[2024_03_07_08]処理水放出は科学的な教育を「汚染水」授業に懸念、福島県議会で議論 意見書に反対要請も(産経新聞2024年3月7日)
 
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処理水放出は科学的な教育を「汚染水」授業に懸念、福島県議会で議論 意見書に反対要請も

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 東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を巡り、福島県議会で科学的根拠に基づく教育の実施を求める意見書が審議されている。意見書を提出した自民党会派には、日本教職員組合(日教組)の全国集会で処理水について「汚染水」と表現する授業の事例が報告されたことへの危機感がある。一方、意見書に対しては処理水放出に反対を唱える人々らが採択の反対を要請する事態となっている。

 「汚染水の放出強行」授業に危機感

 意見書は今月5日に県議会常任委員会で審査され、4会派のうち共産党会派だけが否決する意向を明らかにした。18日に同委で、19日に本会議でそれぞれ採決を予定している。
 処理水の教育については日教組が1月に札幌市で開いた教育研究全国集会(教研集会)で神奈川県の中学教員が授業実践例を発表し、福島の原発事故を巡って「日本政府は何をしようとしているのか」との表題で「汚染水の放出を強行」などと記載した経緯がある。
 こうした教育事例に対して意見書は「科学的根拠もないまま、処理水を『核汚染水』と称して虚偽の情報を世界中へ発信している中国と同様であると言わざるを得ない」と危機感を示し、「科学的な根拠に基づいた正確な情報による適切な教育が行われるべき」と強調した。政府に対して、文部科学省の放射線副読本の活用などを全国の教育委員会に促すように求める内容になっている。

 「放射能安全を押し付けるな」と反対も…

 一方、「海洋放出の是非についてはもっと議論が必要」として意見書の取り下げを求める動きもある。処理水放出に反対する人々は4日付で県議会各会派に対し、要請書を提出したという。要請書には「放射性物質の海洋放出は仕方がないとする社会で、子供は自らの命や健康を守ることはできず、子供に無用な被ばくを強いていることになる」と盛り込んだ。
 意見書の採択への反対を呼び掛ける原発事故被害者団体連絡会の大河原さき事務局長は、産経新聞の取材に「(安全基準に合致するとしている)国際原子力機関(IAEA)は原子力推進機関で、低線量(被ばく)でも生物に対する影響があると思う。これ以上地球を汚したくない。子供たちに『放射能安全神話』を押し付けないでほしい」と主張した。
 処理水の海洋放出計画についてIAEAは昨年7月、「国際的な安全基準に合致」し、人や環境への影響は「無視できるほど」とする調査報告書を公表。今年1月30日に公表した報告書でも処理水の安全性について「国際安全基準の要求事項と合致しない点は確認されなかった」と結論付けている。(奥原慎平)
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