4月、二酸化炭素の削減に貢献する発電所の新設や更新を後押しする新制度「長期脱炭素電源オークション」の対象施設に決まった。
 施設の建設費や人件費に関わる固定費分の収入が原則20年間保証される。
 財源は電力小売り各社からの拠出金で、消費者が電気料金を通じて負担する形になる。
 中国電力はオークションに参加した理由を「投資回収の確実性を高めるため」とする。新制度で受け取る金額は明らかにしていない。
 電力の安定供給や脱炭素のために原発は必要と説明する中国電力。
 安全を最優先に収益性を保てるかどうかが問われ続ける。
                   (村上和生、榎本直樹)
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