![]() |
![]() |
[2020_01_18_08]決定要旨 【主文】【司法審査の在り方】【地震に対する安全性】【火山事象の影響による危険性】【保全の必要性および担保の要否】森一岳裁判長の横顔 民事訴訟のベテラン 今月退官(東奥日報2020年1月18日) | ![]() |
![]() |
四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた17日の広島高裁の決定要旨は次の通り。
【主文】 第一審判決の言い渡しまで、伊方3号機を運転してはならない。 【司法審査の在り方】 伊方原発から約三十数〜四十数キロの距離に住む抗告人らは、放射性物質が放出される事故が起きた際、重大な被害を受けると想定される地域に住む者といえる。そのため、被害を受ける具体的な危険がないことは四国電が立証する必要がある。新規制基準に不合理な点がなく、伊方原発が審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点がないと示すことで立証できる。 【地震に対する安全性】 伊方原発近くの中央構造線断層帯の震源断層ついて、四国電は不確かさを考慮して基準地震動を策定しているが、地震動評価でその影響はなく、規制委の判断が不合理とは言えない。 四国電は詳細な海上音波探査をし、佐田岬半島北岸部に活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の評価は必要ないとして地震動評価を行っていない。中央構造線断層帯長期評価(第2版)には、佐田岬半島沿岸に存在すると考えられる中央構造線を「現在までのところ探査がなされていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と記載があり、海上音波探査では不十分なことを前提にしていると認められる。 同長期評価の記載などを考慮すると、中央構造線自体が正断層成分を含む横ずれ断層である可能性は否定できない。その場合、地表断層から伊方原発敷地までの距離は2キロ以内で、仮に十分な調査で活断層だと認められた場合、地震動評価をする必要がある。しかし、四国電は十分な調査をしないまま原子炉設置変更許可申請し、規制委は問題ないと判断した。規制委の判断には、その過程に過誤や欠落があったと言わざるを得ない。 【火山事象の影響による危険性】 新規制基準のうち、火山ガイドは火山の危険性を立地評価と影響評価の2段階で評価することとしている。立地評価のうち、検討対象火山の噴火時期や程度が相当前の時点で予測できるとする部分は不合理である。過去最大の噴火規模である阿蘇4噴火から判断すると、その火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできない。 阿蘇4噴火のような破局的噴火の発生頻度は極めて低く、火砕流が到達する可能性を否定できないからといって、それだけで立地不適とするの社会通念に反する。 破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火、噴出量が数十立方キロメートルの噴火規模を考慮すべきで、その噴出量を20〜30立方キロメートルとしても、四国電が想定する約3〜5倍に上る。四国電の降下火砕物や大気中濃度の想定は過小で、それを前提とした申請および規制委の判断は不合理である。 【保全の必要性および担保の要否】 伊方原発は現在稼働中で、その運用で抗告人らは重大な被害を受ける具体的な危険があり保全の必要性が認められる。現在の科学技術水準では火山の噴火時期や規模は予測できても数日から数週間程度前にしかできないから確定判決前にそのような事態が生じることもあり、保全の必要性がないとは言えない。 森一岳裁判長の横顔 民事訴訟のベテラン 今月退官 四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを認める決定を出した広島高裁の森一岳裁判長(64)=写真=は、岩国基地(山口県岩国市)騒音訴訟など民事訴訟を多く手掛けるベテラン。今月下旬に定年での退官を迎える。 東京都出身。1982年に裁判官となり、東京高裁判事や千葉地、家裁松戸支部長などを歴任。2016年4月から現在の広島高裁部総括判事となった。 16年10月に裁判長を務めた「1票の格差」訴訟では、最大3・08倍で実施された同7月の参院選の格差を違憲状態と判断した。 音声証拠の再生中に接見を打ち切った広島拘置所の対応を巡る訴訟の控訴審判決では19年3月、一審判決を変更して接見交通権の侵害と判断、国の通知も違法と結論付けた。 |
![]() |
![]() |
KEY_WORD:IKATA_:広島高裁:新規制基準:規制委:中央構造線断層帯:震源断層:基準地震動:海上音波探査:中央構造線断層帯長期評価(第2版):正断層成分:横ずれ断層:原子炉施設変更許可申請:火山ガイド:立地評価:影響評価:阿蘇4噴火:森一岳裁判長:岩国基地騒音訴訟:「1票の格差」訴訟:広島拘置所:2020_01_17_IKATA_SASHITOME: | ![]() |
![]() |