[2024_01_26_05]アイスランドでまた「火山噴火」 かつて1日あたり180億円の損失、世界的偏西風の影響で懸念される航空便への影響 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その526 島村英紀(地球物理学者)(島村英紀2024年1月26日)
 
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アイスランドでまた「火山噴火」 かつて1日あたり180億円の損失、世界的偏西風の影響で懸念される航空便への影響 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その526 島村英紀(地球物理学者)

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 アイスランドで12月に続いて、また噴火があった。
 現場は人口約4000人のグリンダビークの町からへ約3キロ付近で12月と同じ場所だ。溶岩が噴出する地面の割れ目は約4キロにわたる。
 日本に比べて20分の1しかいないアイスランド気象庁ではてんてこまいに違いない。
 昨年12月の噴火のあと、町の北側では溶岩流を防ぐ防護壁の建設が急いで進められていた。噴火の発生から24時間以内に溶岩流が町に到達するという当局の見方を伝え、住宅などへの被害が懸念されていた。
 当局によると、今回の噴火の一部は防護壁よりも町に近いところで起きたとのことで、14日午後にはおよそ900メートル離れたグリンダビークの町に溶岩流が到達し、住宅が燃える被害が出ている。
 防護壁は岩や石ではなく、比重が小さくても温度が低い海水を使うほうが効率的だということを1973年ヘイマエイ島の噴火から学んだものだ。
 アイスランドはヨーロッパでは珍しい世界有数の火山国で33の活火山を持つ。
 ちなみに日本ではその3倍以上の110ある。
 宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』は人工的に火山の噴火を起こすフィクションだ。地域を暖めて冷害を救うために噴火が使われる。
 人間の手で噴火を起こすことは実際には不可能だと考えられていたが、アイスランドでマグマ(溶けた溶岩)に穴をあけて実際に噴火を起こした。
 アイスランド北東部のクラフラ。火山地帯で地熱を利用するためのボーリングを行っていたときに、知られていなかった地下のマグマだまりを偶然掘り当てたものだ。
 火山の災害にはいろんなものがある。火山の近くで恐ろしいものは火砕流や溶岩流だが遠くで悪さを発揮したのは降灰だった。
 2010年の噴火では火山灰がヨーロッパ上空の広い範囲に広がり、各地の空港で合わせて10万便以上が欠航した。これまでのところ、今回の噴火による航空便への影響は幸い出ていないが、いつ出るかはわからない。
 世界的な偏西風の影響から航空便に影響が出る可能性が心配されている。今回の噴火でも現在、この影響は出ていない。
 近年のアイスランドでの噴火で世界的な大問題になったのは10年に起きたエイヤフィヤトラヨークトルの噴火だ。
 エイヤフィヤトラヨークトルとは、アイスランド南部に広くある氷河の底にある氷底火山だ。
 この噴火の影響はヨーロッパ全域に及び、1日に2万便という大量の航空機が発着できなくなった。
 航空会社の損失は1日あたり約180億円に達した。この影響は日本にまで及んだ。日本を発着する多くのヨーロッパ便が止まって日本に帰れなくなった。
 (島村英紀さんのHP http://shima3.fc2web.com/
 「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より 1月26日の記事)

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